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042 名産品と対抗試合2

 


 魅了のかかったリルムの忠実な下僕リルム隊100人は筋トレから始まり魔物狩りに50対50の対人戦、こっちが「大丈夫かな?」ってなるくらいに忠実に戦った。


 私の支援魔法でなんとか脱落者も出さず100人全員平均17レベルまで上げることに成功した。


 一般兵が10レベルで騎士様が20レベルくらいだからかなり強い部類にはいるだろう。



 優勝する策を授けに来たギルヴィードおじ様も、この下僕たちを見たら「なにもしなくても勝てんだろ」で帰っていった。



 かけた魅了も全然解ける気配がない。多分私の支援効果なんだろう。


 私が状態異常回復するまでこれなんじゃないか?


 とりあえず終わるまではかけとくけど、ごめんね。








 対抗試合当日


 本当は総当たり戦をやりたかったのだが時間の都合でトーナメント戦になった。


「テメーら! マリアは人死が嫌ェなんだからゼッテェ殺すんじゃねーぞ!! いいな!!」


「はい!!!! リルム隊長!!!!」


 死ぬ心配より殺す心配をしている余裕ぶりだ。



 今日も女総長リルム隊は絶好調のようだ。


 私も察知バリアをかけたリルムから目を離さないようにしつつ、会場に程近い主催者席へ座る。


 座っている人々の間を飲み物や軽食を持った出張店員が売り歩いており、その賑やかな様子に更に人が増える。



「なんだか凄い騒ぎだな」


 主催者席に共に座っているのは我が陣営の旗頭、ゼルギウス王子。


「シルメリアお祖母様から貴族で話題になってたってきいていたので「軽くつまめる軽食や飲み物用意しない?」って商人さんに相談したらやってくださったの」


 現代知識もあるゲルベルグさんは「ああ~! スポーツ観戦ね! いいですなー!」って一瞬で理解してくれて本当に助かる。



 平民たちにも噂になっていたのか見に来ている者も結構いる。娯楽は貴重だもんね。


 貴族には貴族席に座ってもらうから喧嘩の心配もない。



 ゼルギウスさんは観客の多さに驚き、商人に軽食の用意もさせてたと言ったら笑顔で褒めてくれた。


「さすがヴィードの姪は用意が良いな」


 血の繋がらないただの平民だと知ってるのにそういうこと言えるのがイケメンだと思う。


「思ったより大袈裟な会になっちゃいましたけど、これ名物に出来るかもしれませんね」


「なるほど。それもアリだな」



 意気消沈した武官達や兵士達とやけにムキムキになったリルム隊に温度差を感じながら対抗試合が開会された。


 主催のゼルギウスさんが挨拶をし、私にマイクを渡す。


「提案者でもある私が一つだけ恐縮ながらお願いにまいりました」


 会場が騒つく。



「今回の様な練習試合でも死者が出る可能性はあります。減点などはありませんが、どうかこういう交友大会で無理を押した作戦だけは立てぬ様お願い申し上げます」


「確かに兵を減らさない戦いは大事だ」


 ゼルギウスの発言で大会に減点はなくてもゼルギウスの中で減点にはなるだろう。


 ゴリ押し気味の武官はウッと唸った。



「私は人死にが苦手なのです。どうかご配慮をいただけたら幸いです」


 ペコリとお辞儀をし下がる。


 兵からは「マリア様は俺たちを大切に思って下さってる……」と感激の声が聞こえた。


 そうじゃなくて本当に死ぬのが苦手だから死なないでね……。



「それでは、大会の皆さまの検討を祈りまして……」


 私は試合会場の周りにバリアを展開する。


 会場はざわめくが私はさも普通のことかのように


「ギルヴィードおじ様には劣りますが、僭越ながらわたくしがバリアを張らせていただきました。これで安全に見学することができると思います」


 ギルヴィードおじ様を生贄にしつつ私は自分のバリアを棚から下げた。


 会場からは拍手が鳴る。ちょっとは盛り上がったかな。事故は怖いからね。






 トーナメント予選は順調に進んでいく。時折危ない兵や気絶した兵をバリアで助け場外に出すよう指示したりしながら安全に進んでいっていた。


 次はリルム隊だ。相手の軍と向かい合う。女の将はリルムだけなので注目が集まる。


 そう、私はこれを待っていた。私はリルムにまた『能力強化』をかける。今回は前回に比べたらかなり控えめにだ。


 リルムは私との打ち合わせ通り『魅了』を相手にぶち当て、その後突撃。


 敵軍はリルムに釘付けで動けない兵も多数。一当てで半壊した。



 レベルの差も大きいけどリルムの『魅了』はやっぱり強い。


 戦いが終わった後も敵も武官もリルムの方を見てる。


 そして大会を見ていた観客たちも。



「なあ、さっきのが『魅了』なのか?」


「ゼルギウスさんは魅了効かないんですか?」


「あぁ。ヴィードから状態異常耐性の装飾品もらってるからな」


 なるほど……持つべきものは凄腕魔導士だね。



「しかしすごいな。アレで何しようってんだ?」


「金策ですよ金策」


 マネーロンダリングとはまだ言えないので黙っておいた。



 その後も『魅了で一当て』のみで普通に優勝してしまった。


 もうちょっと激戦とか、そういうのがないとスポーツとしては盛り上がらないかなと心配したがリルムの優勝に魅了にかかった観客も敵兵士も一体になって盛り上がってた。


 ま、まあ対抗試合は成功……かな?





「スゲー人だったな!」


 帰りの馬車の中でにこにこと微笑むリルム


「オレ人にあんな風に応援されたり一緒に騒いだりすんの、初めてだったし、楽しかった!」


 リルムに健気なことを言われると胸が痛い……私は抱きしめたい気持ちを抑え笑顔で返す。



「リルムがそう言ってくれて私も嬉しいわ」


「でも魅了あんなに使ってマリアは何やりたかったんだ?」



「それはね……『名産品』作りよ!」



 グッと拳をつくる私にリルムはよくわからないように首を傾げた。







 次の日、私はリルムを連れてとある倉庫に来ていた。


「マリア神! 用意できてます!」


「ゲルベルグさん! さすが!! これよこれ!!」


 きゃいきゃいと騒ぐ私たちの前にはまるで外の世界の撮影スタジオが再現されているかのような施設が広がっていた。



「リルムちゃんも用意できましたー!」


「な、なあマリア、言われた通り着たけど……これってなにすんだ?」


 リルムはセクシー系と言われる路線の男の劣情を刺激する服を着ていた。



「リルムはね……アイドルになるの!」



 ドドーンと宣言する私に、よくわからないといった感じのリルム。対照的な熱量を説明で埋めるべく早口でまくし立てた。


「これはシャルル=カルーセルに依頼して発明してもらった『カメラ』っていうものなんだけど、撮ったものの姿が念写されるの。それに魅了を全力でぶっかけたリルムがお色気ポーズで写るのよ!」


 私はプロデューサーの顔でドヤ顔だ。




 衣食住が充実してるこの世界……他に潜り込める猶予はそう! 娯楽!


 戦争が始まったら真っ先に削られる消費先だけど、今はまだその足音もみんなは感じていない。


 始まるとしてもあと数年くらいは平和だろう。


 希望的観測すぎるけど、私たちが上手くやれば切り抜けられるかもしれないし……なんにしても娯楽が増えることはいいことだ。



 サキュバス特有の男の欲望を詰め込んだような姿形……満足させる為の魅了効果……まさにアイドルをやるべくして生まれてきたような子だ! 宝石の原石だ!



 だからといってリルムは歌も踊りもできないし、どっちかというとグラビアアイドルだ。


 今後はベルドリクス軍の将として魅了で率いて戦えそうなほどの成果も出たので、『カーグランドのめちゃくちゃ可愛い将軍』ってことで売り出せばいいんじゃないかなと思っている。



 映像を記憶できる魔導具はあるのにカメラがないのは驚いた。


 なのでシャルルに作ってもらったのだ。


 MPを消費して紙に念写することでコストも然程かからない。




 リルムをカーグランドのご当地将軍アイドルとして売り出してブロマイドやフィギュア、写真集などなどのグッズ販売をして大儲けする……。


 しなくてもここをマネーロンダリング地にして大儲けしたフリをすればいいのだ。


 誰もやったことない商売だから市場調査も出来まい。


 つまり売れても売れなくても美味しい商売となる。



 またもやリルムで金儲けしてしまって大変申し訳ないが、リルムは本当に有用すぎるのだ……。


 昔は男性に劣情を向けられるのが怖い風なリルムだったが、やはりギルヴィードおじ様のおかげで変わったからか大分男に慣れてきたように思う。


 今回の対抗試合でも普通に女王様やってたし。


 それに握手会とかおさわりイベントとか危ないことは絶対させないし……っていうか戦場の方が普通に危ない。




「つまりこの前の対抗試合はこの布石……リルムを売り出す為の顔見せみたいなモンだったのよ」


 あの対抗試合に来た人たちや兵士たちは買うだろう。まずは地元人気から付けていかねばならない。




「まあ、マリアがやれって言うならやるけどよ……」


 そうだ。忘れてたけどリルムって私の奴隷なんだった。



「あ、い、嫌とかだったら……」


 や、やめられない! もう計画は動き始めちゃってるのだ! すまない!


「いやそうじゃなくて……、まだよくわかんねえけどさ、あの……マリアはやんねえの?」



 は?



 そういえはリルムとは最近護衛として一緒にいるせいか、私によく懐いていてよくある女子よろしく「マリアと一緒がいい」と、何かと私とお揃いにしたがっていたのだ。


 リルムはこう見えて結構女子っぽいところがある。


 多分これも「なんかよくわかんないけど、マリアと一緒がいい」っていうことだろう。



「いいですね!! 聖なるマリア神と小悪魔リルム嬢の神アイドルコンビ!! これはトップアイドル狙えますよ!」


 ゲルベルグPはノッてきた。


 モブおじさん腐女子なのにレパートリー広いな!!



「いやいやいや、何言ってんですか。私なんかがリルムと一緒にコンビとかいったらブロマイドの売れ行きの差が歴然で不人気さんとか陰で言われるに決まってるじゃないですか! ご遠慮します!」


「女子アイドルは人数が多いほうがターゲット層も増えて有利になるしブラインドも捗ります!」


 確かに売り上げを考えるなら一人より二人の方がいいに決まってる。


 しかも私とリルムは正反対の魅力をもつヒロインだ。揃ってる姿は絵になるかもしれない。



 どっちにしても儲かる商売だが商売人のゲルベルグさんとしてはちょっとでも儲けたいんだろう。しかし私にもメンタルというものがある。


「ほらーーーー! ブラインドハズレ枠じゃないですか!!」


 こんなに男ウケするように作られた男性向けヒロインと女に嫌われないように作られた乙女ゲーヒロインが並ぶのは結構辛いものがあるのだ。


 しかも今は12歳。ロリコンしか釣れないじゃないか。


「いやいやマリア神にはリルム嬢と違う崇めてるような聖女を祭るようなファン層があってですね……」


 私たちがぎゃんぎゃん言い合っているとリルムはそっ……と横に来て



「マリアは嫌か……?」



 ぐうぅ~~~~!!!!


 私が嫌がるようなことをリルムに無理強いさせようとしている図みたいになってしまった。


「い、嫌じゃないけど、可愛いリルムと並ぶのは恐れ多いっていうか……」


「はぁ!? マリアはスゲーかわいいだろ!?」


 ぎゅーっと私を抱きしめるリルム。リルムの優しさがつらい……



「わ、わかった……一緒にやるよ……」



 ただし私の分のブロマイドは少な目にしておいてください。


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