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043 写真撮影と亡命の完成

 

 急遽私も前の社交界に出た時の聖女ドレスを持ってきてもらい、写真撮影は開始された。


 私はリルムに能力強化を、写真からでも感じる程の魅了効果が出る写真を作ろうと画策し強めにかけた。


 ゲルベルグさんは的確にリルムには男性を煽るようなセクシーなアングルやポーズを指定するが、サキュバスを連想させないよう、『将軍アイドル』というコンセプトで女王様然でえっちで強そうなドM歓喜な写真を撮り、


 対して私は聖女と呼ぶに相応しいお色気要素なしの真っ白で神々しい感じに撮ってくれた。



 最後に私とリルム二人で仲良さそうにしているツーショ写真を撮って今日の撮影は終了した。


 まさか自分までやることになるとは……。


 そんな気持ちでいっぱいだったがリルムにばかりこんな役目を押し付けてるのも罪悪感が痛んだだろうし、良かったのかもしれない。


 それにリルムは私と一緒に撮れてうれしそうだったし、リルムが幸せならOKです!









「それにしても静止画の念写ですか。シャルル=カルーセルはよく完成させましたね」


 フィンスターはカメラを関心しながら眺めていた。


 今は撮影後のゲルベルグさんとフィンスターと商談の場だ。


 リルムは疲れたのか暇なのかフィンスターの膝を枕にしてソファで寝ている。



「シャルルたんにはこういうのが作りたいって言ったら大興奮して「豚にしてはいい仕事を持ってきた」って褒めてくれて……」


 おい客。豚って言われてんぞ。



 テレテレとしているゲルベルグさんは、シャルル=カルーセルはベルドリクス家に興味を持っていたと言っていたので、どれだけゲルベルグさんが嫌いでもきっと次の依頼も受けてもらえるだろう。


 今まで記憶媒体というと映像で残る映像魔法の魔導具しかなかった。しかも超高価である。



「これはMPを消費して何回でも紙に念写できるからお手軽で良いよね」


 コストパフォーマンスに優れている有用な魔導具で、今後これも流行るだろう。


 それの先立ちの第一写真がリルム(と私)のアイドル写真になるわけだ。話題を呼ぶぞ~。


 なんならブロマイドの物珍しさで買うまである。



「次は『雑誌』を作る為の写真も印刷できる印刷機が欲しいんだよね」


 今のこの世界の印刷機は文字、絵しか印刷ができない。


 そこにこの新しい概念の写真が入った印刷機はまさに最先端だろう。


 大発明家の攻略キャラ、シャルル=カルーセルにしか作れる気がしない。




「ただシャルルたんまだモノリス国にいるからモノリスに利権奪われそうで怖いですな~」


 おじさんとシャルルたんの愛の結晶なのに……と、はぁとため息をつくゲルベルグさん。


 本人も意図してやっているんだろうが正直気持ち悪い。シャルルたんにはちょっと同情する。



 シャルル=カルーセルは公爵家の貴族に属しているので引き抜くのはなかなか難しい。


 しかもカメラなんて大発明したら意地でもシャルルをモノリスは離さないだろう。


 シャルルは本人は奇人変人ぶりで隠してはいたが、利益だけにはうるさいモノリスや家族の貴族から抑え込まれていて結構縛られた状態である設定だった。



「シャルル=カルーセルをこっちに亡命させたりして仲間にすることは可能そうなんですか?」


 私は前にちょこっと話していた『シャルル引き入れ計画』の進捗をフィンスターに聞いた。




「とりあえずシャルル=カルーセルの弱みを作り、その様子をカメラで撮って脅してます」



「なんてことしてんの!!!!!!!!!!!!!」



 ちょっと聖女びっくりしちゃったじゃん。


 えっ、ちょ、なにしてんの?



 カメラ完成後いわゆるモブレを有言実行して写真撮って脅して亡命の念書は書かせたらしく、時間の問題だそうだ。



「聞かなきゃよかった……」


 私は頭を抱えた。


 ごめんシャルルたん。



 最近はなりをひそめたと思っていたクレイジーサイコ神獣フィンスターと愛のモブおじゲルベルグを野放しにした結果がこれだよ!



 ゲルベルグさんは現実世界の『モブおじ』さんと原作のゲルベルグが融合しているからか、知識チートが出来る反面、原作のゲルベルグよろしく残忍で打算的といえばいいのか……、私よりもこの世界の殺伐面への適正が高い。


『死の商人ゲルベルグ』も武器という商品を扱ってる手前、人殺したことある設定だしね……。


 なので『ちょっと』のノリが結構残虐だったりするのだ。



 貴重な生産職の天才発明家シャルルを守るためにも、もうちょっとゲルベルグさんを上手くコントロールしなくてはいけないらしい。



「カメラがバレる前には済ますようにしますね」


 寝ているリルムを撫でる笑顔のフィンスターが久しぶりに怖いよ……。



「シャルルたんがこっちに亡命完了する辺りに売り出したいと思ってはいるんですが、亡命の際マリア神に転移のお手伝いをお願いしてもよろしいですかな?」


 シャルルたんのお部屋には貴重な資料や研究機材がたくさんあって魔法のバッグでは入りきらない様だ。


「うん、私にはそれくらいしかできないけど……」


 シャルルたんへの罪滅ぼしになるんならなんだってやるよ……。





 シャルルたんのお尻の追悼も程々に私はベルドリクス領に来ていた。カムイに会うためだ。


「姫!」


 私を見た瞬間忠犬よろしく駆け寄ってきてくれる。眩しい……!


 17歳になったカムイは少年ながらも精悍な顔つきになってきていた。


 身体も前より鍛える時間が長いからか、記憶よりしっかりした気もする。



 うんうん。これこれ。これだよ乙女ゲームの攻略キャラって。


 私はカムイにも頼んで写真を撮らせてもらうことにした。



 男性向けの『カーグランドの女王様系小悪魔美少女』と女性向けの『カーグランドの英雄、武士系硬派イケメン』の二大巨頭だ。



 本当は他攻略キャラクターのギルヴィードおじ様とフィンスターにもお願いしたいところだったが、普通に断られた。


 フィンスターは無理だろうがフィンスターにリルムのお宝写真とかをあげたらギルヴィードおじ様の隠し撮りくらいはしてもらえるかもしれない。




 カムイは「それが姫の望みでしたら」とにこやかに快諾してくれた。


 これだよ~~~~~!!! これが乙女ゲーム攻略キャラクターの模範態度!! みんな見習って!



 さすがに撮影スタジオに連れてこられたときは面妖な場所に面食らっていたが、普段の剣の構えとか座ってるだけとか特に顔も指定したりせず、そのままのカムイを撮らせてもらった。


 その後和服を着せたり犬を持たせて戯れさせたりした。


 イケメン写真と言えば犬と戯れる! 現実のイケメンブロマイドでよく見たしとりあえずこれやっておけば間違いない。



「ベルドリクス軍のほうはどう? 上手くやれてる?」


「はい。慣れない俺にも皆さん良くしてくださってとても助かっております」


 カムイの近況も色々と聞きながら隣国の話もした。



「確かにザッグベルの兵はこちらの国境付近に集まってきています。まだ戦いにはならないでしょうが緊張状態ではありますね」


 敵のザッグベルの真意はなんなのか。まだフィンスターの調べの結果待ちだ。



 さすがのフィンスターもあまりに調べることが膨大で内部に外部にゲルベルグ監視にリルムと一緒にいて回復してもらっていてもMPが追い付かないそうだ。


 影は情報を持ち帰って融合するまで本体は情報を得られず、途中で影が倒され消滅したら情報はつかめないとのことで、強国のザッグベルは少々厳しいらしい。


 やっぱりフィンスターにもレベル上げが必要だと痛感した。






 ゼルギウスさんと陛下にも協力をお願いし、撮らせて頂いている。


 カメラを見せ概要を説明し、カーグランドの新しい名産になるかもと言われたらゼルギウスさんたちも頑張るしかない。



 二人にはイメージを崩さない為に威厳ある立ち姿や座った姿のみだ。


 重役が顔がバレるのは良くないか? と思ったけど、もう記憶媒体がある世なので世界にはバレているし影武者など変身能力のあるものもいるそうなので大丈夫なのだそう。


 ゼルガリオンスーツも持ってこれも……と言ったら笑って「懐かしいな!」とキメキメでポーズを決めてくれた。ゼルギウスさんには悪いがバレバレの変身ヒーローみたく並んで売らせて頂く。


 え? シグルド? 知らね。


 とりあえずカーグランドの『名産品』はなんとかカタチになりそうだ。








 しばらく経って根負けしたのか工作したのか……シャルル=カルーセルがモノリス国も家族も貴族の名も捨て亡命をすることになった。


 引っ越し……という名の亡命作業に私も手伝ったんだけど、初めて会ったシャルル=カルーセルはゲームの高慢な奇人変人ぶりは鳴りをひそめ静かにしていた。


 ただゲルベルグさんがシャルルたん♡と近付く度に「ヒィ! 寄らないでくだサイ!! この豚!!」と元気に罵って逃げていた。



「初めましテ……で頼むのもなんですが……ワタシ、シャルル=カルーセルをベルドリクスで保護してくださるとのコトで……有難うございマス」


 シャルルは12歳児の私にもしっかり挨拶をしてくれた。


「こんなことになってしまってからの挨拶で失礼デスが……、アナタとはお話したいと思ってましタ。よろしくお願いしますネ」


 シャルルが手を差し出してきたので私も笑顔で握手をし、私とシャルルの仲はゲルベルグさんのお陰で良好になりそうだ。



「シャルルさんの研究室も今と同じ規模のを用意してあります。大きすぎても不便でしょうし……」


「ワォ! それは助かりマスね!」


 ちゃんとした待遇に喜ぶシャルルに私も微笑み返す。


 でもごめん、シャルル……この家「シャルルたんのものは私が出すのは当たり前ですぞ」って資金援助は全部ゲルベルグさんなんだ……。


 ベルドリクス家も軍以外に割けるお金も少ないし渡りに船だったんだけど、自殺しかねないからこれは内緒にしようと話し合って決まった。


 本当に、愛だけは深いんだけどね……。



「シャルルさんの仕えていた貴族や国にはシャルルさんが今まで不法に強要された研究など、亡命するに値する証拠を秘密裏に両者に送付し、返せとは言い返しづらいようにしておきます」


 人権が著しくはく奪された行為をされている者に関して、逃げたい者がいれば受け入れる行為は世界の取り決めで認められている。


 身も蓋もないがヒロインがそうして亡命して拾われるシーンがあるのだ。だから作られている。


 隷属されていたらまた別になるのだが、だからシャルルがここに逃げてきたことは合法になる。



 まさか幼女がそんなことまでしてくれるとは思わずシャルルは感激の様子だった。


 ゲルベルグさんもこういうことすればいいのに……。



「あとそれと次の依頼なんですけど、写真も印刷できる印刷機が欲しくて……」


「アノ発明は実に面白かったデス! 是非新しいモノがあるならやりたいと思っていまシタ!」



 発明家魂が燃えるシャルルが喜んで食いつく横でそろそろ自分たちも紹介してくれと助手たちがシャルルの服を引っ張り見ている。


「助手のロクトとビスタです。置いておくと危ないので一緒に匿っていただけるとのコトで……」



「師匠を一人だけでこんなところへ行かせられません」


「ちょ、ちょっとロクト!」


 弟子たちもシャルルが心配で付いてくることになったそうだ。


 ちらとゲルベルグさんの方をみる。ゲルベルグさんが危ないかのような顔だ。間違ってはいないんだろうけど……。



「師匠の弟子のロクトです。主に師匠の助手をしていますが、調合師が専門です。」


「弟子のビスタです。僕は魔導具を専門にしています。先輩共々よろしくお願いします。」


「私はマリア=ベルドリクスよ。師弟仲がよろしいのは良いことよ。二人共よろしくね」


 挨拶代わりにニッコリと笑うと二人はポーっとして「聖女さま……」と呟いていた。



「とりあえず!」


 私は最初に宣言しておこうと思っていた。真顔でシャルルの肩を掴む。


「シャルルは研究や発明に集中してもらいたいと思っているから、よっぽどの納期の遅れやサボりが無い限りはゲルベルグさんが『進捗伺い』に行くことは禁止させます」


 真面目にやってくれていれば研究所内には入らないようには言っておきますので……と真剣に話し出した私にシャルルは面食らったまま固まっていた。


 シャルル! 守ってあげるからね! という意思も込めて目を合わせてしっかりと言う。


「それと本当に耐えきれなくなったら言いたくないことでもちゃんと私に報告すること。いいわね?」



 この世界、治安が外の世界ほど良いわけではないので恐喝脅迫強姦の類は普通にまかり通ってしまう。


 権力でも腕力でも知力でも、強い方が正義なのだ。



 私は()()から逃げる為に地位を得たと言っても過言ではないので、ゲルベルグさんには悪いが私の見える範囲では邪魔立てさせていただく。見えないところは知らない。


 ちょっとはシャルルたんが許容するような愛のあるプレイでお願いしたいものだ。



 最初ポカンとしていたシャルルだが、意味がわかったのか


「Oh……!You're My Angel……!」


 と涙を浮かべ抱きしめてきた。


 貴族にも国にもゲス商人(※味方)にも追い詰められ、亡命の選択肢しかなかったシャルルにはもうちょっと優しくするべきだよね……。



 しかしそのゲス商人のお陰でシャルルルートは壊滅したに等しいので、私とゲルベルグさんはwin-winなのだ。シャルルたんすまん。




 まあこれでブロマイド販売大作戦ができる!


 売れなくてもマネーロンダリングでお金が入る! 今からお金の使い道を考えておかないと!



 ……って私、やっぱり散財癖ついてる?

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