012 ゼルガリオンの偽物現る
今日も元気にゼルガリオン!
ということで、特撮の司会のお姉さんよろしくゼルガリオンを支援していくよ〜!
私はヒーロースーツに身を包んだゼルギウスさんに身体強化の支援魔法をかける。
ゼルガリオンがんばえ〜〜
ゼルギウスさんは攻略キャラクターじゃないからどんなスキルがあるのかわからないんだけど、ギルヴィードおじ様ルートの重要キャラだったしストーリー的にもそれなりに強くなると思うんだよね。
魔法に適正はないみたいだけど、重要キャラだし(大事なこと)身体強化とかはあってもいいと思うので試しに練習してもらってる。
ちなみに身体強化と支援バフは別物なのでかなり凶悪な火力になるのだ。
いつものようにゼルガリオンが颯爽と登場し、私と木蔭に隠れてるギルヴィードおじ様がタイミングよく爆発を作る。上手くなったね。おじさま。
そのあとはゼルガリオンのタイミングに合わせてギルヴィードおじ様が効果ついでに攻撃魔法をかけて一緒にダメージを減らしたり、ギルヴィードおじ様の存在がバレないように私がゼルガリオンにヘイト効果をかけたりして演出してく。
やっぱギルヴィードおじ様もギルガリオンになって一緒に戦った方が楽じゃない?
人気が下火になってきたらテコ入れはそれにしよう。
そんな感じで変則三人パーティを組んでるわけだけど、ゼルギウスさんはもちろん、ギルヴィードおじ様も順調にレベルが上がってるらしい。
私? 私はカンスト……というかゲームマスターだからレベルという概念はない。
雑魚がいるときは「ゼルガリオン・タイフーン!」とか言ってもらってギルヴィードおじ様が範囲攻撃する。
タイフーンなのにおじ様の気分でブリザード降らせたりする時もある。
そんなこんなでいつもの日常になりつつある平和な活動にまさかの横やりが入った。
「えっ!? ゼルガリオンの偽物が現れた!?」
「偽物、っつうか、同業者だな」
「同じく志を共にする仲間が出来たってことか!?」
ゼルギウスさんの目は輝いている。ここでそう考えられるなんてゼルギウスさんは本物の正義のヒーローだよ……。
「ゼルガリオンに似た格好で、五人パーティらしい」
戦隊ものか!!
「爆発も特殊でな、五色の色に爆発する特殊なもので派手らしい」
「えっ そんなのあるんですか!?」
いいな~~~~~~!!!!
「いや、そんなもの見たことはないから発明家に新たに作らせたんだろう」
「それは……結構凝ってますね」
わざわざそんなものまで作らせるなんて、これはかなりの強敵なのでは……と私は身構えていたがギルヴィードおじ様は涼しい顔だ。
「ゼルガリオンに似てる格好はリーダーらしき一人だけ、あとの四人は普通の格好だ」
なんだ……。ああいう格好って一人だけでやられるとちょっと萎えるよね。
「似てる格好はあの格好流行りましたし、真似っこでは?」
妙に淡々とギルヴィードおじ様は報告する
「いや、そのリーダーはゼルガリオンとよく似た口上をして爆発もつけて戦うらしい」
やっぱり真似っこ? 真似をしたがる人はいっぱいいたし、その程度で報告してくるなんて……
「退治した魔物は回収せず解体して振る舞うそうだ」
「えっ! すごい!」
「なかなかな心意気だな!!」
魔物を回収せず冒険者は立ち行かない。そんな酔狂なことするのはどこかの裕福な……
「まさか……」
気付いたかとギルヴィードおじ様はフッと鼻を鳴らして笑い
「名前は『シグルード』だそうだ」
「シ、『シグルード』……一体何者なんだ……」
「アンタの兄だよ!!」
驚いた顔で私を見るゼルギウスさんに私が驚きだよ。
「兄上……まさか、俺と共に戦ってくれるというのか……!!」
「邪魔しにきたんだよ!!」
頭痛くなってきた。
「まあやってることは同じ慈善事業だし、ゼルの言う通り共には戦っているが目的は違えだろうな」
ふうと軽く息を吐くギルヴィードおじ様に私は脳内で答える。
当たり前だ。ゼルギウスさんは正義のヒーロー願望により慈善事業をしてるが、シグルドはただ自分も同じ人気を得たいだけだ。
なんか新しいことやってるな〜って思ってたら二番煎じかよ!! 芸がないな!!
まあでもゼルギウスになりたいシグルドというキャラとしては『ぽい』行動ではある。
ゼルギウスさんが殺されないかばっかり心配しすぎていて、シグルドの考えなんてこれっぽっちも考えていなかった。
「シグルド陣営はモノリス国と仲が良いからな、モノリス国には優秀な発明家がいる。そいつに頼んで色んな機材をつくらせてるんだろう」
「も、モノリス国……」
ええ~~~~~~~~~~~~っ!!!
『モノリス国の天才発明家』って攻略キャラあっちに取られてるじゃん!!
仲間集めに力を入れていこうと思っていた矢先にとんだバッドニュースだ。
「ど、どうするんですか……?」
心配そうに二人に聞いた私だがそんな心配を気にも止めない二人がいた。
「別にどうにも」
「そうだな!」
さらりと返すギルヴィードおじ様にゼルギウスさんはこれまでにないくらい笑顔だった。
◇
カーグランドのある街では、とあるヒーローの話題でもちきりだった。
「ゼルガリオンの偽物が現れたんだって?」
「ああ。なんでもシグルド殿下らしいぞ。名前もまんまシグルードだし」
「仮面も薄くてお顔も全然見えるらしい。肖像画とそっくりだと」
「王族くらいじゃないと魔物を回収しないで丸々あげちまうなんて出来ないとは思ってたけど、こりゃゼルガリオンはゼルギウス様で確定だな」
「俺はシグルードよりゼルガリオンが好きだな!シグルードは人にやっつけさせるけどゼルガリオンは一人でだって勇敢に戦うもん!」
「ゼルガリオンの方がかっこいいよなー! 技も派手で、ゼルガリオンタイフーン! ってポーズ決めるだけで物凄い魔法がでるんだ!」
「ゼルガリオンクラーッシュ!」
◇
特に変わりなく過ごす二人に私だけソワソワしてたけど、一カ月、二ヵ月と経つにつれ意味がわかってきた。
シグルド臣下が作ったシグルード人形などの売れ行きは、まあ助けてもらった人は買う人はいるかもだけど、あまり売れてはいないらしい。
ゼルガリオンの人気は恥ずかしげもなく叫ぶ必殺技の数々とド派手な演出効果と一人で戦うインパクトと魅力満載なのだ。
あれでなんかこう快楽物質がドパドパでて気持ちいくなってその思い出を思い出す為についグッズを衝動買いしちゃうんだよね。ライブの応援グッズみたいなタオルやうちわとかも作るべきかな。
シグルドの方はやってることは5人冒険者パーティと変わらないからなんか地味なんだよね。
あと二番煎じってレッテルが完全についちやってると売れづらい……。
ゼルガリオンが流行っているので類似品として小金を稼ぐつもりなら良いだろうが、あっちとしてはゼルガリオンに勝ちたくてやってる、が、その商法じゃゼルガリオンに勝つのは難しいだろう。
それにゼルガリオンは私の転移魔法によって今はもはや全国規模! 周知もされてるしゼルガリオンブランドが確立されている。
購買層だって「ママ〜シグルードもほしい〜」「うちにはゼルガリオンがいるでしょ! ゼルガリオンのほうがかっこいいでしょ!」となんとか買わせない方向に持って行く人がほとんどだろう。
シグルードの話題は完全にゼルガリオンに喰われてしまっていた。
とある日、私はシルメリアお祖母様といつもの様に勉強をし、政務に付いていたお祖父様とギルヴィードおじ様を迎えた。
「マリア、これは土産だ」
お祖父様はちょくちょく私にプレゼントを買ってくるようになった。
孫好きの会に入れられてしまったらしく、買わないと体裁が悪いらしい。なんだか申し訳ない。お疲れ様です。
「わあ、ありがとうございます。いつももらってばっかりで……」
「お前がうちにもたらした利益に比べたら比にならんものだ。気にするな」
挨拶もそこそこにギルヴィードおじ様を見ると、今までに見たことないくらい楽しそうな顔をして笑いを堪えていた。
お祖父様に向き直り「なにがあったんですか?」と聞くと軽くため息をついて「本人に聞くと良い」と言われた。
夕食も終わりギルヴィードおじ様の部屋に行く。
さすがというかこのキレ者魔導士、魔術グッズを品良くかざりながらも執務机は政務者のソレ。
そういえば全然言ってこないけど私の魔法には興味ないのかな。
ストーリーからして見たら気になると思うんだけど。
それよりゼルギウスさんの問題の方が気になるのかな。優先順位がわからない。
「防音をつけてくれ」と言われ、言われた通りにつけると手で口を押さえながらクフッ フッと声を漏らして笑い出す。レアだ……
「もうっ気になるじゃないですか」
「すまん、王宮で執務中にシグルド殿下と会ってな」
「えっ!」
なんでもお祖父様とギルヴィードが執務中、ゼルギウスとバッタリ会って話していたら真っ赤な顔をしたシグルドが怒り心頭でやってきたらしい。
◇
「ゼルギウス!! お前のせいで俺は散々だ!!」
「どうしたのですか兄上」
全く身に覚えのないゼルギウスはなだめすかす
だがそれがまた怒りに触れているのか
「なんなんだあの民の態度は!! 俺が助けに来てやったのに『ゼルガリオンじゃないんだ……』などと明らかにガッカリしおって!!」
怒りに任せてその子供を斬ろうとしたらしい(が部下の騎士達に止められたらしい。良かった)
「部下達も割に合わない魔物退治はしたくないとか言って辞めていく!! もう何人もメンバーを変えている!!」
魔物退治は結構重労働だ、ステータスが高い攻略キャラクターとやっても怪我を負う。
ゼルガリオンはマリアの支援魔法とギルヴィードのメチャ強魔法によって演出された強さなのだ。
「俺はお前の兄だ!! お前に出来て俺に出来ないはずはない!! 言え!! なにをやってる!!」
「兄上……」
人通りの多い中庭で周りが凍りついている中ゼルギウスが口を開く
「俺はゼルガリオンなどではありません、ただの第二王子です。俺が民を憂いている中兄上がシグルードとして民の安寧を守ると聞いて弟として誇りに思います。
是非、ゼルガリオン殿と共に力を合わせ正義を守り悪を挫いて頂きたい! そう思っております!!」
ゼルギウスは正体を隠した正義のヒーローの真っ直ぐとした瞳のそれ。
本人もそれを誇りに思っていて、彼の瞳は悪意も通さないほど真っ直ぐだった。
「ふざけるな!! 貴様がゼルガリオンだろう!!」
「その様なことはありません」
「嘘をつけ!!」
「兄上は俺があんな神業が出来ると信じて下さるほど俺を信じて下さっていたんですね!」
「人を馬鹿にするのも大概にしろ!!」
全く会話のキャッチボールが出来ない状態のまま、シグルドは逃げるように去っていった。
それだけでもギルヴィードは面白かったのだが、その後ゼルギウスはギルヴィードに親指を立ててこう言った。
「秘密は守りきったぜ。相棒」
◇
ギルヴィードおじ様は笑いが堪えられず肩を揺らしている。『聖女勇者』では一切見られない光景だ。
「本当にアイツといると飽きないな」
満足そうに椅子に腰かけているギルヴィードおじ様だが、私は忘れていない。
「もうっ! そんな悠長に流さないで下さい! 相手はゼルギウスさんをいつか殺すかもしれないんですよ!!」
深刻な顔をしている私にギルヴィードおじ様は
「あまりにも強力な切り札をもっているからな」と答える
「切り札……?」
「おめえは解毒が出来るんだろう?」
私は自分自身のことなのに今、気が付いた。




