北欧6
ある日、エンキは天界で一件の大事が起こったため、しばらくこちらへ来られないと告げた。
「奴を捕らえろ!」
ロキの息子である巨狼フェンリルは、その獣性を抑えきれず、天界で暴れ回っていた。神々は彼を鎮めるため、「決して逃れられぬ鎖」グレイプニルを用意したが、その過程で多くの者が傷を負った。それでも彼らはついにフェンリルを組み伏せ、鎖でその身を縛り上げることに成功した。しかしフェンリルはなおも激しくもがき、今にも鎖を引き千切らんとしていた。そのときフェンリルは言った。「信頼の証として、誰か一人、その手を我が口に入れよ。さもなくば、この獣性は抑えきれぬ」「そんなことをして何になる。いっそ殺してしまえばよいではないか」「待て。彼は我らの一族だ」神々の間に沈黙が落ちる中、軍神テュールは、右手を失うことを承知の上で、その手をフェンリルの口へ差し入れた。次の瞬間、フェンリルはその右手に噛みつき、骨ごと食いちぎった。「ぐっ……!」周囲が息を呑む中、テュールは左手を掲げて無事を示し、そのまま静かにその場を去った。こうしてフェンリルは完全に拘束されることとなった。
参考文献
Lindow, J.(2001)Norse Mythology: A Guide to the Gods, Heroes, Rituals, and Beliefs(=『神々・英雄・儀式・信仰の北欧神話案内』).
推定総盗用率:およそ60–80%




