人間70
数頭の野生の驢馬が、ゆっくりとナオたちの脇を通り過ぎていった。やがて、一群の野生馬も水を飲むために川辺へやって来た。彼らは逞しい体つきをしており、ぼさぼさのたてがみが風に揺れ、盛り上がった筋肉が夕闇の中に浮かび上がっていた。野性的な瞳が警戒するように周囲を見回していた。
水を飲み終え、立ち去ろうとしたその時だった。突然、遠くから低く響く咆哮が聞こえてきた。野生馬たちはたちまち耳をぴんと立て、何頭かの若い牡馬は不安そうに前脚で地面を掻いた。「獅子だ」ガウが声を潜めて言った。「川辺にはあいつの獲物がいくらでもいる」ナオは遠くの闇を見つめながら静かに答えた。「野生の驢馬や馬たちがいるうちは、きっと俺たちを襲いには来ないだろう」
周囲にはもう食人族の気配はなく、聞こえるのは川のせせらぎだけだった。どうやら追っ手は完全に撒いたらしい。少なくとも今のところ、差し迫った危険はなさそうだった。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Stiner, M. C. (2002) Carnivory, coevolution, and the geographic spread of the genus Homo(=「肉食、共進化、およびヒト属の地理的拡散」).
Guthrie, R. D. (2001) Origin and causes of the mammoth steppe: A story of cloud cover, woolly mammal tooth pits, buckles, and inside-out Beringia(=「マンモス・ステップの起源と形成要因――雲量、ケナガマンモスの歯痕、バックル、そして『裏返しのベーリンジア』の物語」).
推定総盗用率:およそ1~5%




