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人間58
ナオたちが見つけたその洞窟は、明らかに長いあいだ放棄されていた。あの熊はとっくにこの場所を捨ててしまったのかもしれない。餌を求めて数週間も戻ってきていないのかもしれないし、あるいは川か谷で死んでしまった可能性さえあった。しかし、少なくとも洞窟に残された痕跡を見る限り、ここはしばらくのあいだ安全そうだった。
そこでナオは、今夜はこの熊のねぐらで夜を明かすことに決めた。仲間たちにそのことを告げたその時、天地を震わせるような轟音が岩肌と川面にこだました。オーロックスがやって来たのだ。その雄大な吠え声は獅子の咆哮にも似ており、この土地に満ちるあらゆる音と溶け合っていた。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Stiner, M. C. (1997) Mortality analysis of Pleistocene bears and its paleoanthropological relevance(=「更新世のクマ類の死亡分析とその古人類学的意義」).
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