表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
6章 怨念編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/103

6-4 旅立ち



【カイル(サタン)】

──────────


 俺たちはエルフの首都に戻り、再びコクマーに会いに来た。その時、俺が来た事を知り突然押しかけて来たケセドとも会う事になった。


 個人的にはドワーフの国に行く際に必要なものを貰いに来ただけだったので、他に会うつもりも無かった。何故ならユダの事や村での事で俺から見た十一賢の評価は低かった。


「ここには、当分は来ないだろうな」


 コクマーが何度も次は勝手に来ないでと念を押してくるので、適当に返しておいたが、正直俺もカイルの思考など知らん。


「……なぜ、貴方が?」


 なぜ、ねぇ……カイルの弱点をここで明かしても俺に何の利点もないしな。無駄に説明して弟子たちに動かれ克服されたら敵わない。


 やはり、適当に返すか。


「挨拶をしに来ただけだよ」


 お前が私に挨拶? みたいな顔を向けられてもな……コクマーとの話が一旦落ち着いた事をみて、今度はケセドが話しかけて来た。


「……なるほどね。誤解を解きたかったけど、来た意味がなかったわね」


 強がっているのが丸わかりだとは、やはり十一賢はこんなものか、ガッカリだな。

 カイルを潰せればと期待を込めてもう一度見定めたかったが、小物にしか見えない。


「同じだ。俺もここに来た意味はなかった」


 契約を持ちかける価値もないな……


「師匠! どんどん言ってやってください!」


「それはない」


「え? エルは向こうの味方なの?」


 ……なんか、ややこしくなりそうだな。カイルの仲間は個性がおかしい、俺が思う時点で相当だ……しかもアメリア、知らぬとはいえ命懸けで使命を果たした恩人に……


(はっ! お、俺は今何を思った……悪魔なのに、何を)


「カイル様、どうしたの?」


「し、師匠が汗だくで顔面蒼白になっています」


「レア」


「これは、自問自答ですね」


「へぇ、これを見れただけで来た意味はあったかも」


 全員が好き勝手言いやがって……しかし、カイルの身体を使うって事は結局は自由では無いんだな。

 まぁいい、徐々に解き明かしてやる、解析は大好き……じゃないぞ! 俺は……くそ!


「師匠……帰ってこない」


「……出来れば、私の部屋から出て行ってほしいのですが」


 あー、ダメだ。目的を果たしてさっさと次に進むか。俺は手を差し出して、催促した。


「よこせ」


 言葉を察した、コクマーが引き出しから予め用意していた数点の書状をテーブルの上に出した。


「常に上からね。一応、これが検問、これが大臣、これが王様ね。後、注意事項として必ず該当の書状を本人に渡してください」


 俺の頭の上から妖精の声が聞こえて気づいたが、全く違和感もなく受け入れていた自分が怖い……


「なんでなの?」


「何でも聞いたら答えが得られるとは思わない事ですよ」


 その通りだな。思考こそが一人で出来る最高のごら、く?……なんだこれは、俺の考えじゃ無い! カイルはなんだ、ボッチか? 引きこもっているのにちょこちょこ自分を出してくるな!


 俺は、自分に苛つきながら出された書状を無造作に掴んで弟子に渡した。


「わ、わたしが持つんですか?」


「任せる」


「ひゃ、ひゃい! 命懸けで預かります!」


 命、安いな……心配にな……ならん!

 なんか、自分がめんどくさい……もう行こう。


「では、もう行く」


「待ちなさい、感謝を……感謝を伝えておいて」


 ケセドか……俺がお前の願いなど聞くわけがないだろ、と歩き出したが去り際に勝手に右手があがり答えた……おのれ、カイル。


 ちっ、少し嫌がらせしてやる。俺は出て行こうとしたが、もう一度コクマー達に向き直る。


「一つ、忠告してやる。俺を甘く見るなよ……紫の目玉を覚えているか? あの時に俺は『ユダ』との繋がりを知った。目玉は誰が渡した? よく考えてみるんだな」


 これで、少しは危険性を考えられると良いんだがな。これを聞いても感謝なんて甘い事ほざいたら許さんぞ……


 さて、まだ何か言っているが俺は言いたいことも言ったし無視だ。


「悪いが、後はお前ら次第だ。またな」


 はぁ……疲れた、やっとこれでドワーフの国に行けるのか……しかし、この身体がこんなめんどくさいとはな。


 馬車の所に行く道中、自分の足を思いっきり踏んづけたら自分が痛かった。



【アルテル】

──────────


ドン!


「アン、どう言う事ですか?」


「アルテル様……馬車の中で暴れないで下さい」


 私たちは、エルフの国から自国に帰るための馬車の中に居た。

 なぜ心が乱れているのか、それは、カイル様がエルフの国に戻りそこから王国を経由してドワーフの国に向かうなら……


 真面目な顔をしてアンを睨む。


「もう少し待てば、一緒の馬車で行けましたよね」


「ご明察です」


 普通に返された……ごめんなさい、アンにあたってしまって。ツアドからの情報がなければ知らずに王国まで悩まずに帰れたのに。

(それでは、つまらないじゃないですか)


 貴方は、そんなに私の心をかき乱して楽しいのね……(ふふ……ほんとうに期待通りです)


 くぅ、ツアドの優秀さは今後王国に欠かせない、そして上手くいけば私も戦力になれる、つまり冒険にも……は、無理ね。


 なぜなら、帰ったらエルフ国との国交の話で当分は国を離れられないでしょうし。


 全くもう……全部お父様が頑張ればいいのよ。


 流石に今回は暇がないでしょうね……カイル様のおかげで、世界のバランスが傾く事が起きた。これが表に出るのもそう時間は掛からないだろし、表に出たら他の国は黙ってないわね。

(それでは、おかげではなく旦那様のせいでは?)


 いいえ、エルフの国と国交を結べるならどの国だって思うでしょう、他国より優位になれると。そうなれば必ず近い内に不満が起こる。なら、何処よりも先にその手が届く今、我が国が掴むのは当然。

(評価を改めるわ……貴方も結構、野心家なのね)


 そうね、これでも王族よ野心があるのは当たり前です。主導権を握らないと決められない方向性があるの。それは、エルフにも関係がある……分かるでしょ?

(……奴隷制度ね)


 正解、これだけは贔屓目に言っても我が国が他国より問題を重く受け止めている。

 我が国との国交の利点は大きいわよ。その分反発は凄いだろうけど、他国に情報が行く前に国内を纏めないとね。


 帰ったらやる事が山積み……うぅ、今回は本当にカイル様とも当分会えないわね。


(わからない……その変化のせいで争いが起こるなら何もしないのが一番なのでは?)


 ……ツアド、貴方も考え方はエルフのそれね。私たちには時間がないのよ、人間の寿命は長くても百年、でもね、動けるのは高々五十年足らずよ? 我が国は十五で成人、そこから元気に働いても六十そこらで完全に衰える。


 その後、しがみ付くのは衰えても代えの効かない人か、しがみ付く老害よ。


 わかる? 長寿のあなた方には理解できないでしょうね……その中でどれだけより良い未来に繋ぐか、もう必死よ。だから貴方にも私たちを間近で見てもらう、私が繋ぐ未来は貴方たちエルフにも繋がるのよ。


 自由になった後はちゃんと説明してね。

(理解していたの? ふふ、ケセド様も思ってもない事態ね……)


 今ので確信できたけど、違うわよ。元々善意を素直に受け取れないだけ、そう育てられたのよ。嫌な性格でしょ?

(それにしては、旦那様には盲目的では?)


 カイル様は例外。ところで、今更なんだけど旦那様って何? まだまだ先の話よ?

(結ばれないと言いつつ、諦めてない……不思議な方ですね)


 前も言ったと思うけど、心までは立場に潰されたくないのよ。私は嫌な性格なの。

 だから……(待って、声が聞こえる)


「え、声?」


「アルテル様?」


 急に声を出した私を心配したアンだったが、アンも気づいていない?

 耳を澄ますが……何も「——ハハーーッ」


「え?」

 何かが、近づいてくる……


「アルテル様! 気をつけて!」


 直ぐに馬車の中で私を守る為に動きだすアン。

(あ、あれは……)

 ちょっとツアド、な、何が来るの? 途端、凄い馬車の音と笑い声が飛び込んできて去って行った。


ガダダダダダダ


「ガッハハハハハーーーーーーッ! 爽快だーーーーーッ!!!」


ダダダダーーー


「こ、この声は……カイル様!?」


 私は直ぐに馬車の外に顔を出したが、後の祭り……通り過ぎて行った馬車はすでに見る影も無くなっていた。


「どういう事なの?」


「ご想像の通りかと」


 ですよね。カイル様の乗る馬車が物凄いスピードで通り過ぎて行った……この馬車が見えなかったのですか? なぜ一声かけてくれないのです!


「追いかけるのです!」


 チャンスは掴み取れ!

(あの速さは無理だと思いますよ?)

 ふふふ、アンの力をみくびらないことね!


「アン! 御者と代わりなさい。貴方に命運を委ねます」


「はっ! ご命令とあらば」



——私たちはこの後、壮絶なレースを繰り広げた。

 馬が可哀想になるくらいの闘いは休憩を挟みながら王国まで続いた。


 

——王国シュトグレイスの馬車乗り場


 私たちは、王国まで予定より二日も早く到着してしまった。ここまで運んでくれた馬たちにはしっかりとお礼をしておきますが……私に悔いはない!


「ガハハハハ! アンよ中々楽しかったぞ」


 すっかりアンを気に入ってしまったカイル様……二面生でもあるの? そう過程するなら今のカイル様は私を攫った方ね。


「カイル様。本当に直ぐ出発なさるのですか?」


「当たり前だ。時間が惜しいしな」


 時間……何かあるのだろうか、でもお止めするのは足手まといになる為に私には出来ない。

 ふふ、でも少しだけなら貴方の時間を貰えます。


「カイル様、少しお時間を下さい。アン!」


 私は、軽く会釈をして、背後に控えたアンに命令をすると、アンは直ぐに意図を理解して居なくなる。


「ほう、いいだろう」


 こちらのカイル様も中々に分かりやすい。私の言葉を聞いてからずっと仁王立ちだ。

 ただ、なぜここまで性格が変わるのだろう……

(確かに不思議ですね、妹様に聞いてみては?)


「アメリア、カイル様はどうしたの?」


「えっと……色々あって……その」


「言いずらいことなの?」


 口を開いたアメリアの話だと、馬車に乗って少ししたら豹変して「何だこの面白い乗り物はーー」と言って、ああなりましたと。


 普段のカイル様とは、思えませんね……

(乗り物に乗ると性格が変わる人とか居るかも知れませんよ?)


 それは、確かに分かります。馬に乗ると豹変する騎士団の人も居ますし。

 でも、見て……カイル様はもう地上に降りて居ますよ?

(真面目ですね……)


 私は仁王立ちのカイル様の前に行き、目を見た。

 前に負傷した左目の眼球が紫ですが他は同じにしか見えません……鎌かけしてみよう。


「カイル様はいますか?」


 私を見ていなかった目が私の方を見る。一度目を閉じて何かを考え出した。



【カイル】

──────────


 イスカと魔道具の話をしていたら、突然サタンが話しかけて来た。

 普段は無視するんだけど、外には知らない人が居ないらしいので表に顔を出してみたら、急にアルテルが抱きついて来た。


「カイル様ーー」


 懐かしいな……当初は女性は抱きついて来るものだと思ってたよ。けど、アルテルが特別だったんだね。


「……アルテル?」


 アルテルが全く動かないので状況がわからない……あれ? ここはあの時の待ってると馬車が来る場所じゃん。

 ってことは、アルテルの国に着いたのか、サタンもやるね。


「お姉様! 何をしてるんですか、離れて下さい」


 アメリアが突然アルテルを引き剥がそうとしている、それと同時に僕の後ろから誰かが掴んできたと思ったらエルも抱きついて来た。

 負けじと頭の上にいるヒアが髪の毛を掴む手に力を入れる……何だこれ。だからサタンは逃げたのか?


「エルは何故、抱きつくの?」


「ノリ」


 ノリって……

 知らない人が居なければ何の問題もないけど、状況が全く分からないと思ったら、凄いスピードでアンが空から降って来た。


トンッ

 あの速さと高さでその着地音……凄い。

 僕の驚きとは裏腹にこの状況をみて、アンは頭を抱えながら言う。


「ただいま……もどり、ました」


 用事があったのかな? せめてサタンも細かく説明してから消えなよ……胸の中で「速すぎる」と呟いて離れるアルテルの代わりに抱きついて来るアメリア。何なんだ……


「カイル様、お待たせしました。アン」


 そうアルテルが言うと、アンが筒になった紙を僕に渡して来た。受け取った僕を確認して話を続ける。


「エルフの書状とそちらがあれば問題は出ないでしょう。お持ちください」


 なるほど、エルフのだけでは弱いのかな? どうしても協力を得たい僕たちにはありがたいね。

 感謝しかないけど、僕からあげられる物は何にもなかった……ドワーフの所でお土産でも買って来てあげよう。忘れなければ、ね。


「アルテルありがとね。それじゃ行こうか」


 エルフの国に旅立った時のように、同じ場所から同じメンバーで今度はドワーフの国に旅立つか。


 ただ、あの時いたティアは今は居ない……自分のための旅がいつの間にか他人のために普通に動き出せるなんて、変われば変わるものだなぁと思いながら馬車に乗り込む。


 それぞれが、アルテルとアンに挨拶をしながら馬車が動き出す。


「みなさん、今回は楽しかったです! 良い旅を!」


 あの状況を楽しいと言い放つアルテル……横のアンも引いてるよ? まぁ、楽しかったのなら良かった。


「またね!」


 僕も顔を出して手を振りながら伝えた。ヒアは僕が急に外に顔を出したせいで風圧で飛ばされそうになっているが、まぁ大丈夫だろう。


 さて、次はドワーフの国。


「ねぇ、どのくらい掛かるの?」


「十日くらいです」


 なんだと……アメリアの言葉に驚いた。

 長旅だなぁ……


「今回も貸切だよね?」


 最悪、道中でサタンだな。




 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ