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「これでよし、と」
依頼内容の薬草を取り終え私はカゴを背負ってギルドへ帰ることにした。
その帰り道、街の通りを歩いていると制服姿の少女達がワイワイとお喋りしながら歩いているのを見た。
(……私も今頃はあんな風に過ごしていたんだろうな)
採集者になりたての頃はあの風景を見て心がギュッと痛くなる事があり夜にポロポロと泣く事もあった。
あり得たかもしれない未来に思いを馳せていた事」もあるけど流石にときが過ぎていくとなれてきた。
まぁ貴族に未練があるか、というとそんな事はない。
もし何らかの形で貴族として暮らしていたとしても良い事なんてこれっぽちも無かっただろう。
……そう思うようにしている。
「只今戻りました〜、コレ依頼の薬草です」
「はい、ありがとうございます。あ、そういえばエマさんは隣国の出身ですよね?」
「えぇ、そうですけど」
「向こうのギルドに勤めている友人から話を聞いたんですけど、今大変な事になってるらしいですよ」
「大変な事?」
「なんでもクーデターが起こって王族、有力な貴族が捕まったそうですよ」
クーデター? 捕まった?
「え? 何が起こったんですか?」
「ほら数年前に当時の王太子が婚約破棄騒動を起こしたじゃないですか。それで多くの貴族が処分を受けたんですけどその一部が不満を持っていたみたいで……」
なるほど、不満が溜まった結果、行動を起こした、という事か。
「あの婚約破棄騒動で国内は不安定になって王族の力も衰退していたみたいですからこうなるのも時間の問題だったかもしれないですね」
「そうですね……。私も母国を出て以来何も情報を入れてませんから知りませんでした」
……お母様は大丈夫だろうか?
ちょっとだけそんな事を思ってしまった。




