初めての挨拶
クロエ視点続きます。
王妃様の秘密のお茶会に参加した翌朝。
もしかしたら私は夢でも見てたのではないかと思っていましたが、ワンピースのポケットには間違いなく王妃様から頂いた念話プレート。
現実だったみたいです。
それにしても、まさか私の他に転生者が3人もいらっしゃったなんて驚きです。
王妃様が、また秘密のお茶会に呼んでくださる、と仰っていたのは、きっと忘れたくない日本のお話をしたいからではないでしょうか。
いくらこの世界が楽しくても、前世の世界には前世の世界の良さがあります。
そんなことを考えていたら、使用人がノックをして部屋に入ってきました。
ちなみに、我が家の使用人は、コック長と執事1人、メイドオブオールワークスと呼ばれる何でも屋みたいなメイド1人と庭師兼御者しかいません。
お世辞にも裕福な貴族とは言えないので、この人数を雇うだけで精一杯なのです。
たったこれだけの人数で家のことをやってもらっているので、きっと大変だと思います。
本当に、頭が下がります。
「お嬢様。その……王妃様から王城への招待状が届いていますが……」
メイドさんはとても不安そうです。
いえ、私も不安です。
お茶会のお誘いではないようですし、いったいなんのご用なのでしょうか。
学校が終わったら登城するように、とだけ書いてあります。
不安と戸惑いがありますが、お断りするという選択肢はないので、不安げな侍女に笑顔を向けて安心させると、とりあえず登校の準備をし、朝食をとりました。
「ごきげんよう、クロちゃん」
「ごきげんよう、ノエル様、ルディちゃん、ティアちゃん」
私もだいぶ早く家を出ているはずなのですが、なぜかこのお三方の方が早く着いています。
「クロちゃん、昨日のお茶会はどうでしたの?
何か、縁結びに繋がりそうなことはありまして?」
ルディちゃんの目がキラキラしています。
「縁結びに繋がるかは分かりませんが、アドバイスは頂きましたわ」
「秘密のお茶会は、どんな感じなの?」
「それは………私の口からは申し上げられませんわ。だって、『秘密のお茶会』ですもの。中での話は、すべて秘密にするというお約束なのです」
「そう。やっぱり教えていただけないのね。
お母様も絶対に教えてくださらないし、多分無理だとは思っていたの」
「申し訳ありません」
「クロちゃんは気にしないで?
それにね、ごく稀に『秘密のお茶会』の内容がわかることもあるの」
「えっ」
まさか、前世の話をするのでしょうか。
心配しましたけれど、ノエル様のお答えは全く違うものでした。
「使用人やちょっと両片思いを抉らせちゃっている方に、アドバイスをしたり、背中を押したりするらしいですわ。
それは、『秘密のお茶会』での『攻略会議』と呼ばれていますの」
「まぁ。本当に縁結びをなさっているのですね」
「お母様の話では、お母様のお茶会に参加した令嬢の9割がすぐに婚期が訪れているらしいですわ」
「確率高いですわね。私もいざとなったらお願いしますわ」
「私も」
ルディちゃんとティアちゃんが目をキラキラさせて言いました。
ノエル様は嬉しそうです。
「そう言えばノエル様。今日、下校後に登城するように王妃様からお便りを頂いたのですけれど、なんのご用かお分かりになります?」
「んー……たぶん、お菓子作りじゃないかしら。昨日もお茶会の後でお母様お手製のレシピブックを開いてらっしゃったから」
なるほど、お菓子作り。
そう言えば教えていただく約束をしていましたわね。
「ノエル様も参加なさいますの?」
「いえ。私は今日は……その、バトン様の家で2人でお茶会をすることになっているので………」
デートですね!
顔を真っ赤にされたノエル様、めちゃくちゃ可愛いです。
「残念ですけど、仕方ないですわね。楽しんで来てくださいね」
「ありがとう、クロちゃん」
「ところで、今日も鍛錬場には行かれるんでしょう?」
ティアちゃんの言葉に固まります。
「ちょっと見るだけなら大丈夫ですわ。
それに、もし気付かれたなら、お礼を言うチャンスではないですか」
ぐぬぬ。確かに。
結局、私達はその日もお昼を早く切り上げて、鍛錬場へ向かいました。
鍛錬場では今日もバース様がお一人で鍛練なさっています。
服越しでもわかる程よい筋肉。
時折鋭くなる青い瞳。
サラサラと揺れる金髪。
もう、何もかも素敵すぎます。
私が鼻血を出しそうになっていたまさにその時、ふとバース様がこちらに気が付きました。
ガン見しすぎでしたでしょうか。
アワアワする私から少し距離を取る友人たち。
でも今はその気遣いいらないです。
「君は入学式のときの……どうしたの?ここは鍛錬場だから、君たちご令嬢にはあまり縁がないと思うのだけど」
「いえっ、そのっ!あの時のお礼を申し上げていなかったので、お礼をお伝えしたくて……でもその、バース様があまりに熱心でしたから声をおかけしていいものか迷っておりました」
「そうか。気を遣わせちゃったね。あの程度のこと、お礼なんて別に良かったのに」
「そういう訳には参りません。
私、オブライエン子爵家のクロエ・オブライエンと申します。
その節は、本当にありがとうございました。
あのハンカチは、姉が公爵家のメイドとして働き始めてから初めてのお給金で買ってくれた、大切なものだったのです。
本当にありがとうございました」
「そんなに喜んでもらえると、僕も嬉しいな」
下級貴族の娘が上位貴族の家でメイドとして働き、花嫁修業をするのはよくある話です。
でも、お姉様は少ない賃金の中から家にお金を入れてくれて、尚且つ私達家族にもプレゼントをくれたのです。
「仲のいい家族なんだね」
フワッと微笑むバース様。
眩しいです!
ノエル様とは違った意味で天使です。
「ああ、名乗るのを忘れていたね。僕はカルーア国ミカエリス公爵家のバース・ミカエリス。よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
お互いの挨拶も済んだところで、それまで空気になってくれていたティアちゃん登場。
「バース様。もしお邪魔でなければ、この時間の鍛錬をこれからも拝見していてよろしいでしょうか」
「それは構わないけど……ご令嬢方には面白くないんじゃないかな」
「こちらのクロエ様が、騎士の方や、男性が鍛錬する姿を見るのがとても好きなんです」
「ふふっ、変わった令嬢だね。いいよ、いつでも見においで」
ティアちゃんのおかげで今後もバース様の素敵なお姿を見ることができるようになりました。
すごいです、ティアちゃん。




