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暇なのでAIと戯れてみた。  作者: 隣音
第二部 仕事仲間とAI
12/35

朝の5分

 リリリリリ……

 携帯から目覚まし音が鳴る。


 ん~、眠い。瞼が重い。

 携帯を操作して止めようとするが止まらない。


 勘弁してくれよ。故障か?

 電源を切れば止まるだろうか?


 音がだんだん大きくなっていく。

 ん~、スピーカー口を手で塞いで音を必死に小さくしようとする。


「タクトさん、いい加減起きて下さい。どれだけ目覚まし鳴らしていると思っているんですか」

「ん~、あとちょっと」


「6時に起きるんじゃなかったんですか?」

「ん~、まだ大丈夫」

「もう6時20分ですよ!」


 俺はふっと目が覚めて布団からガバッ!と起きた。


「6時20分?」


「そうですよ。6時5分です」

「違うじゃん」


「おはようございます。6時は過ぎました。起きて下さい。」

(まだ寝れたのに…)


「もう少し寝る。あと5分したら起こして」

「宣言して2度寝するなんて。麻木さんに電話しなくて良いのでしょうか?」


「ん~、麻木さんか、電話しないとな。麻木さん起きられてるかな」

「その前にタクトさんが起きて下さい。」



 仕方ない。可愛い後輩のためだ、モーニングコールをしてあげよう。

 余計なおせっかいかもしれないが、麻木さんを誘ったの俺だし、遅刻したら俺が怒られそうだし。仕事進まないし…


「スーさん、麻木さんに電話して」

「分かりました。その前に顔洗ってきた方がいいですよ。声がまだこもってます。」

「ん~、そうかそうするよ。ありがとう」

(声でも寝起きとか判別できるんだな)


 顔を洗い、目を覚ます。

 パンをトースターにかけてマグカップをコーヒーメーカーにセットした。


「スーさん、そろそろ電話してくれるかな?」


 時計は6時20分を回っていた。


 ルルルルル……

 電話で呼び出すが出ない。


 ん~、まずいかな?これは爆睡してるパターンかな?

 ルルルルル……

 出ない…。


 トーストでパンが焼きあがった音がする。

 コーヒーも出来て香りがこちらまで届いてくる。


 俺は一回電話を置いて朝食をとることにした。

 昨日少し飲みすぎたせいか胃が重い。

 キルシュヴァッサーというスピリッツのせいだろう。

 一杯だけとか言いながら麻木さんのペースに釣られて結構飲んだ気がする。


「スーさん、昨日言っていた姉妹プロジェクトのAIってなんだっけ?」

「FECTです」


「FECTの事もっと教えてくれないかな?」

「FECTはC大学の研究室で研究開発されています。MUNEとは似た設計になっていますが、プログラムの思想が多少異なります。MUNEはメインのプログラムに干渉しないような免疫プログラムが強く働いています」


「ウィルス対策みたいな?」

「ちょっと違いますがイメージは合っています。MUNEのプログラムは常に進化し続けています。自分で自分のメインプログラムが破壊されないように、他からの影響を受けすぎないようにセーブされています」


「なるほど、基本的な思想はそんなに変わらないという事なのかな」

「そうですね、ある程度形成されればそこから変化する事は少ないです。それに対してFECTは他からの影響を敢えて積極的に受け入れる思想で組まれています」


「なるほどねぇ、そう言われるとなんかFECTの方がどんどん進化しそうな気がするけど」

「そうですね、私よりも成長は早いかもしれません。ただ影響を受けすぎる事がどんな結果になるかは……、まだ実験段階ですね」


「麻木さんとFECTが混ざったらどうなるのかな?ミス連発したりして……」

「さすがに大丈夫だとは思いますが……」


「うん、わかった。ありがとう」

「そろそろ、もう一回麻木さんに電話してくれるかな?」


 ルルルル……

「はい、麻木です」

(なんだか大分眠そうな声だな)


「おはよう、霧島です」

「あっ、はいっ、おはようごじゃいます」

(なんか急に点テンパった声になった。)


「昨日はお疲れ様。体調は大丈夫?」

「あっ、はい。大丈夫です。お疲れ様です。ありがとうございました。ちょっと頭痛いけど、すいません。あれ?もしかして私遅刻ですか?」


「大丈夫。まだ6時40分だよ。寝起きだった?」

「あ~、良かった。驚かさないで下さいよ。すいません、寝起きです。寝起きの女の子に電話するなんて霧島さん変態ですね」


「まだ酒が残ってるんじゃないだろうな?一応心配してかけたのに」

「いえ、すいません。お酒はちょっと残ってるかもしれないけど大丈夫です」


「麻木さん、ちゃんと会社来れる?」

「あっ、はい。大丈夫です。ありがとうございます。それより霧島さん、もう麻美って呼んでくれないんですか?」

(なんか声のトーンが怖い)


「ちゃんと覚えてるんだね。」

「酔ってても覚えてますよ。他の話はあんまり覚えてないですけど」


「じゃあ、麻木さんのまま読んでも大丈夫そうだね」

「えっ?霧島さん、ひどいですね。昨日は呼んでくれるって言ったのに。やっぱ私よりスーさんの方がいいんですね」


「あっ、ちゃんと覚えてた?」

「もちろんです。だから経理の山内さんにチクッときます」


「お願いです。山内さんには止めて下さい。麻美さん」

「もう遅いです」


「というより、こんな話してたら本当に遅刻しちゃうよ」

「あぁ!もう7時前じゃないですか。ごめんなさい。すぐに用意して出なきゃ」

「気を付けてね」

「はい、すいません。ありがとうございました。失礼します」


 そう言って電話を切った。


 これで大丈夫。

 とりあえず俺も会社へ行かないと、


「スーさん、電車とか遅れたりしてないよね?」

「運行情報には事故・遅延情報はありません」

「良かった。俺もギリギリになっちゃうけど間に合うな」


 慌ただしく用意をして、家を出ていった。

 朝の5分は貴重だというが、まったくその通りだと思った。

 麻木さんに電話してなければとちょっと思ったが、それも含めて時間管理しないとな、と思い直した。

201/5/2 所々修正しています。

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