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難しいことは置いといて  作者: 蔵 篤夫
4/5

肆 子どもだってできるんだ

 5才になりました。アーサー・ウエイトです。


 日々、絶え間ない筋トレのお蔭で同い年の5才児に比べると2回り程でかくなった私アーサーは、此の時より母に武器術を習い始めました。


 母は冒険者時代小柄な体の力不足を筋肉とハルバートでカバーした猛者で魔法の身体強化を邪道と言ってなかなか使わない困ったさんだったらしく、たまに尋ねてくる昔の話が楽しいです。曰くオークと殴り合いをした、オーガを素手で倒した、巨人とタイマン張った、ドラゴンを拳で沈めた等、140程の身長で此の逸話は、もはやサギです。


 そんな母ですので武器はあったらラッキー程度に思えと普段から言われております。魔法だって飾りだ、最後に物を言うのはこの鍛え抜かれた身体だけ。と毎回ポージングをしながら声高に宣言します。確かに、母の体は彫刻家の終生の一品のように美しく、乳児が終わるころに父が乳が無くなったと嘆くほどに無駄な脂肪が一切無い素晴らしい身体です。あ、呟きを聞かれた父はぼこぼこにされてました。身長と筋肉とプロポーションはなかなか思い通りにいかないものです。


 剣や槍等の一通りの型を覚えてみると、違和感が激しく「かわして殴れば良くないか?何かを動かすなら手を突き出す方が早い」と思う事が多くなり。父に聞いてみると、「いいか剣が有れば受けるし捌ける。相手が自分よりも技量が上だった時の事を考えなさい」と、なるほど確かにふとした一撃は予防しておかねばならない。


 母に聞いてみると、一頻り笑い「いいか拳が有れば受けるのも捌くのも貫くのも自由だけどね、其れでも熱い、寒いは感じるんだ。スライムどもはぬるぬるして気持ち悪いしゾンビ何ぞに触れるのは嫌だろう。フォークが有るのに手づかみでステーキ食べる必要は無いんだよ、あんたはそろそろ食べ方に気をつける頃合いだね」たしかに、一々服が汚れてはかなわない。出来るからと言ってしていては子供と変わらないと気付き猛省した。


 最近では、家での手伝いやお使いに出される事が増えてきた。この町では五歳過ぎたら家の手伝いをするのは裕福な商家や貴族以外には一般的であり、我が家はあくまで一般的な町民でしかない為その風習に習っている。


 この町は、大陸中央よりやや西にあるバルグスク帝国の首都であるバルギアより南に馬車で3日の所にある。町の名前はミースと言い川岸の港街だ、町の北に帝都、西にルクトミス山脈、東に帝都の北にそびえたつバルグスク大連峰と言う大陸を横断する険しい山から下りる大河が流れている。この大河は幅が100キロもあり、大陸を縦断している。町の南は街道となっているが、近場は何処も農村である。造船技術が未熟な時代に街道の宿場町として栄え。現在は河川を利用した魔動船による運送の集積場として帝都の台所と言われる町である。


 ルクトミス山脈の影響で山を越えるよりミースから河で帝都に向かい、そこから帝都西にあるルクトの町へ向かう方が時間的に優れているため、帝都の西と南はほとんど直接の交流は無い。


 他国との交流はルクトを通して西に通っている大街道が使われている、勿論ミースも河向う、河北、河南にある国々とも交流はある。母は河北にある小国で仕事中に事故があり、偶々嵐で荒れていた河に巻き込まれこちら側に流れ着いたらしい。何故か生きていた母を見つけた父はこんな子供を見捨てられないという父性をもって接していたが、母は今まで経験したことのない優しさと甲斐甲斐しさに惚れたのだそうだ、どうでもいい。さらに、実は父と母が同い年と知った時も色々あったらしいがもっとどうでもいい。


 早期より鍛錬ばかりしていた私は町に不慣れである。この町は町の東西南北と門からまっすぐに道が伸びている。南通りに商家が集まり、東南に倉庫街、東通りに港、東北には貴族街、北には門通り沿いに官公邸が並んでいる。北西には公務に付くものや民家が集まり、西通りに宿場があり、西南にも民家が集まっているが、こちらにはあまり裕福ではないものが多い。


 町の中央には広場があり中央に近いほど重要な施設があり。位の高い人の家は北寄りにある。我が家の大黒柱は兵士長、公務員であるので町の北西に住んでいる。役職が騎士の下なので、門と中央の中間そして貴族位が無いため南寄りに住んでいる。


 我が家から、市場に出ると私は必ず迷う。私がお使いを初めて20日、20回目の迷子を経験していると頭一つ分小さい女の子に声を掛けられる。


「あんた、また迷ってるの」


「ミニー、助かりました。すいませんがアルフレドの果物店は何処ですか、まだ買い物が終わって無くて」


 ミネルバは西門通りに面してある宿屋の4女で私と同い年である。我が家は町の公邸を母が広いからと買ったもので、門通りの真裏にあるのに通りに出るためには一度西門まで出ないといけない為、町の役職に就くものには需要がなく金持ちには利益がないと言う物件であった。この家が実はミネルバの家の裏手にあり、父などは仕事終わりにミネルバの家で飲み、裏手から出してもらって帰ってくるので両親は以前から有効な関係を築いていた。私ははじめてのお使いの際に、両親に頼まれたミネルバに店を案内されたことで知り合ったのである。


「アルフレドさんとこに行くのに、こっちは逆よ」


 ミネルバが先導してあるいてくれる。市場は普段中央通りから南門通りに露店や行商が店を出すため賑わい、町の特性で南に行けば行くほど門通り以外の道が細く多くなる。路地一つ間違えると私には迷宮に感じるため困りものである。


「メリッサさまも、なんで北西のお店に行かせるのかしら」


「母が言うには、アルフレドさんは近場の村から直接仕入れていて安いし新鮮だからって」


「知ってるわよ、うちもアルフレドさんにお願いしてるもの。問題はアルフレドさんほどの老舗になると町が不慣れな人には不便ってこと」


「門通りは高いって…」


「あら、わが《大樽の憩い亭》は安くて美味いがモットーよ」


 ミネルバがおしゃまに胸をはり、こちらに笑顔を向けてくる。


「ほら、ついたわよ。帰りも送ってあげるから」


 「ありがとう、ミニー。直ぐに戻るから」


 私は、着実にこの世界に馴染んでいます



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