第一戦 狼対星 その1
第一戦。
――銀狼 対 凝子――
相対するのは、黄金等級の魔法少女【銀狼】と典位の魔法使い【久遠凝子】
――どちらもうっすらと笑みを浮かべる。
遠くを見る固有魔法を持つ魔法使いによって距離が離れていても姿も声も視えるし聞こえるようになった場所で、観戦をする。
「まぁ、まずは名乗りを上げましょうか。
典位が一人。星井戸の魔法使いが久遠凝子。貴女の首を貰い受ける!」
普段の探偵服のような服装ではなく、ゆったりとしたマントを羽織り分厚い本を小脇に抱えている凝子さんが、少し大げさに宣誓する。
「黄金等級。銀狼。岡深舞。楽しんで殺し合いしよう?」
銀狼の本名を初めて聞いた気がする。大体いつも呼ばれるのは二つ名の方だったから本名を今まで知らなかったことに気が付いた。
戦闘の開始の合図もない。模擬戦じゃない本気の殺し合いはもうすでに”始まっている”。
様子を見るように双方が、すり足で少しづつ接近する。
……魔力干渉帯が展開されていない?凝子さんなら干渉できるのにその気配がない。
「あのバカ弟子は相手の魔法を封じなくても勝てる、とあえて干渉していないのさ。その方が力を誇示しやすいのも理解したうえでね。」
隣で見ている幻理さんが私の疑問に先回りするように答える。
銀狼が拳に魔力を纏わせ突きの要領で、純粋な魔力の砲撃を撃ち出す。
魔法少女の魔法とも魔法使いの魔法とも少し違う、純粋な魔力の塊。
半身ずらしただけ。凝子さんはたったそれだけで砲撃から逃れる。
衝撃波もないただの魔力だけ。”視え”ているのであれば魔力を使うまでもなく避けれる。
「直線的。付与効果も無し。ただの魔力の塊が故に出は速い。
……大いに結構!ただ、対人では簡単に避けられることがありますよ?」
「それに、貴女は近接戦特化の魔法少女のはず。なら、魔法を封じられることも気にせず突っ込んできなさいな。私は、そんな無粋な真似はしませんよ?」
凝子さんがまっすぐと手を向け、煽るように手招きする。
銀狼が少し脚に力を入れたかと思うと、瞬きの間に消え、凝子さんと銀狼が肉薄する。
少し遅れての衝撃。砂が少し舞う中で振り抜かれた拳が本で軽く押さえつけられる。
銀狼の困惑の表情と余裕そうな凝子さんの対比。
軽く本が振るわれ、銀狼が距離を離される。たぶん身体強化を使ったうえで本で打ち払った。
どちらも傷は無い。それでも状況は凝子さんが有利だ。
「うざったいなぁ。力が抜けるあの感覚が無いのに……。魔法使いにとっちゃこれくらいは出来て当然ですってこと?」
銀狼が吐き捨てるように呟く。……干渉は出来てもあの威力を受け止められるのはそんなにいないと思います。
「いやぁ?これくらいできる人もそれなりにいるけど、別に私たちは戦闘集団じゃないからね。基本的に私たちは研究者なんだよ。ただ、”戦闘”も出来るってだけでね。」
「じゃぁ、こっちからも、そろそろ攻撃をしようか。」
本が開かれる。――暗い星の様な魔力が世界に解き放たれる。




