山の翁 その3
数度の激突。
魔力が干渉しあい、耳鳴りのようなノイズが耳をつんざき、
合間を縫うように、山の翁が引くバイオリンの調べが戦場へ響く。
翁の弟子、花梨との手合わせ。すでに山肌は抉られ岩肌を露出させる。
魔法少女の力任せのような魔法でありながら、魔法使いのような術式。
思考の間にも、魔法が撃ち込まれている。
――ただし、私には届かない、届かせない。
「むかつくむかつく!ろくに反撃もしないで!
私には攻撃すら必要ないって言うの!?」
激昂しながらも、流星のように魔法弾が飛来する。
だが、魔法弾は希釈され、解けるように霧散する、
――私の支配領域では存在を証明しきれない。
「魔力干渉帯がある以上、生半可な攻撃は無意味でしょう?
貴女も教わっているはずでは?」
口に出して思ったけど、この言い方だと煽っているようだと思ってしまう。
魔法が粗くなっているけど……、息切れの心配はしていないのだろうか?
「うるさいうるさい!黙れ!才能を見せつけるな!近づくことすら許さないくせに!」
まぁ、否定はしない。飛ばれて接近されても面倒だし。
近づかれて、刺されるのは御免だしね。
身体強化で突っ込んでくるでもなく、ただ魔法を放つだけ。
想定よりも弱い……、いや理性的な判断を出来ていないだけかも。
魔力の圧を上げ、飛翔術式を断続的に噴かしながら花梨へ突撃する。
気押されるように、花梨が後ずさる。
逃さぬように胴目掛け蹴りを放つ。
吹き飛ばぬよう、崩れ落ちるように崩す。
「まずは、一回。」
ただの手合わせ。致命傷を負わせるまでもないし、ましてや殺す必要もない。
……殺す理由がない。
「余裕そうに……。そんなに”そっち側”から見た”私たち”はか弱いのか!」
花梨は咽込みながら睨みつけ、魔法弾を放つ。
花梨の怒りの理由も何となくわかる。
……その怒りを晴らすことが難しいことも。
「か弱いとは思っていません。
――ただ、知らないが故の拙さを私は知ってしまったので。」
せめて、せめてもの慰めとして、気が済むまで殴り合うことも必要だと思う。
とても血生臭い解決策だとも言えるけど。




