銀の狼 その3
あぁ、うるさいなぁ、たかが両手が貫かれた程度で。
「黄金っていうには、随分と痛みに耐性が無いみたいですね。」
のたうち回る銀狼、それがとても先輩と同じ黄金等級と同じには見えなかった。
前に闘った魔法少女の方が耐えていた、なんてそんな感想が浮かんでくる。
ふと、銀狼の腰の通信機に違和感。
――救難信号が発せられている。
あぁ、しくじってしまった。どれくらい前か見当もつかないけど。
すでに複数の魔法少女が、”来ている”。
様子見で隠れているのか、到着していないのか。
姿は見えないけど――確実に居る。
魔力がほぼ同時に周辺から反応を起こす。
煌くような魔法弾が、複数飛来する。
集団戦闘の練度が予想よりも高い。
噂程度に聞いている魔法少女の回収部隊。
”死なせたくない”魔法少女を助けるためだけの魔法少女。
飛来する魔法弾を逸らし、避けながら周囲を探っても詳細な位置が分かりにくい。
見えないように移動して他の魔法少女が隙もカバーしている。
花を二つ、周囲を薙ぎ払うように手と共に動かす。
見えないのならば、まとめて薙ぎ払えばいい。
「ほんと、めんどくさいなぁ。」
撤退しようにも捕捉されているし、逃がす気もなさそうだし。
ただ――殺意は感じられない。
銀狼を回収したいだけ、そのために目障りな私の動きを止める。
別に、私も銀狼を殺したいわけでもないから、回収するならさっさとしてほしい。
魔法少女たちの纏う空気が少し変わる。しびれを切らして、決めにかかるのだろう。
攻撃術式がより苛烈になっていく、防ぐ花弁が当たっては砕け、それを補うように
増殖していく。
意識の外から、飛翔魔法の噴射音が聞こえる。
そして、飛来する魔法少女が銀狼を抱え、即座に離脱していく。
先ほどまでの苛烈さが嘘のように、攻撃が止み辺りに静寂が訪れた。
戦いが終わり、周囲を見渡せば激しい攻防によって町の中心は、
さらに開けた空間となっていた。
空には、テレビ局の物だろうか、ヘリコプターが上空を周回していた。
また――世間が動く。




