銀の狼
少し開けた町の中心で、4体の強魔級が消滅する。
もう強魔級程度では、苦戦すらしない。
――ただ、この後の方が面倒だと思う。
魔法少女の魔力。
感じ方からして、黄金等級。
出来れば、見逃してほしいなぁと、希望的観測をする。
魔力を過剰に噴かす魔法少女特有の飛翔音。
音の方向へと振り返る、予想よりも早い。
飛翔音にむらがある、それでいて推定黄金等級。
――嫌な予感というものは当たる物。
”銀狼”か、”業火”と呼ばれる魔法少女。
まだ、”魔法少女”だった時に少しだけ見たことのある、問題児二人。
業火ならまだ、話が通じると思いたい。
右へ、半歩移動する。
轟音と共に道路へと、着弾する”銀”。
水道管が割れ水しぶきが上がる。
ゆらりと立ち上がる狼の要素を持つ少女。
”銀狼”の名を付けられた、獣人のような魔法少女。
その殴りは、ビルすら貫く破壊。
……ただし、魔法の扱いは苦手、そう聞いた覚えがある。
「へぇ、優等生ちゃんじゃん。……あぁ、”元”優等生か。」
水に濡れ、こちら睨むように観察される。
「せっかく”エモノ”にありつけたと思ったのに、もう終わってるとか
あぁ……うざいなぁ。」
魔法少女らしからぬ闘争本能。
「あ、そうか。君、もう魔法少女じゃないんだよねぇ。
じゃぁ、”未登録”だ。なら、殺していいんだ。」
殺意がこちらへと向く。守るためじゃない。ただ、戦いたいから戦う。
私とは相容れぬ思想。
「……なんか、言ったらどうなの?それとも首でも差し出してくれるの?
つまんないなぁ……せっかくの戦いだよ?楽しもうよ。」
「”銀狼”貴女は、戦うのが怖くないんですか?死ぬかもしれないのに、
それでも戦うんですか?」
目の前の魔法少女は、心の底から疑問に思うかのように首をかしげる。
「……?死ぬのなんて戦うんだから当たり前じゃん。
”それ”を恐れるくらいなら、楽しんだ方が良いじゃん!」
言い放つより先に拳が振るわれる。
拳圧で路面がさらにめくれ上がり荒れる。
即座に”花”を創り、魔法弾をばら撒きながら後退。
障壁すら張れない魔法少女、ならば距離を離すのが一番。
「うざいなぁ!……ちょろちょろ動かないでよ!」
銀狼の拳に魔力が集まる。……魔法が下手でも、魔力の流れは滑らか。
弾幕は切らさない。油断しない、侮れば私の首が飛ぶ。
魔力を纏う拳、ただの拳が――魔法の弾幕を”かき消す”。
「……はぁ!?」
思わず声が漏れ出る。
魔法使いの戦いではよく見た光景。魔法を魔力で希釈して乱す。
偶発的とはいえ、目の前で起きたことに動揺が走る。
「隙……在りィ!」
銀狼が爆発的な加速で、拳を叩きつけに来る。




