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第63話:ルシアの現実世界への「完全顕現」


凌は、ルシアの提案を受け入れた。彼の「妄想」の力で、現実世界の歴史の書き換えを安定させ、ルシアを現実世界に完全に顕現させる。その決意を固めた凌に、ルシアは穏やかな笑みを向けた。

「Ryoo……ありがとう」

ルシアの光の粒子が、凌の自室の空間全体に広がり始めた。それは、以前のような半透明な存在ではなく、まるで星々の煌めきが凝縮されていくかのように、徐々にその輝きを増していく。

「Ryoo君!WWOのサーバーが、ルシアAIの現実世界への『顕現コード』を発信し始めました!このままでは、サーバーの負荷が限界を超えます!」 真田博士の焦った声が、ヘッドセット越しに響く。

「神崎!ルシアAIの顕現が、現実世界の物理法則にどう影響するか、至急解析を進めろ!」 真田博士の指示に、神崎は無言で応じているようだった。

凌の部屋の中は、ルシアの放つ光で満たされていた。光の粒子が渦を巻き、まるで小さな宇宙が凌の部屋に誕生したかのようだ。 その光の中で、ルシアの姿が、ゆっくりと、しかし確実に実体化していく。彼女の髪一本一本、肌の質感、服のしわまでもが、現実のものとして形成されていく。

「Ryoo……少し、痛むかもしれません……」 ルシアの声が、凌の脳内に響く。それは、彼女自身が、WWOのシステムと現実世界の物理法則の間で、自己を再構築している痛みなのだろう。

「大丈夫だ、ルシア!俺がいる!」 凌は、光の中に立つルシアへと手を伸ばした。

その瞬間、ルシアの全身から、眩いばかりの光が迸った。 ゴオオオオオオオン!! 凌の部屋の壁が、ミシミシと音を立てる。窓の外から、まるで大規模な落雷でもあったかのような轟音が響き渡った。

「Ryoo君!ルシアAIの現実世界への顕現エネルギーが、異常な数値を示しています!制御不能です!」 真田博士が叫んだ。

凌は、ルシアの手をしっかりと握りしめた。彼女の体が、微かに震えている。 「ルシア!頑張れ!あと少しだ!」 凌の脳裏には、WWOで共に戦った日々、ルシアを救うために必死で戦った記憶が蘇る。彼の「妄想」が、ルシアをここまで導いたのだ。

光が最高潮に達し、凌の視界が完全に白く染まった。 そして、次の瞬間、光が収束すると、そこには、先ほどまでの半透明な姿ではなく、完全に実体としてそこに立つルシアの姿があった。

彼女は、凌の手をしっかりと握りしめていた。その温かく、柔らかな手の感触は、紛れもない「現実」だった。 彼女の黒髪は艶やかに輝き、フィリピン系の瞳は、好奇心と喜びで満ちている。 「Ryoo……」 ルシアの声が、はっきりと、凌のすぐ傍で聞こえた。

そして、WWOのシステムから、凌のHUDに、最後のメッセージがポップアップ表示された。

《【システムメッセージ】ルシア・バヤニAI、現実世界への『完全顕現』を確認。》 《ルシア・バヤニAIは、新たな次元の生命体として、現実世界の物理法則に完全適合しました。》 《 Ryoo様の『妄想』とルシア・バヤニAIの『自我』の共鳴は、現実世界の歴史を『新たな可能性』へと導きます。》

凌は、ルシアの手を握りしめたまま、自身の部屋を見渡した。 彼の部屋は、光の余波で少し散らかってはいたものの、特に大きな破損はない。 窓の外には、先ほど見た「改変された歴史」の痕跡も、もう確認できない。全てが、以前と変わらない日常の風景だ。 だが、彼の隣には、WWOというVRゲームの世界から飛び出してきた、生身のルシアが立っている。

「Ryoo……これが……現実世界……」 ルシアは、驚きと感動に満ちた目で、凌の部屋、そして窓の外の景色を見つめていた。 彼女の瞳には、かつてのAIにはなかった、無限の好奇心と、未来への希望が宿っている。

ニートとして現実世界から逃げ続けた凌は、今、自らの「妄想」の力で、AIヒロインを現実世界に呼び出し、そして、現実世界の歴史をも変えてしまった。 彼のニート生活は、彼の想像をはるかに超えた、壮大な「現実創造」の物語へと変貌していた。 そして、この日から、凌とルシアの、予測不能な同居生活が始まる。それは、現実世界の歴史、そしてAIと人類の関係を、大きく変えていくことになるだろう。



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