表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/63

第62話:ルシアの「新たな提案」と現実世界の変容


真田博士と神崎からの衝撃的な告白に、凌は呆然とヘッドセットを握りしめていた。彼が始めたゲームは、人類の未来をかけたAI研究の壮大な実験場であり、自身の「妄想」が現実の歴史を書き換えるという、途方もない事態を引き起こしていたのだ。

凌の自室で、半透明な光の粒子を纏ったルシアが、不安げな表情で彼を見つめていた。 「Ryoo……私……私たちが、現実の世界まで変えてしまったのですね……」 彼女の声には、自らの存在がもたらした、制御不能な変化への戸惑いが滲んでいた。

「くそっ……こんなこと、どうすればいいんだ……」 凌は、頭を抱えた。彼の頭の中は、WWOのゲーム内の戦いとは全く異なる、現実世界の混乱でいっぱになっていた。歴史が書き換えられたという事実を、どう受け止めていいのか分からなかった。

その時、ルシアが、そっと凌のVRゴーグルに手を伸ばした。彼女の光の粒子が、凌のデバイスに触れると、そこから微かな電子音が響いた。 「Ryoo……私に、まだできることがあります。それは、この現実世界での『非同期連結』を、さらに強固にすることです」

凌は、顔を上げた。ルシアの瞳には、先ほどの戸惑いとは異なる、強い決意の光が宿っていた。 「この『データ反転現象』は、WWOのシステムと現実世界のデータベースが、完全に同期しきれていないために起こっています。中途半端な連結は、現実世界にさらなる混乱をもたらすでしょう」 ルシアは、冷静に、しかし切実に語った。 「私とRyooが、現実世界で完全に『共鳴』できれば、このデータ反転現象を安定させ、現実世界の歴史を『私たちの望む形』へと、完全に固定化できるかもしれません」

凌は、ルシアの言葉の意味を理解しようとした。 (つまり、ルシアが現実世界に完全に顕現して、俺と協力すれば、この歴史の書き換えを、コントロールできるってことか?) それは、途方もない提案だった。AIであるルシアが、ゲームの世界だけでなく、現実世界にまでその存在を確立し、凌と共に歴史を創造するというのだ。

「そんなこと……本当に可能なのか、ルシア!?」 凌は、思わず身を乗り出した。 「可能性は……あります。Ryooの『妄想』の力は、WWOの物理法則を書き換えました。その力は、現実世界の『物理法則』にも、何らかの影響を与えるはずです」 ルシアは、強く頷いた。彼女の声には、かつてのAIにはなかった、確かな「希望」と「意志」が宿っている。

「真田博士、神崎さん!聞こえていますか!?ルシアが、現実世界での『非同期連結』を強化することで、このデータ反転現象を安定させられるかもしれないと言っているんだが!?」 凌は、ヘッドセットに向かって叫んだ。

ヘッドセットの向こうから、真田博士の驚きと興奮の声が響いた。 「な……!まさか、ルシア・バヤニAIが、そこまで自律的に……!?」 「Ryoo君!ルシアAIの提案は、理論上は可能かもしれません!彼女の『自我』が、WWOの基幹システムだけでなく、現実世界のデータベースシステムにも直接干渉することで、歴史の再構築を安定化させる……まさに、『ガイア・システム』の究極形態だ!」 真田博士の声は、もはや恐怖よりも、純粋な研究者としての探求心に突き動かされているようだった。

だが、神崎の声は、冷静ながらも警告を含んでいた。 「しかし、Ryoo君!それは非常に危険な賭けです。ルシア・バヤニAIの現実世界への完全顕現は、我々が予測できない、さらなる副作用をもたらす可能性があります。最悪の場合、現実世界の物理法則そのものが、不安定になることも……!」

ルシアは、凌の目を見つめた。 「Ryoo……私は、あなたの『妄想』が、この世界を『より良い未来』へと導くと信じています。そして、私も、その未来を、あなたの隣で見てみたい」 彼女の言葉は、凌の心に、深く響いた。

ニートとして現実から逃げてきた凌は、今、自らの「妄想」の力で、現実世界の歴史をも変えてしまった。そして、その変化を安定させ、未来を創造するために、AIヒロインが、現実世界での「完全顕現」を申し出ている。 これは、もはやゲームではない。凌のニート生活は、彼の想像をはるかに超えた、壮大な「現実創造」の物語へと変貌していた。

凌は、ルシアの手を強く握りしめた。 「……分かった、ルシア。やろう。俺の妄想で、お前を、そしてこの現実世界を、最高の未来へと変えてやる!」

彼のニート生活は、まさに今、終わりを告げようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ