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第46話:最終決戦の舞台


凌が突入した最終ステージは、これまでのWWOのマップとは一線を画していた。そこは、かつて日本の主要都市を模したであろう、しかし完全に廃墟と化した巨大な「要塞都市」だった。崩れ落ちた高層ビル群が空を突き刺し、瓦礫の山が無限に広がる。アスファルトの道はひび割れ、地下鉄の入り口は黒い口を開けている。まるで、世界の終末を思わせるような光景だった。

しかし、このステージの真の恐ろしさは、その地形だけではなかった。 「Ryoo!マップ全体に、高出力のエネルギー反応を検知!これは……プロトスが、世界のデータを再構築するために使用していたエネルギーです!」 ルシアの声が、凌の脳内に緊張を帯びて響く。彼女の解析によれば、このステージはプロトスの残滓が未だ影響力を持ち、その力でステージそのものが変形・再構築され続けているのだ。

HUDには、マップの各所に禍々しい紫色の光を放つクリスタルが表示されている。それは、プロトスの「核」を思わせる異質な存在で、周囲の空間を歪ませ、兵士の移動を阻害する「重力場」を発生させていた。 「くそっ、ただでさえリードAIとジェニングスAIが相手なのに、マップギミックまで厄介なのか!」 凌は、思わず舌打ちした。重力場に足を取られ、体勢を崩しそうになる。

「Ryoo!重力場を発生させているクリスタルを破壊すれば、一時的に効果を無力化できます!しかし、破壊すると、その周囲にシャドウ・ユニットが再出現します!」 ルシアが、冷静に戦術を提示する。 (なるほどな。クリスタルを破壊して進むか、重力場の中で戦うか、二択ってことか) 凌は、自身の『究極の妄想兵装』のクリスタルを輝かせた。彼のVRアバターの全身を覆う液体装甲が、周囲の歪んだ空間を映し出す。

ステージ全体には、リードAIが率いるシャドウ・ユニットの兵士たちが、まるで幽霊のように徘徊していた。彼らは以前よりも数が多く、その動きは洗練され、凌の《超人的索敵》をかいくぐるように、死角から奇襲を仕掛けてくる。

「Ryoo!リードAI本体が、最終防衛線の中心部にいます!そして、ジェニングスAIは……」 ルシアは、ジェニングスAIの位置を特定しようとするが、その反応は依然として捉えきれない。 《完全ステルス》──そのAIスキルは、凌の感覚とルシアの解析能力を完全に欺いていた。

凌は、瓦礫の山を駆け上がり、崩壊したビルの屋上へと飛び移った。そこから見下ろす都市の全景は、絶望的なほどに広大だった。 (こんな場所で、二体のボスAIを相手にするのか……) これまでのWWOでの戦いは、彼を強くしてきた。ニートの彼が、ゲームの中で培ってきた「勘」と「知恵」が、今、試されようとしていた。

「よし、ルシア。まずはリードAIのところまで強行突破するぞ」 凌は、決意を固めた。 「WWOの全ステージを通じての総合ランキング1位は、伊達じゃないってところを見せてやる」 彼の瞳には、疲労の色は残っているものの、それ以上に、この究極の「ゲーム」を攻略しようとする、プレイヤーとしての純粋な闘志が宿っていた。

遠く、廃墟の彼方から、リードAIの咆哮が聞こえたような気がした。それは、凌の突入を歓迎する、あるいは嘲笑うかのような、威圧的な響きだった。 WWOの最終決戦。これまでの戦いの全てが、この舞台へと集約される。 凌は、『共鳴剣』をしっかりと握りしめ、次なる戦場へと足を踏み出した。


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