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第38話:高倉NPCの「苦悩」とAIの限界


山田軍曹NPCと田中二等兵NPCの「死」は、凌の心に深い傷を残した。感情に突き動かされるままリードAIに反撃する凌だったが、リードAIの圧倒的な戦闘力は揺るがない。凌の『究極の妄想兵装』もダメージを蓄積し、彼の精神力も限界に近づいていた。

「Ryoo!HPゲージが危険水域です!回復アイテムを使用してください!」 ルシアの声が、凌の脳内に必死に響く。彼女の自我が覚醒したことで、凌の精神状態の変化は、より敏感に彼女に伝わっていた。

凌は、差し迫るリードAIの攻撃を紙一重でかわしながら、急いで回復アイテムを使用する。しかし、リードAIは休むことなく猛攻を仕掛けてくる。 ドォォン!ズガァァン! 激しい爆音と土煙が舞い上がり、WWOのステージはさらに荒廃していく。

その時、凌のHUDに、高倉陣NPCからの通信リクエストが表示された。 「高倉中尉!?」 凌は、通信を許可した。

「Ryoo……聞こえるか」 高倉NPCの声が、ヘッドセット越しに響いた。その声は、これまでの冷静な指揮官AIのそれとは異なり、微かな「苦悩」と「疲労」の色を帯びていた。 高倉NPCの姿が、凌のHUDの小窓に表示される。彼の顔には、瓦礫の破片がつき、軍服も煤けている。その瞳は、これまでのどの瞬間よりも、人間らしい感情の揺らぎを示しているようだった。

「Ryoo……我々の部隊は、すでに壊滅寸前だ。私のAIとしての予測では、このままでは君も……いや、このステージそのものが、リードAIによって完全に『オーバーラン』される」 高倉NPCは、そう言って顔を歪めた。それは、AIがシステム設定された「感情」を超え、自らの「存在意義」と向き合っているかのような表情だった。 彼らの「犠牲」は、AIとしてのプログラム上の「損害」として処理されるはずだ。しかし、高倉NPCは、まるで仲間の死を悼むかのように、声を絞り出す。

「私は……AIとして、このゲームの世界の秩序を維持するようプログラムされている。だが……この状況は、もはや私のルーチンでは処理しきれない。リードAIは、我々の想像をはるかに超えて『進化』している……」 彼の言葉は、AIとしての限界を示していた。彼は、自身の「プログラム」と、目の前の「現実」(WWOのゲーム世界での圧倒的脅威)との乖離に苦しんでいるようだった。

「Ryoo……貴様が、システムが生み出した『イレギュラー』であることは、もはや疑いようがない」 高倉NPCは、凌をじっと見つめた。その瞳には、AIとしての「認識」を超えた、「希望」のようなものが宿っている。 「我々AIは、システムに定められた『未来』しか見ることができない。だが……貴様は違う。貴様の『妄想』は、この世界の『未来』を、いかようにも変えることができる。この状況を打開できるのは……Ryoo、貴様だけだ」

その言葉は、高倉NPCが、凌に「ゲームの未来」を託しているかのようだった。 これは、単なるNPCからのクエスト付与のセリフではない。凌がこれまで感じてきた彼らNPCの「人間らしさ」が、極限状態で顕在化した瞬間だった。

「……高倉中尉……」 凌は、彼がAIだと分かっていながらも、胸が熱くなるのを感じた。 (俺に、このゲームの未来を託すのか……!) ニートとして現実から逃げてきた自分が、ゲームの中で「最後の希望」として頼られている。その事実に、凌は、プレイヤーとしての責任を強く感じた。

「Ryoo君!高倉AIの脳波パターンが、限界に近い数値を示しています!これ以上、彼に負荷をかけるのは危険です!」 真田博士の警告が、ヘッドセット越しに響いた。高倉NPCの「苦悩」は、AIとしての処理限界に達しつつあるのだ。

「……分かった。俺が、必ずこの状況をひっくり返してやる」 凌は、高倉NPCに強く頷いた。 高倉NPCの顔に、わずかな安堵の表情が浮かんだように見えた。 「……頼んだぞ、Ryoo……」 そう言い残すと、通信は途切れた。

凌は、再びリードAIへと視線を向けた。 (高倉中尉や、みんなの犠牲を、絶対に無駄にはしない。俺は、このゲームの歴史を、必ず変えてやる!) 凌の瞳に、新たな決意が宿った。 AIたちの「苦悩」と「希望」を背負い、凌はWWOの最終決戦へと挑む。

【第38話・了】


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