おまけ4 スティーヴンとリアン その2
アリスが生まれた後、エドワードが休憩中の執務室でのリアンとスティーヴン
「スティーヴン、外れだよ。名前はアリスに決まったらしい」
「アリス? 代々の王女にそのような名前はなかったと思うが」
「つまりナタリー様の希望?」
「かもしれないな」
そう言いながら腑に落ちなかった。殿下は自分の事は自分で決めたい性格だ。それにレヴィ王家の伝統を重んじると思っていた。代々の王家で使われた名前で、帝国語と発音が同じものに絞ったらあの二つだったのに。
「でもアリスという響きは可愛いよね。どちらに似ても似合いそう」
アリスという名も帝国語と発音がほぼ同じなので、ナタリー様が考えていても不思議ではない。シェッド帝国の皇女にアリスという名前がいるかまでは調べていなかった。
いや、でも帝国と縁を切りたい殿下が帝国の名前を取るだろうか。
「スティーヴン? どうかした?」
リアンが訝しげな視線をこちらに向けてきた。
「いや、殿下の父親姿は想像出来ないと思って」
「確かに。今も女性に声を掛けに行ってるんだろう? 殿下の考えがわからない」
リアンは机に両腕を伸ばし、片腕に頬を預けている。
私からしたらリアンのその態度がわからない。よく王太子の執務室でそのように寛げるものだ。
「殿下は側室を何人抱えようと、それは自由だ」
「だけど殿下は相思相愛になれる人を探しているのにおかしいよ。ナタリー様は違うの?」
「それは殿下に尋ねてほしい。私は知らない」
殿下は未だに拗らせていて、結局あの夫婦は向き合っていない。はたから見てて正直少し苛立ってもいるのだが、私が口を挟んでいい事ではない。
それに殿下が忙しくしている原因は、ナタリー様を守る為なのは間違いない。
「ナタリー様でいいと思うんだけどな。何が不満なのかな?」
「親に決められた結婚というのが嫌かもしれないな」
「あぁ、それはあるかも。殿下、陛下の事は嫌いだよね」
「滅多な事を言うな」
私はリアンを睨んだ。彼は身体を起こして肩をすくめる。
「ま、俺も父親の事は好きではないけどね。スティーヴンもそうだろう?」
「父と揉めるのは面倒だから適当にあしらっている」
「よっ、腹黒!」
リアンが軽口を叩いたのでもう一度睨んだ。リアンは困ったような表情を私に向けた。
最近ではレスター家の行動も少し表に出てきている。主に父が勝手に動いてるのだが。さすがのリアンでも、レスター家の行動の意味は理解しているのだろうか?
「そろそろ仕事に戻ろうか。進んでいないと殿下に怒られるのはリアンだと思うが」
私の言葉にリアンはつまらなさそうな表情を浮かべたが、渋々仕事に戻った。
私も机の上の書類に視線を移しつつ、殿下の幸せの為に出来る事を思案し始めた。
しかし殿下の父親姿は全く想像出来ない……




