町に行こう その1
支度も終わったので、家を後にする。
あーあ、この家…土台からしっかり建てたかったな。表に出てる部分はログハウスっぽい感じで、簡単に吹き飛びそうである。これ、土台から建てるだけでも結構強度が上がると思うんだけど。(※素人意見です)
「こっちの方角に結構行ったところだね~」
「ごめんよく分からない」
“こっち”って…指示語で話さないで?君の手の位置、私が見上げるくらいの高さなんだよ?それと“結構”って何?どれくらいなの?
「山の反対側の方向に三時間くらいかな~」
「…それ、歩いて?」
結構近いのかな?
「いや~、車くらいのスピードで飛んで」
と思っていた時期がありました。
車…車って結構出せるスピードは幅広いと思うんだけど。細かいこと気にしてると禿げる?事象付与で何とかするから、問題ない!
「じゃあさ、私飛んでくから恭子は翼生やして飛んでいけば?」
「わかった~」
そう言いつつ、恭子が生やしたのはいかにもファンタジーっぽい妖精の羽。
…え?い、意外…。
あ、ヤバい腹筋崩壊するかも。
「何でそれ?」
「天使っぽいのとか、悪魔っぽいのも試したけど~……唯一服が破けないのがこれだった」
「………」
うん、理解した。笑いそうになってごめん、もの凄く実用的な考え方からそれだったんだね。ほんとごめん。
さ、さて…町に行くよ!事象付与で…〈飛翔〉!
ふよーんと前に進む。
…お、これ意外と面白い。
もっとスピード出せるかな?今は森の上ギリギリだけど、もうちょっと慣れたらもっと高い場所にも行けるかも!
初めての感覚にわくわ…く…どき………寒っ。
そりゃそうだよね…こんなスピード出してたら、風が当たって寒いよね。上着は過ごしやすい気温だから持ってきてなかったし、困ったな。
鞄の中には筆記用具と研究ノート、熊、もしものための包丁…それと日用品などが入っている。
包丁でも刃物なんだから、自己防衛のための武器として持ってきた。研究ノートは異世界の人や町について調べて書き残すためだ。
うーん、如何するべきか。
あ、そうだ気流を操作すれば何とかなるんじゃない?直接風が当たらないようにすれば寒くないかも。
周りに薄い膜を張り、風が直接当たらないように工夫する。それだけで先程まで感じていた寒さが激減した。
一言感想 “事象付与”マジ万能説
……あ、そうだ私一度二重人格になってみたかったんだよね。暇だしやってみようかな?
事象付与発動、〈多重人格〉!
『こんにちは、私!』
こんにちは、私!
『おー…面白いね、これ。研究しがいがあるよ』
そうだね、後で色々試してみようか。暇があったら、の話だけど。
『で、どっちが体を操作する?』
あ、私がやりたい!
『了解。でも、普段からこうやって会話するわけにはいかないよね』
他の人と会話してる時は無理だね。
『戦闘モード作ろうよ』
良いねそれ!その時は“戦闘形態移行”!とか言うのもありだね!
『恥ずかしいから多分言わないけど!』
まあね!
で、効果は如何する?
『まず、基礎能力上昇は当たり前だよね』
身体能力とかね。それは〈身体能力強化〉で良いかな?ノートに書いておくよ。
『ありがとう。どのくらい強化する?』
殴ったら大地にヒビが入るくらい。
『ん、了解』
まあ、イメージの問題だし…実際に試せないのが悔やまれる。
『それはもう仕方ないじゃん。次は〈状態異常無効〉とか?』
お、良いかも。でもさ、それって普段から付けてた方が良くない?ここでの生活、森で何か採って食べるとかありそうだし。
それに、不意打ちで状態異常とか来たらヤバいじゃん。
『それもそうだね。じゃあ、今のうちに付与しておこう』
付与されたとき特有のふわっとした感じがする。
ちゃんと付与されているようだ。
あとは何かある?
『〈疲労軽減〉〈疲労超回復〉とか?状態異常系なら〈猛毒〉〈麻痺〉〈石化〉あたりだね。この世界に魔法があるなら〈魔法妨害〉とかもありかな?〈痛覚無効〉も欲しいし…〈未来予測〉〈思考加速〉〈高速演算〉とか〈回避〉〈隠密〉系統も…』
お、おう。色々出てくるな…。
私も頑張れば出るんだろうけど、面倒くさいからやらない。
とりあえずずらずらと出て来た物を書き留め、それらをまとめてカードに付与する。それと、無いとは思うけど…カードが無くなったときのために同じ内容を体に付与、〈封印〉で蓋をする。
この〈封印〉を解除すれば、いつでも戦闘形態に入ることが出来るのだ。
『おー、すごいな。格好いい!天才か』
いや、天災だ。
『まあ、発動させたら歩く災害だけど』
ところで、相棒よ。大発見だ。
『あぁ、そうだな』
痛覚無効は…事象付与の痛みにも効くことが判明した。
『チートだな。でも、あまりやり過ぎると体が崩壊するとかありえるぞ』
何それ怖い。
『だかしかし戦闘形態も十分怖い』
発動させる機会が無いことを願うよ。
そうだ、私的には〈鑑定〉と〈探知〉をやってみたいんだが。
『よーし、やってみよう!』
〈高速演算〉〈情報整理〉…よし、〈探知〉ON!
『うわぁ…凄いな』
うん、ごめんよく分からない。
君のは完全版だけど、私のは地形把握と生物把握しかしてないからね。
『うりゃりゃりゃりゃ!〈鑑定〉〈鑑定〉〈鑑定〉!』
何してんの!?
『はー、知的好奇心を満たせて幸せ!』
…いや、ほんとに何してんの?
『はあ~♡』
いや、うん…あの………反応に困るんですが。
「日和、さっきからぼ~っとしてるけど…大丈夫なの~?」
「大丈夫だ、問題ない」
もう一人がトリップしてるけど問題ない。
『いや、あるだろ!』
もう回復したから問題ない。
「もうちょいスピード上げても良い~?」
「大丈夫!」
あ、そうだこれから恭子と会話するし、一回〈並列意思〉切るよー?
『りょーかい』
………。
うわ、さっきまでの会話が二人分流れ込んできた。
それとともに、私がさっきまでどちらだったのか分からなくなる。
………まぁ、良いか。
「町に着いたら、何する?」
「………何しよっか?」
とりあえず、適当に宿でも取るか。




