第十七章 – 眠れない夜
「アセプハ、アナタガオモッテルヨウナヒトトハチョットチガウワ」
カルミラの言葉がリサの頭にまだはっきりと残っていた。リサはベッドに横たわり、温湿布をお腹に押し当てた。
「誰に向けてだろ?」
リサはチー・ロクの言葉を思い出した。起き上がってベッドの端に座った。
「そもそも何が違うっていうの?」
通知が入った。
リサはサイドテーブルの上の腕時計を手に取った。新しいBランクのミッション。
リサは詳細を開いた。三人チームのミッション、デニスとコイが一緒だ。
「あ、そうだ、コイって本名リコだったっけ……忘れてた」
腕時計が二回点滅した。コイからメッセージが入った。
「リサ姉、一緒に任務入りましたね。ちょっとメインルームで話しませんか?まだそんなに遅くないと思う」
リサは微笑みながら返信した。
「わかった、今行く」
二階の廊下を歩いて階段を下りると、デニスもメインルームに入ろうとしているのが見えた。
「コイに呼ばれたの?」
デニスがリサを見て頷いた。口にパンが詰まっていた。
コイはリサとデニスが入ってくると手を振った。アセプはいつも通り自分のテーブルで葉巻を吸っていた。ベータもコイの向かいに座っていた。
「リサ姉……デニス兄貴、さっきベータじと話してた」
両拳を握って椅子の上で小さく跳ねた。
デニスはリサの方に少し体を寄せて耳元で囁いた。
「コイがもう思春期だってたまに忘れるんだよな、でも性格がまだ子供すぎる」
デニスはそのまま何も言わずにベータの隣に歩いていった。リサは首を傾けたまま取り残された。
リサはコイの方へ歩いて隣に座った。
「それでベータじから何を学んだ?」
リサはすぐにコイの頭を撫で始めた。撫でるとぺたんと垂れるコイの耳が、リサにとっては妙に気になるものだった。
「うん、わかった。任務はブライト感染エリアが活性化しないようにするプレ・プリベンションだよね」リサは手を止めた。コイの目が開いた。口がへの字になった。
「ブライト感染エリア?」
「典型的。読んでないでしょ?」デニスが向こうから言った。「ちょっと遊んだだけでもう仕事のこと忘れたの」
両手を斜めに上げて首を横に振った。
リサはぎこちなく笑い、横を向いて頭をかいた。
「ニヤニヤじゃねえ」
「ケブンジェルク村だっけ、そこって混住してる?ベータ」
アセプが椅子から聞いた。両足をテーブルの上に乗せて、体を傾けて背もたれに寄りかかっていた。
「混住、ボス」
ベータが答えた。アセプが少し顔をしかめてベータが少し笑った。
「そこは絶対活性化」
「だよな?」
アセプが確認した。
デニスとリサは顔を見合わせた。
「どういう意味ですかボス?」
「デニスお前も読め。人に読めって言っといて自分は読まないのか」
アセプの声が少し上がった。
デニスは頭をかいた。
「へへ……すまん、村のこと調べてなかった」
デニスがにっと笑って歯が見えた。リサがデニスを見た。視線に気づいたデニスはすぐに顔を逸らした。
アセプは同じテンポで机を叩いた。
「覚えとけよ。情報ってのはエージェントの心臓だ。だから行動する前に必ず情報を集めろ」
ベータが言いながらデニスの頭に手を伸ばして、四本の指で額を塞いだ。
デニスはすぐにベータの手を払いのけた。
「はいはい、あとで読み直します」
「父様、もし戦うことになったら、あれ使っていい?」
「状況次第だよコイ、まだ完全にコントロールできてない。チームや他の担当員を傷つけないように。本当に追い詰められた時だけ使え、父様からのお願いはそれだけだ」
コイの耳が垂れた。口がへの字になった。アセプは葉巻を深く吸い込んだ。煙が天井に上っていった。
***
蚊取り線香の煙が天井に漂っていた。リサはベッドに沈み込んだまま、まだミッションの詳細を読んでいなかった。
「ボスに休めって言われたけど、珍しくこんな時間なのに全然眠くない」
バネの音がいつもより大きく聞こえた。リサはお腹の湿布を押さえながらメインルームへ戻った。
もう冷えてきた……ビ・ニャイはもう寝たかな?
メインルームの電気がついていた。少し覗くとデニスがドローンのネジを締めているのが見えた。
「まだ起きてるの、リサ?」
デニスはリサを見ずに聞いた。
「な、なんでわかったの?」
リサは座って枕を膝に乗せた。
「足音が一番静かだから」
ビ・ニャイが台所から出てきてデニスの隣にミルクを置いた。
「お嬢も何か作りましょうか?麺でもいいですよ」
リサは手を振った。
「大丈夫ですビ・ニャイ、ちょっといるだけなので」
ビ・ニャイが微笑んだ。
「わかりました、では失礼しますね」
ビ・ニャイは台所へ戻った。
「あ、ちょっとビ・ニャイ」
リサはお腹から湿布を出した。ビ・ニャイが振り返ってリサの方へ戻ってきた。
「すみません、また温めてもらえますか」
ビ・ニャイが笑顔で湿布をリサの手から受け取った。
「かしこまりました」
デニスがいじる音が耳に入ってきた。リサはゆっくり口を開けかけた。
「明日のために新しいドローン準備してる」
「明日は街から遠い村に行くから。荷物運ぶ用にドローン用意しとけば楽だし」
リサの口が開いたが、また閉じた。リサはより深くうつむいて座った。重い息が出た。
「どうした?」
「え、ちがう、ただ……」
リサは手を握りしめた。
「怖い? 引いてもいいぞ、俺とコイの二人でもできるから」
デニスがダイナモを起動させた。かなりうるさい音が出てからドローンに入れて消えた。
「デニスは怖くないの?」
デニスの手が止まった。
「怖いよ、でも任務だから」
リサは背もたれに寄りかかった。
「てっきり任務に対してぐうたらなタイプだと思った」
リサが上を向きながら言った。
「そう言う人多いけど、今回は違う。早く解決しないと被害者が増える」
「そ、そんなに怖いの?」
リサはお腹の湿布が冷えてきたのを押さえた。
「まだ読んでないの?」
リサがぐったりと頷いた。デニスは頭を引いて片眉を上げた。
「はぁ……本当に手取り足取り教えてもらわないとダメなの?」
デニスは座り直した。背骨がバキバキと鳴った。
「い、いたたた」
デニスの体が震えた、ただ座り直しただけなのに。
「要するに、その村には絶対ドラウンドか死んだ変態種が多い。ボスが言った混住と関係してるんだけど、お前はそれが気になってるだろ」
リサがゆっくり頷いた。
「混住ってのは、その村が俺たちの都市みたいに人種関係なく人間と獣人が混ざって暮らしてるってことだ」
リサは頬をさすった。少し首を傾けた。
「混住じゃなかったら?」
「本気でそれを聞いてんの?」
デニスが鼻を鳴らした。
「混住じゃなかったら一種族だけってこと。それだけ」
リサがぎこちなく笑った。
「つ、続けてデニス」
「ツヅケテデニス」
デニスが口を尖らせて歯を少し見せながら真似した。
「要するに獣人がいるからドラウンドや変態種の排除が楽になる。ブライトの影響を受けないから」
リサは背もたれから起き上がった。体が前に傾いた。
「じゃあそれがコイが任務に入る理由?」
「それもあるし、そうじゃないとこもある。この感染エリアの問題は、死んだブライト感染者の残滓から発生してるんだ。一か所に集まって根みたいになって広がっていく」
リサは口を閉じて手で覆った。デニスは両手をテーブルの上で合わせた。顎を乗せようとして滑って遠すぎた。
「うぐ……その根に触れた人間はランダムな強制輸血を受ける可能性がある、残滓から来るやつ」
「ランダムな強制輸血……」
リサは額をさすった。急に汗が出てきた。
「それだけじゃなくて、根は魔物を引き寄せて守護者にして強化する。一般的な言い方でどう言えばいいかな、魔物をパワーアップさせる感じ?」
「魔物をパワーアップ?」リ
お腹から湿布を取り出してテーブルの上に置いた。
「そう」
「ブライトから作られた武器や防具を魔物が持つようになる」
次の任務、楽しみですか?
コイの「あれ」……気になりますよね。私も楽しみにしています。
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また次話でお会いしましょう~!




