第十五章 命の代償
「チー・ロク様のご注文です。ブラック・ソフトフォレスト一つとストロベリークリームチーズ一つ」
店員が一皿ずつテーブルに置いた。
チー・ロクが指を鳴らした。
「あ……飲み物頼むの忘れた。お兄さんに頼めますか?」
チー・ロクが店員に聞いた。店員はテーブルの隅のシールに手を向けた。
「お飲み物はこちらのQRコードからメニューをご確認いただけます」店員が微笑んだ。「では失礼いたします」
「あ~ありがとうございます」
チー・ロクはスマホを取り出した。ケースはピンクで、キラキラしたビーズの飾りがついていた。テーブルの隅にかざしてから、リサとの間に置いた。
「リサ先輩、何にしますか?」
チー・ロクが画面をスクロールした。リサは身を乗り出して気になるものを探した。メニューの名前はほとんど英語で、リサにも読めた。でもいくつかは見慣れない名前だった。
それより——
「飲み物ってこんなに高いの?」リサが聞いた。「23ルピ、25ルピ、52ルピ!? 飲み物だけ?」
「そんなに高いですか? 私にはこのくらい普通と思います。特にこういうカフェのドリンクだから」
チー・ロクが答えた。リサの手がメニューを見ながら震えた。
「たしか昨日ボスと一緒にご飯食べた時、一食15ルピだったのに、なんでここの飲み物がこんなに高いんだろ」リサが囁いた。「ロク、私のケーキ、レシートにいくら書た?」
「どうしたんですか?」
チー・ロクは首を傾けてリサを見た。
リサは腕時計を起動させた。
「お金を準備しておきたくて」
「もう払いましたよ」
「え、いつ?」
「さっき、レジで」
チー・ロクがカウンターを指差した。
リサとチー・ロクは顔を見合わせた。チー・ロクの腕時計に通知音が鳴った。
「あ、ちょっと待ってください。アセプさんからメッセージ来たんです」
チー・ロクはインターフェースを開いてメッセージを開いた。
「ボスから?」
リサはゆっくりとケーキをすくいながら聞いた。
「チー・ロク、リサは最近までラボにいたから、外の世界とのギャップが20年分くらいある。だから何も知らなくても辛抱してやって。できたら色々教えてあげて、サムズアップ」
チー・ロクが読み上げた。
リサのスプーンが落ちた。両手で顔を隠した。顔が真っ赤になっていた。彼女のボスが今チー・ロクに送ったメッセージを聞いてしまった。
「ど、どういう意味ですか?」
「はあ」リサがため息をついた。「ちょ、ちょっと話しますか」
リサは口を開いて自分のことを少し話し始めた。チー・ロクは頷きながらケーキを食べた。
チー・ロクはスプーンを噛んで顎をさすった。
「20年間、父とその友達とラボにいたってことは……リサ先輩、ずっと友達がいなかったんですか?」
リサはうつむいてからゆっくりと頷いた。チー・ロクが突然前のめりになった。目が輝いていた。
「じ、じゃあ先輩……わ、私がリサ先輩の初めての友達ですか?」
チー・ロクの頬がはっきりと赤く染まった。
「ファミリーの外では、そうだね。ロクが初めての友達だ」
リサは微笑んでスプーンでケーキを一口食べた。目が大きく開いた。
おいしい!
チー・ロクの目も開いた。まだスプーンを口に入れたまま、笑顔が広がった。自分の手を組み合わせて、交互に親指をくるくる回した。
リサの腕時計が二回点滅した。
「ん、なんだろ?」
「あ、それ先輩、プロフィールの更新と任務の報酬が入ったサインですよ」
チー・ロクは立ち上がってリサの隣に移動して座った。
リサはインターフェースを開いた。チー・ロクが鼻歌を歌いながらリサのプロフィールを確認した。
「あ……昨日リサ先輩、生息域管理の任務終わらせたんですね」
「ははっ、そう。めちゃくちゃ退屈な任務だった」
「ははは、でも場合によっては大変なこともありますよ。魔物が多すぎてパニックになることもあるし。先輩はたまたまラッキーだったんじゃないかな」
任務完了の横に金額が表示された。1527ルピ。
「え……小さい魔物を何体か倒しただけなのに、こんなに入ってるの!?」
「確かに多いですね。生息域管理は普通50から150ルピくらいなのに……10倍以上ある。タップしてみてください、説明があるかもしれないです」
リサがタップすると詳細レポートが出てきた。
「あれ、私レポート書いた記憶ないんだけど」
「これは、アセプさんの書き方です……」
「え、ボスの書き方ってわかるの?」
「レポートで『俺』って書くの、今までアセプさんだけだから……」
「誰も怒るとかないの?」
「怒られるしても無駄です……」
「怒る人はいるんだ……」
詳細レポートが開いた。ボスが現場にいた担当員から直接聞いた内容をまとめたものだった。リサが報告書を書ける状態ではなかったため、代わりに書いたと記されていた。
レポートの冒頭にはこう書いてあった。
「俺がこのレポートを書くはめになったのは、エージェントが今入院中だから!」
それを読んでリサは思わず拳を握りしめた。深呼吸して読み続けた。
レポートによると、リサは小型モンスターを三体排除し、マンティスの突然の出現に対処、一名の犠牲者が出た、とのことだった。そしてリサがマンティスを倒したことも書かれていた。リサはチー・ロクを見た。スプーンが口から落ちていた。
「り、リサ先輩、マンティスを倒したんですか?」
リサは首の後ろをさすった。「うん、森から急に出てきて」
「そうですよね、マンティスは森に一番よく現れますから」
チー・ロクの目が集中した。指で顎をさすった。
「詳しいんだね?」
「変態種は憎しみの種類によって分類が変わるんです。マンティスの場合は特殊で、ブライトに感染していて憎しみが最高潮に達した人が……」
チー・ロクが止まった。口を自分で押さえた。リサに合う言い方を探しているようだった。
「が?」
「自ら命を絶った時に変態種になるんです、先輩……」
リサは固まった。体が震えるような感覚がした。お皿を見つめると、ウィスヌの顔が浮かんだ。顔を上げて窓の外を見た。目をゆっくり閉じると、どこかから鐘の音が聞こえた。続いて後ろの椅子に誰かが座る音。リサはゆっくり息を吐いて、チー・ロクを見た。チー・ロクの目が揺れていた。
「先輩、大丈夫ですか?」
「大丈夫……でもなんで森なの?」
「それは……一般的に知られてるんですよ。憎しみが膨らんで……あの、自ら命を絶とうとする人は変態種になるって。だから街から離れようとするんです。でも結局マンティスにはなってしまうんですけど」
「つまり憎しみが強い人は……絶対にダメってこと?」
「ダメです、先輩。絶対に。憎しみだけじゃなくて、感情を溜め込むこと自体がダメなんです。だから各国にドラウンドを管理する専門部隊があるんです。彼らが自ら命を絶ってマンティスになったり、別の変態種に進化したりしないように守るために」
「別の変態種……」リサは腕時計をくるくると回した。「どのくらいの種類がいるの?」
「かなり多いですよ。ブライトについてのファイルがプロフィールに入ってます」
チー・ロクはインターフェースをスクロールして一番下まで行っても、まだファイルが出てきた。
リサはブライトのファイルを開いた。何千ページもあった。リサはすぐに閉じて顔をこすった。
「あとで読む。開いただけで頭が爆発しそうになった」
「ははは……確かに専門用語ばっかりで難しいですよね。でもリサ先輩はアセプさんがそばにいるから、たくさん教えてもらえますよ」
チー・ロクが笑顔でケーキをすくった。
チー・ロクの口からボスの名前がまた出るたびに、リサの目がぴくっとした。
「ロクって、私のボスのことめちゃくちゃ尊敬してるんだね?」
「あ……アセプさんは……その……一緒に任務に出たことはないんですけど、お母さんがよく戦場で会うって言ってて。お母さんから聞いた話だと、アセプさんはすごく強くて、本当にすごく、すごく強くて、頭もいいって」
チー・ロクの目が話しながらきらきらと輝いた。
リサはゆっくり頷いた。ウルスを一撃で倒したアセプのことを思い出した。
「まあ、経験の差かな。でもボスって変態種のこと私に教えるの忘れたんだよね。マンティスと戦った時、ブライトのことしか知らなかった。コアが三つあることも知らなかったし……強制輸血がああも辛いとも知らなかった」
リサは歯を食いしばって手を強く握った。
「輸血か……私はまだ経験したことないです」
「できればしない方がいいよ」リサはチー・ロクの頭をそっとなでた。「私でさえ、憎しみがどんな感じかを知らなかったのに、あんなに苦しかったから」
チー・ロクが微笑んだ。なでるリサの手に自分の手を重ねた。離そうとしてるんじゃなくて、その動きをもっと大きくするように。チー・ロクは目を開けて周りを見渡した。他のお客さんたちが微笑んでリサがなでているのを見ていた。チー・ロクはそっとリサの手を押した。
チー・ロクは拳を口に当てた。顔が真っ赤だった。
「え、えへん……マ、マンティスってそんなに強かったんですか?」
「すごく強かった。あの時戦ったドラウンドよりずっと強い」
リサは首、左肩、お腹、右太ももを順番に触った。
「全部傷跡。ひどくはなかったけど。マンティスが変態種の中で一番弱いなんて、まだ信じられない」
「一番弱い?」
リサとロク、仲良くなれそうでしょう?
初めての友達……ロクの顔が真っ赤になったの、書いてて僕もちょっとほっこりしました。
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また次話でお会いしましょう~!




