第267話 国王陛下の予言
いよいよレッツパーティータイムだ、
今日のコロシアムでも司会してくれた、
ヴァルキュリア騎士団の美声さんことカテリナさんの声が会場に響く。
「お待たせいたしました、それでは只今より、
ミスト=ポークレット新侯爵様と、その奥様侯爵夫人となられます、
ソフィー様、ベルル様、リア様のご入場となります!」
拍手の中、広い広いパーティー用広間に入る僕ら、
いやほんとこれ凄く広い、でもそこに普通に人が埋まっている。
(旧邸の四倍のはずなんだけどな)
なぜかムスタで大暴れした時のシーンとした会場を思い出す、
あの時と大違いでみんな暖かな拍手、うん、我が国、我が城だ。
(とにかく立派な侯爵を演じろとはリア先生談だが、僕はまだ十五歳だ)
席に着くのかと思いきやその前に横一列に並ぶ、
そうそう軽く打ち合わせしたんだった、ここで国王陛下の入場だ。
(あっれ? 席が増えている)
「さて皆様、第一夫人、第二夫人、第三夫人と揃っておりますが、
ここで第四夫人たるエスリン様のご登場です!!」
うっわ、きらびやかに着飾ったエスリンちゃん!
お化粧でそばかすも消されている、眼鏡も新しい良いやつだ、
栗毛の髪もしっかり整えられていて、お嫁さんみたい、いやお嫁さんだけれども!
「は、はずかしぃ……」
声に出ちゃってるエスリンちゃん、いつのまに着替えたんだろう?
こちらは受付時と変わらないメイド姿のままのサリーさんが先導してくれている、
そして僕らの整列に加わった、うん、かわいい。
(抱きしめたいっ!!)
こう見ると他三人の奥さんに引けを……いや比べちゃいけない、
それぞれみんな僕の大事な奥さんだ、順番なんてあって無いようなものだ。
「皆様、ここでたった今、国王陛下と王妃様が到着なされました!」
えっ、控室で待ってたのに?!
あ、待たせた事になるとまずいのか。
めんどく……いやいいや、侯爵だもの。
(おお、上から階段を降りてきた、王妃様も気合いが入ったきらびやかさだ)
そして高い位置で、踊り場で止まって会場を見渡す、
僕もソフィーさんたちも、かしこまって頭を下げる。
「ミスト=ポークレット新侯爵よ、我はここに予言しよう、
そなたが近いうちに、公爵になるであろう事を、そして、やがて我が国を救う存在となる事を!」
拍手喝采、いいのかこのリップサービス!
ここまで強いお墨付きを貰って怖いくらいだ。
(あ、キリィさんモリィさんが豪華な椅子を国王夫妻に、あそこで座るのか)
「それではミスト=ポークレット侯爵様より、皆さまにお言葉があります」
さあスピーチだ、さすがに侯爵となると、もうしくじれないぞ。
「まずは辺境伯就任から半日で侯爵を受け賜わった事を誇りに思います、
南方への進軍の時、国王陛下から力強いお言葉をいただき……」
侯爵になったらスピーチは長い方が良いとソフィーさんリア先生から言われ、
ナスタの内戦を片付けた事をあくまで国王陛下の手柄として持ち上げつつも、
自分も頑張ったんだよとアピールする、もちろん主に頑張ったのは奥様方だが。
(そのあたりはまとめてポークレット家の行動という事で)
たまに陛下を見ると満足そうに頷いている、
まあ、あのぼっちゃんの命を助けたお礼で来たからというか、
それでご機嫌になっている感じだけど、多分この効果は絶大だろう。
「……という事でナスタだけではなくメランなど、友好国を作る橋渡しが出来て光栄ですが、
これも私の、ミスト=ポークレットの、国王陛下に仕える貴族の誇りとしての……」
あとはもう僕が唯一誇れる事と言って良い、
自分のプライドに関して語る、男として、貴族として、また夫になる者として。
(奥さんは過度に持ち上げるな、とは見舞いに行ったアメリア先生談だ)
今は無理に動いちゃいけない時期だからね、
勇者爵邸から無理に出さないようにしている。
「……パーシブの実から始まり、オーク肉、ミミック肉、最近は肥料としてワーム肉を粉末に……」
我が国の特産品アピールも忘れてはならない、
そこから観光についても流れで話す、オークレースとかも。
さすがにサキュバス温泉については触れられないが、隣りに建設中のレジャー施設についても。
「……我がフォレチトンに海はありませんが、あの湖を見ながらバカンスを楽しんでいただこうと……」
ソフィベルランドも面白い事になっている、
湖を見下ろす山頂に高級別荘地を作ってそこに温泉露天風呂も完備する、
一番良い場所を国王陛下に献上し隣りは僕ら用で、他にも何軒か。
「……出資していただいた皆様にも大変、満足していただいております、
これからもフォレチトンをどうぞ、そうぞよろしくお願い致します!」
深々と頭を下げると拍手、拍手だ、
お金の話や開発の話になるとボリネー先輩の目が光ったように見えたのは気のせいかな?
「続きまして第一夫人のソフィー様から」
司会の美声に促されて次は奥様達の番だ、
ソフィーさんは大教会への感謝が中心で、
ベルルちゃんは聖教会への感謝が中心で、
リア先生はお城への感謝が中心の内容を語る、
エスリンちゃんは言葉少なくも来場者への感謝。
(これでスピーチは終わりかな)
「最後にポークレット家へ養子として迎え入れられました、
アンナ=ポークレット様より会場の皆さまに一言、ご挨拶があります!」
えええええいいのか六歳児に!
「みなさんきてくれてありがとーパパだいすきー!」
これにはみんな拍手と笑顔だ、
国王陛下もほっこりしている。
(娘がすでに居るよアピールは大切らしい)
「それでは皆様、しばし御歓談をお楽しみ下さい」
まず最初に国王陛下が我々の元へ、
アンナちゃんの頭をやさしく撫でたのち、
急に真面目な、少し怖い顔になった、いや別に脅かす気は無いだろうが。
「……西北の火種が大きくなりつつある」
「ガラント帝国ですか」
「ああ、十二年前、いやもう十三年前か、あの時と同じ兆候だ」
帝国の侵略と魔物の氾濫が同時に襲ってきたんだっけ、
それで十二英傑の九人が命を落とし、ふたりが重傷、ってアメリア先生と武神ガブリエルさんね、
唯一の無傷がモッコス将軍こと我が恩師、イジュー先生だ、そういや今日は来てないな、学院の新年会かな。
「わかりました、力になれるのでしたら何でもご命令下さい」
「うむ、今回は南からも魔物の氾濫、その兆候がある、行ってきてくれ」
あーメランの国王から聞いたな、あっちもか。
「はい、早急に」
「期待しておるぞ」
こうして国王陛下はこの後、
王妃様と主に我が派閥関係のテーブルを周ってくれていた、
ハイドロン公爵家や武神ガブリエル辺境伯の所はもちろん、
男爵である我が両親、さらにはまだ準男爵のセスのテーブルにまで。
(砂漠の国の所へ周った所で、もう帰るみたいだ)
「国王陛下夫妻が退出なされます、皆様、拍手でお送り下さい!」
こうして僕らのためにめいっぱい参加してくれた国王夫妻が去ると、
それに合せたかのように来客者も半分くらいにまで減っていったのだった。
(なんでー?!)
やはり僕の価値はこんなものか
だめ侯爵だもの。 ミスト




