幼馴染登場!その時、トキは
第2章が始まりました。
レイシアが生まれて1年経ったある日、また俺は熱を出した。レイシアも姉の二人も熱を出したところ見たことが無い、俺だけ虚弱体質なのかあっちの身体が強いのかわからないが前回、熱を出した時とは違い今回は片目に走る激痛とも闘わなければならなかった、意識を失う事も何度もあったが数日後には無事に熱は下がった。
そんな生死の境を彷徨う事件を除けば平穏な日々を送り2年が経った。
5歳になり自分の部屋を与えられ、自由に動けるようになったが外に出ることはなかった、なんでも外に出ても子供が遊べる場所なんてなく運が悪いと攫われて奴隷にされると言う事もありえるので基本的には家の中で遊ぶか親同伴と言う条件で外で遊ぶそうだ、外で遊びたいがまだ小さいレイシアを含めた4人が母さんの見える範囲で遊ぶというのは無理だ。
そんな異世界事情を知ったある日母さんの一言から始まった。
「今日はね、お客さんが来るのよ?」
父さんが仕事に出て母さん達とテーブルで朝ご飯の片付けをしていた、レイシアは朝御飯を食べた後母さんの部屋に行って眠っている。
「お客さん?」
「来るの?」
10歳に近くなってか大人っぽくなってきたアリアちゃんとクレイちゃんが質問をする。
「お客さんって言ってもママの友達でね、トキ君と同い年の子が居るから一緒に遊ばせてみましょってなってね」
母さんの友達が俺と同じ歳の子を連れてきて遊ばせるのか。
「何時来るの?」
俺としてはこの異世界で生きてきて5年目にして初の家族以外の人物だ、興味がないわけがない。
「朝御飯が終わったら来るって言ってたわ」
もう少しで来るらしい。
母さんと話していると扉を叩く音が聞こえた、どうやら例のお客さんが来たようだ。
母さんは扉の魔術を解除して扉を開けた。
「ニア、久しぶりね」
扉を開けた先には茶色の短い髪をした、身長は160後半はある女性で胸は母さんと違いたわわに実っていた。
その女性と同じ色の髪色で俺と同い年くらいの女の子が立っていた。
「久しぶりね、リスティア。上がって頂戴」
女性の名前はリスティアというらしい、母さんの身長と比べると少し高いという所か。
リスティアさんと女の子を連れてテーブルのある部屋に行って席に着いた。
椅子が一つ足りないのでリスティアさんの娘はリスティアさんの膝の上だ。
「紹介するけど、この子はサイリスっていうの、サイリス、挨拶しなさい」
あの女の子はサイリスと言うらしい、サイリスはリスティアさんの胸に顔を埋めながら。
「やー!」
どうやら緊張しているようだ。
「ごめんなさいね、この子は人見知りが激しくって」
リスティアさんが謝罪をする。
「子供はそんなものよ。私の子供を紹介するけど、この子はアリア、その右隣がクレイ、その左隣がトキニア、今私の部屋で眠っていないけど2歳になったレイシアがいるの」
母さんから簡潔に俺たちの説明をする。
「アリアです、もう少しで10歳になります」
「クレイです、もう少しで10歳になります」
アリアちゃんとクレイちゃんが自己紹介をする。
「アリアちゃんとクレイちゃんね。それにしても二人共そっくりね、どっちかが見分けがつかないわ。声までそっくりなんて」
リスティアさんが驚いている。
「トキニアです、5歳になったばかりです。よろしくリスティアさん、サイリアちゃん」
俺も自己紹介をしておく。
「トキニア君ね、ねぇニア…トキニア君…本当に5歳なのよね?5歳には見えないほどしっかりしているわね」
リスティアさんがアリアちゃん達の時とは別に驚いているようだ、そんなに5歳児っぽく無かっただろうか。
「トキ君も5歳よ?確かにしっかりし過ぎているところもあるけど」
母さんかも俺がしっかりし過ぎているように思っていたらしい…多少は自重していたのに…。
俺は席を降りてリスティアさんの膝に座っているサイリスちゃんの近くに行ってみる。
「サイリスちゃん?」
手を伸ばしながら話しかけてみる。
「やー!」
手を弾かれる、そんなに警戒されているのか。
「サイ?トキ君に挨拶しなさい?」
リスティアさんがサイリスちゃんを俺の近くに降ろした、さっきは顔をはっきり見えなかったが、目の色は黒色で顔立ちはリスティアさんにそっくりだった。
俺は握手の意として手を前に差し出した。
「やーや!!」
サイリスちゃんに手を弾かれなおかつ鳩尾に拳を一発もらってしまった。
「うぐぁ!」
「「トキ!?」」
アリアちゃん達の心配する声が聞こえたが俺は呻き声をあげて蹲ってしまった、この子は5歳とは思えない力を持っているようだ。
「サイ!トキ君になにやっているのよ!!」
リスティアさんがサイリスちゃんに怒鳴る。
「だって~」
サイリスちゃんの声が聞こえるが俺は鳩尾に受けたダメージをどうにかしようと頑張っているのでそっちに気を回せない。
「ニア、ごめんんさいね、サイがトキ君を殴ってしまって」
リスティアさんの申し訳なさそうな声が聞こえる。
「大丈夫よ、トキ君は男の子だから、トキ君、大丈夫でしょ?」
母さんの無茶振りが聞こえてくる。
「う、うん。大丈夫だよ」
脂汗をかきながらなんとか立ち上がる。
「サイリスちゃん、すごい力だね」
必死に話かけるがサイリスちゃんに受けは悪いようだ。
「トキ君、あっちでアリアちゃんの部屋に行ってサイリスちゃんと遊んでらっしゃい」
母さんの先ほどとは比べ物にならない無茶振りをしてくる。
アリアちゃん達とアリアちゃん達の部屋に移動するがサイリスちゃんは5歩くらい遅れてやってくる…どんだけ警戒されているんだか。
「サイリスちゃんは私たちと遊びましょうね」
アリアちゃんがサイリスちゃんに話かける、俺ではダメだと言う判断なんだろう。
「…サイ」
サイリスちゃんが小さい声で呟いた。
「サイって言うの?」
クレイちゃんがその呟きを拾って話かける。
サイリスちゃんは小さく頷いた、サイリスちゃんをサイって呼ばなかったから俺は殴られたのかな。
「それじゃあ私のことはアーちゃんでもアー姉ちゃんとか好きに呼んでね、サイちゃん」
アリアちゃんがクレイちゃんに続けて話かける、それにしてもさり気なく姉ちゃんと呼ばせる辺りアリアちゃんも姉ちゃんって呼ばれたい願望でもあったのだろうか。
「私のこともクーちゃんとかクレイお姉ちゃんとか呼んでね、サイちゃん」
クレイちゃんもアリアちゃんに続く。
「よろしくね、サイちゃん」
俺もここぞとばかりにスキンシップを取ろうとしてみるが
「やっ!」
アリアちゃんの後ろに隠れてしまった。
「アーねぇ、クーねぇ…泣いても…いいかな?」
これは泣いていいと思うんだ…殴られたりもしたさ…それでもスキンシップ拒否って
「トキの事は嫌いなんじゃないかな」
「嫌われたね、トキは」
アリアちゃんとクレイちゃんからも非情な宣告を受ける。
「サイちゃんは私たちと遊びましょうね」
アリアちゃんとクレイちゃんがサイちゃんと遊び始める、俺は見ているだけだ。
ベッドに腰を落ち着け遊んでいる様子を眺めていると近くにサイちゃんがやってきた。
「どうしたの?サイちゃん」
サイちゃんに聞いてみるが表情からは何も読み取れない、そうして見てみると手を差し出してきた。
「一緒に遊んでくれるの?」
聞いてみると小さく頷いてくれのでサイちゃんの手を取ってベッドから降りる。
「トキとも遊んでくるんだ、サイちゃんは偉いね~」
アリアちゃんはサイちゃんを笑顔で撫でている。
「それじゃあ、何して遊ぶ?」
サイちゃんに近づいて聞いてみる。
「・・・おままごと」
おままごとは全世界共通の女の子の遊びのようだ。
アリアちゃん、クレイちゃん、サイちゃん、俺の4人でおままごとをして遊んだ…最後までレイシアはやって来なかったな、母さん達の所にでも居るのだろうか。
☆ ☆ ☆
トキ君達をアーちゃん達の部屋に行かせて私たちは母親同士で話をしていた。
「ごめんなさいね、ニア。うちの子がいきなり殴って」
リスティアは再度謝罪してくる。
「いいのよ、リス。トキ君は男の子だから」
リスとは昔から使っているリスティアの愛称だ、私は話題を切り替えるように話しかけた。
「それにしても、サイリスちゃんはどっちに似たのかしらね。物凄い人見知りじゃない」
サイリスちゃんを見た感想を言っていく。
「ホントよね、もう少し大きくなったら活発的になってくれると思うんだけどね。それを言うのならニアの所もそうじゃない、アリアちゃんとクレイちゃんはグレンにそっくりだけどトキ君はあんまりそっくりじゃないよね」
リスの感想を聞いても納得できる、アーちゃんとクーちゃんは確かに性格も見た目も私たちにそっくりだ、だけどトキ君だけは違う、確かに見た目は私たちにそっくりだ、だけど性格はどっちに似たのかが分からない。
「確か、もうひとり女の子が居るのよね?会わせてくれないかしら?」
リスが空気が変わったのを感じたのか話を変えてくる。
「確か、今私の部屋で寝ているわ、来てみる?」
そう言って私は立ち上がった。
「ええ、気になるわね。どっち似かしら」
私たちはレイちゃんが寝ている部屋に行った、そこにはベッドの上で小さく丸まっているレイシアちゃんが居た。
「レイちゃん、起きてお客さんよ」
レイちゃんを揺すぶって覚醒を促す。
「~にゃ」
レイちゃんは謎の声を上げながら体を起こした。
「レイちゃんね~」
リスがレイちゃんの頭を撫でるがレイちゃんはまだ完全に目を覚ましていないようだ。
「おばちゃん誰~?」
レイちゃんの質問に思わず笑ってしまう、リスは撫でた手も顔も固まってしまっている。まだ私と同い年で30歳になってないのに。
「私はリスティアって言って、レイちゃんのお母さんのお友達で同い年なのよ?」
リスは自分の歳がまだ私と同じ事をアピールしてどうにかおばちゃんと言う呼び方から脱したいらしい。
「リスティアおばちゃん~?」
それでもレイちゃんはおばちゃんと言う呼び方を辞めない。
「リスティア、お・ね・え・さ・ん、よ?」
リスは頑張ってお姉さんと呼ばせたいらしくとうとう自分で「お姉さん」と言っているがレイちゃんには届かないようだ。
「リスティアおばあさん?」
頑張っているが呼び方がもっと酷くなっている。
「ニア、この子は私のことが嫌いなのかしら」
とうとう諦めたのか私に泣きついてきた。
「レイちゃん、この人のことは「リスティアお姉さん」って呼んであげてね」
レイちゃんに半笑いのまま伝えるがリスティアの顔は笑っていなかった。
「ニア、酷いわ。同い年の友人に対してこんな仕打ち」
リスティアは嘘泣きを始める。
「リスティア、お姉さん?」
レイちゃんが疑問形ながらリスティアのことを「お姉ちゃん」と呼び始めた。
「そうよ、レイちゃん。リスティアお姉ちゃんですよ」
リスがレイちゃんを抱っこして言っているが、言わせている感が物凄い。
「それじゃあ、テーブルに戻りましょうか」
リスティアに聞いみるがレイちゃんのホッペと自分のホッペをすりあわせてご満悦のようだ。
「リス?聞いてる?」
リスに再度聞いてみるが反応は薄い。レイちゃんの肌にハマってしまっているようだ、自分の娘の肌を堪能すればいいのに。
「リス!」
少し声を大きくして話しかけてみる。
「ひゃわい!」
リスからの可愛いらしい反応が聞こえてくる、レイちゃんもびっくりしたような目でこっちを見ている。
「そろそろテーブルに戻りましょうか?」
3度目になる質問をする。
「そうね、戻りましょうか」
リスはレイちゃんを抱っこしたまま部屋を出た、それについて行って私も部屋を出た。
テーブルに戻って席についてもリスはレイちゃんを離す事はなかった。
「リスはレイちゃんのことが好きね」
レイちゃんのホッペを指で突っついているリスに聞いてみる
「なんか、ニアの子供の頃ってこんな感じじゃないのかなって思うほど似ているし肌も髪の毛もスベスベじゃない、羨ましいわぁ」
リスは私の顔を見ることもなく話をしていく。
「自分の娘の肌と髪の毛を触りなさいよ」
少し呆れながらリスに言う、レイちゃんも少し飽きたような顔をしている。
「あの子は触りすぎると怒るのよ、全くあの短気さはどっちに似たのかしら」
リスは少し寂しそうに言う、多分あなたじゃないかなって言いたい気持ちを引っ込める。リスもそうだがリスの夫も少し短気な所がある、それに似たんじゃないかなと私は思う。
「両方に似たんじゃないの?」
両方に似たという事を聞いてみる。
「私はあの人ほど短気じゃないわ、それにニア。あなたさっき「多分あなたじゃない?」って思ったでしょ?」
リスには気づかれている様だ、これも付き合いが長いからこそなんだろう。
「分かっちゃう?」
少し可愛らしく聞いてみるが、リスからの回答はため息だった。
「分かるもなにもあなた、何年の付き合いだと思っているのよ」
リスと出会ったのは冒険者時代で最初は仲が良いとは言えなかったが事あることに出会うので気が付いたら友人になっていた、それからなので計算すると。
「私達が冒険者時代からだから…10年以上ね」
リスとの付き合いの長さを声に出してみると結構長いものである。
「そんな10年以上の付き合いのあなたを見て、そんなことにも気がつけないってことは無いわ。元冒険者の洞察力を舐めないで頂戴」
リスは少しご立腹のようだ
「ええ、そうね。ごめんなさいね」
素直に謝罪しておく、いくら友人といえど言い過ぎたら謝る、それが長続きする秘訣である。
「それはそうと、あなたの夫はどうなのよ?お店の方は」
リスが話を変えてくる、子供の事と来て次は夫の話のようだ。
「最近は「サテライト」の方は雇っている子を増やしているけど手が足りないって言っているわね」
私達夫婦が経営している食堂「サテライト」の近況を語る。
「そう、儲かっているようね、良かったわ、貴方達がいきなり食堂を経営するって言い始めたときは上手く行くかどうか不安だったのよ」
リスが安心したような声でいう。
「そっちはどうなのよ?夫の鍛冶屋の方は」
リスの方の話を聞いてみるとリスは嬉しそうに話し始めた。
「こっちは順調すぎるわ、冒険者がいつも何人も何人もやって来て、旦那が言っていたわ。「炉も手も足りない」って」
リスの方も上手く行っている様だ。
「そう、良かったわ」
リスは夫の幼馴染である鍛治職人と結婚したので程度の事は聞けるが本人から聞くのとは違うので安心できる。
「あら、レイちゃんが眠っちゃったわね」
そう言われてレイちゃんを見るとリスの胸を枕に眠っていた。
「あらあら、リスの胸が気持ち良かったんでしょう」
リスの胸は私と違い大きい、それが気持ちよく寝てしまったのだろう。
「サイも私の胸が気持ちいのか私の膝で眠るのが好きなのよ」
リスはレイちゃんの頭を優しく撫でながら言っている。
私は胸の話題から避けるべく話を変えることにした。
「それで、ーーーーー」
「へぇ、こっちはーー―ー」
私たちは子供たちの事を忘れて話し合った。
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冒頭の発熱はとあるフラグなので挿入させていただきました、たった数行で時間を飛ばすのは少し抵抗がありましたが必要なのでしました。今後はないと思います。