ep001:その心の声、筒抜けにつき
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Scene001【いつもの朝】
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俺の名前は小泉晴道。
高校1年生。ごく普通の――いや、ごく普通ではないな、流石に。
だって、毎日こんな朝を迎えているから。
まだ起きるには少し早い時間。
目覚ましのアラームが鳴るまでベッドの中でうだうだしていよう、そう思った瞬間だった。
「こら、晴道、起きなさーーい!!」
勢いよく部屋のドアを開けて飛び込んできたのは、
幼馴染の如月千紗だ。
抜群のルックスに、あざと可愛いロリ巨乳。
毎朝、お約束のように俺を揺り起こしにやってくる。
そして、
「さあ、早く起きて!」
バッサーーーッ!
千紗は容赦なく、俺の掛け布団を引っぺがした。
「きゃーー、エッチ! 変態ーーー!!」
(見ちゃった、今朝も見ちゃった……! 何で“毎朝”あんなに元気なのかな。もしかして、早く私と“したい”から……!? きゃーきゃーきゃー!)
俺の健康的な朝立ちを見た千紗が、お約束通りの悲鳴を上げる。
うん、ここまでが我が家の様式美だ。
千紗を部屋から追い出し、トイレを済ませて制服に着替えた俺は、ダイニングへと向かう。
キッチンで当然のように朝食を作っているのは千紗だ。
「晴道、朝ごはんできてるよ」
(今日はね、新しいエプロンを着てきたの。晴道、気づいてくれるかな……? 胸元のリボンがすっごくお気に入りなの!)
俺は澄まし顔で”応えて”あげる
「千紗、今日のエプロン新しいね。胸元のリボン、すっごく可愛いよ」
(きゃーきゃーきゃー!! 晴道が『可愛いよ』って言ってくれた……! ちょっと高くて今月のお小遣いピンチだったけど、無理して買って本当に良かったぁ!)
”無言のまま”顔を真っ赤に染めていく千紗。
それを見届けてから、俺は向かいに座る母さんへと視線を向けた。
「ねえ、母さん。千紗のそのエプロン、どう見ても小泉家専用だろうし、代金を出してあげようよ」
(流石は私の息子、よく分かっているわね。格好よくて気が利いて優しくて、本当に言うことなしの自慢の息子だわ)
「そうね。今度の買い出しの精算時に、上乗せしておくわ」
沙織母さんが、クールなキャリアウーマンの顔で“すかさず”答える。
現在、出版社の編集部長補佐を務めており、近々、定年退職する部長の後を継ぐことが決まっている仕事人間だ。
「えっ、そんな! 自分で着るものですから、自分で出します!」
慌てて首を振る千紗だったが、今度は隣の父さんが動いた。
「そんなことはない、千紗ちゃん。
君は我が小泉家のためにそのエプロンを用意してくれたんだろ。
ならば、それは立派な『小泉家の必要経費』だよ」
(ピンクエプロンの新妻さんスタイル……眼福、まさに眼福。これは我が家の未来のお嫁さんへの投資、いや、お布施だ)
至極真剣な表情で千紗を諭す洋介父さん。
同じ出版社に勤めており、ちょっとマニアックな専門誌の部門で編集部長をやっている。
両親ともに帰りが遅いため、高校に入ってからは千紗がこうして小泉家の食事や買い出しを全面的に引き受けてくれている。
もちろん、材料費などは定期的に精算して返している。
「「「いただきます」」」
俺、父さん、母さんの声が綺麗に重なる。
「召し上がれ」
(今日の卵焼き、実はちょっとだけレシピを変えてみたの。晴道、気づくかな……?)
パックリと卵焼きを口に含み、俺は満面の笑みを浮かべた。
「千紗、今日の卵焼き、いつも以上にすっごく美味しいよ!」
(やった……! やったやった、やったあぁぁーーー!!)
「ふふ、分かる? 隠し味にマヨネーズを入れてみたのよね」
嬉しさを隠しきれない千紗
母さんも父さんも見た目、無言で優雅にコーヒーを啜りながらニコニコしているだけだが
(やっぱり、私は千紗ちゃんが未来のお嫁さんイチ押しね)
(早く我が家のお嫁さんに来てくれないかなぁ)
そう、みんなもうお気付きだろう。
俺には人の心の中の声が聞こえる。
だから俺にとって、好感度を上げること自体は難しくない。
問題は、その先だ。
……ぶっちゃけ、千紗の好感度、上げすぎたかもしれない。
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Scene002【もう一人の幼馴染み】
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俺と千紗は朝食を済ませて、学校へと向かう。
朝食の後片付け、洗い物は母さんか父さんがやってくれる約束だ。
ドアを抜けると千紗はすかさず、俺の腕を自慢の胸の谷間に挟み込む。
うん、これはイイものだ。
「早く行こ」
(ちゃんと牽制しておかないと)
千紗が心の中でそう呟く視線の先、二軒隣の氷室家からちょうど優香が出てくる。
俺のもう一人の幼馴染みだ。
「あら、おはよう」
優香はスレンダークールビューティー、高校1年生なのに美人。
(晴道、やっぱり格好いい。武と付き合ったの、早計だったかな……?)
優香さん、俺にはNTR属性有りませんからね。
もしもこれで巨乳だったら、もろドストライクだったんだけれどもな。
なんて本人に聞かれたら大変だから黙っておく。
俺たちが住むマンションを出ると、近所に住んでいる高村武が待っていた。
「おはよう、優香、今日も綺麗だよ」
(優香、今日も綺麗だよ)
口に出た声と心の中の声が完全一致する。
武とはそういう男だ。
武も幼馴染みで、幼稚園の頃から優香一筋。
高校に入学と同時に優香に告白して、めでたく付き合う事になった。
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俺たちのマンションから高校へは歩いて通える。
そしてその道中には、里塚由美子が待ち構えてる。
「おはよう、晴道、偶然ね」
(今日も自然に言えたかな?)
由美子はそう言うが、
(毎朝、毎朝、偶然な訳ないでしょ!!)←千紗
(由美子、流石に毎朝それは無理があるぞ)←武
(由美子、毎朝偶然晴道に会えるって、日頃の行いが良いのかな?)←優香
優香の心の中の声に『そんな訳ないだろ!』と思わず声に出して突っ込みかけた。
心の中の声が聞こえるのは、こんなデメリットもある。
由美子は俺の腕にしがみ付いている千紗を見て、こう言った。
「千紗、毎朝仲が良いわね」
(本当は私の方が胸が大きいし、晴道は私みたいな長身が好みなのよ。千紗の方が可愛いのは認めるけれども……。私も千紗みたいに可愛かったら、もっと自信が持てるのに)
俺は由美子のそんな正直で、他人の良いところを素直に認められるところが好きだ。
あと、長身巨乳が好みなのは大当たり。
ちなみに由美子は小学5年生の時の転入生だが、俺は由美子の事も幼馴染みだと思ってる。
(由美子負けないからね。でも胸は負けている、身長も負けている、更にスポーツ万能で。えーん、私も背が高くはなりたかった)
千紗の悔しそうな思いが伝わってくる。
ここは下手に声を掛けない方が良いな。
「晴道、土曜の試合どうだったかな?」
(第三セットを決めたスパイク、会心のできだったの、見ててくれたかな?)
そう、由美子はバレーボールの有力選手。
本当は強豪校からも誘いが有ったのに、俺と離れたくなくて同じ高校に入学した。
だから、俺はそれに応えないといけない。
「うん、あの第三セットを決めたスパイク凄かったよ!!」
「へへ、そう、あれくらい普通だよ!」
(ちゃんと見ててくれた、嬉しい嬉しい嬉しい)
口調と違って心の中は喜びで飛び跳ねていて、表情を見れば誰にも浮かれているのがまるわかりだ。
(そうだよね、由美子頑張っているんだから、ちょっと位ご褒美があってもいいよね)
ふと千紗が俺から離れる。
千紗は優しい。
これが俺が大好きな千紗だ。
俺は由美子の手を取る。
「さあ、急がないと遅刻するぞ」
「えっ……!? あ、うん!」
(きゃー、きゃー、晴道、晴道)
本当は時間まだまだ余裕なんだけれども、
俺はそれを口実に、高校に着くまで由美子の手を離なさなかった。
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Scene003【教室で】
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学校に着くと、千紗たちとは分かれる。
千紗と由美子は同じクラスで、優香と武も同じクラス。俺だけが別のクラスだ。
教室に入ると、中里京子が朝の準備をやっていた。
京子はクラスのまとめ役、いわゆる委員長タイプだ。
「おはよう、晴道!」
(今日も格好いい)
「おはよう。あれ? 京子は今日日直じゃないよな」
「今日の日直担当がまだ来ないのよ。だから誰かがやらないと」
(晴道、気付いてくれた。嬉しい!)
「じゃあ、俺も手伝うよ」
(晴道、優しい!! 好きすぎる!!!)
京子の好意が熱すぎる……。
朝の準備をしながらも、京子の頭の中は俺のことでいっぱいだった。
(ああ、晴道くん優しい。千紗ちゃんにだって、由美子ちゃんにだって、彼氏持ちの優香ちゃんにだって優しい。やっぱり好き、好きすぎる)
俺の心の中の声を聞く能力は、その人の想いが強いほどよく聞こえる。
今の京子の心の中の声は、まるで耳元で話しているかのようだった。
ホームルームが終わり、一限目の授業は古典だった。
「はーい、みんな席に着きなさい」
教壇に立つのは一ノ瀬花音先生。
この春から産休に入った古典の先生の代わりの、臨時教員だ。
しかも、世界的に有名な古典文学の研究者でもある。
少し前に発表された論文は世界中で注目され、この春には日本語訳が出版されたばかりだ。
俺も読んでいる。
ただし、原文で。
「あら、晴道くん。先生に見とれているの?」
俺は、花音先生の心の中の声だけは聞くことができない。
その理由は、そのうち語ろう。
(ちくしょ、晴道のやつ、一人だけ一ノ瀬先生に名前で呼んでもらいやがって)
周囲の男どもから、そんな嫉妬の心の中の声が聞こえてくる。
いや、実際に口に出している奴もいたらしい。
「あら。私に名前を覚えてもらいたかったら、私の論文を読んで、考察レポートを出しなさい」
「えーー」
((それくらいなら、やってみるか?))
「当然、原文の英語でね。考察レポートも英語よ」
(((無理!!!)))
クラス中の心の中の声が見事に揃った。
俺は心の中の声を聞けなくとも、花音先生の好感度だって上げたい。
幸い、見た感じではかなり上がっていると思うのだけれども……油断は禁物だ。
この俺のハーレム生活、心の中の声が聞こえてイージーモードなんだけれども。
愛する人を一人に絞るのは無理ゲーだった。
だって、みんなが愛してくれるから。
みんなを平等に愛しているから。
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Scene004【閑話】
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――俺、小泉晴道は、大学を卒業してからしばらくして、最愛の○○さんとようやく結婚した。
本当に、長い道のりだった。
だって、俺はたくさんの人から愛してもらったから。
そして、俺もそんなみんなを同じように愛し返したからだ。
愛されたら、愛し返さなければならない。
それが俺の背負った宿命であり、ある意味では「呪い」と言えるものかもしれない。
いや、だからといって、それが嫌だったり苦痛だったりしたわけじゃ決してないんだ。
俺を愛してくれた女性たちは、みんな眩しいほどに素敵な人ばかりだったし、俺自身、彼女たち全員を心の底から本気で愛してしまったのだから。
今回、晴道が思い出したのは
前作
三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで
【第18話】─ 番外編:芸能界編二期
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となります




