第89話:ネバダガチ勢
「…………」
朝起きると、ベッドにカーマがいた。俺の隣で寝そべって俺を見ている。クーラーの利いた部屋の中。ブランケット一枚だけが俺とカーマの全てだった。
「おはようございます♪ せーんぱい」
「なんでいるの?」
「先輩と一緒したくて」
「離れろ」
「エッチな気分になるから?」
「イエスアイドゥー」
「いいじゃないですか。エッチしましょうよ」
「俺は呪術誓約で、そういうことは出来ないの」
「解呪しましょう」
「却下で」
「じゃあおはようのキスを……」
「その前に顔洗ってくる」
ブランケットで裸体を包んでいるカーマは煽情的だが、俺としても据え膳を拒否している自覚はあり。
「お前は何も言わないのな」
「ボクはネバダの都合のいい女の子だから」
カーマよりさらに大きな胸をしていながら、エッチな下着姿で徘徊しているエリも、それはそれで恐怖だ。
「なぁ。マジで妊娠したらどうするんだ?」
「育てる」
何の躊躇も無くエリは言い切った。
「…………」
反論の提起も面倒になって、俺はタオルを片手にシャワー室へ。そのままシャワーを浴びていると。
「せーんぱい」
脱衣所からカーマの声が聞こえた。そのまま扉を開こうとして、だが俺の施錠が阻む。馬鹿め。これあるを俺が予測できないと思ったか。
「開けてくださいよー」
「断る」
今カーマのEカップおっぱいを見たら、俺は天嶮踏破グランレガンになってしまう。そんなに大きくないけど。
「私もシャワー浴びたいです」
「順番でな」
寝汗を流してさっぱりすると、扉を開けてカーマと交代。すでにカーマは裸で、何も隠すモノが無いとばかりにフルオープンアタック。俺はそれについては語らず。
「じゃ朝飯作るか」
「え。私の裸にはスルー?」
見たことあるし。
「エリは何食いたい?」
「パンより御飯かな?」
とか言って、既に炊飯器は稼働していた。先に米とぎも終わらせていたのだろう。じゃあということで味噌汁と納豆。あとはサラダ。
「先輩。私が食べさせてあげましょうか?」
納豆であーんとか地獄でしかないんだが。
「ていうか、だ」
「はいはい」
「どうも今日のカーマ、若干キモいぞ」
「先輩酷ーい。私は先輩のこと大好きなのに」
あと俺のシャツを着るな。大往生と書かれた感じプリントシャツが巨乳のせいで読みづらくなっている。
「何かしたの?」
「レイプ魔から助けた」
「そりゃ惚れるわー」
エリには納得の事項らしい。俺には不納得の事故だが。飯を食いつつ、カーマの好き好きオーラは一向に減衰の姿勢を見せず。俺の隣で嬉しそうに飯を食っている。俺がメスを食っても問題はないとでも言いたげに。
「ねーぇ。先輩。私に童貞をください」
「俺史上最もお前が好きになったらな」
「ほら。挿入するだけじゃないですか。難しいことじゃありませんよ?」
「そもそも濡れてないだろ」
「あ、じゃあ今から濡らします。見ていてください」
「ご馳走様でしたー」
「水につけててください。皿洗いは私がしまーす」
「じゃあ頼むな」
「先輩は今日何するんですか?」
「何しようか?」
宿題は既にレアスの監禁時に終わらせているし。
「じゃあ私とデートしましょう」
「若干怖いが」
「恋堕の天使とデートなんて。先輩の贅沢モノ♪」
「どっちかってーとお前の方がベタ惚れだろ」
「そうでーす。私、先輩ガチ恋勢でーす」
「男嫌いは治ったのか?」
「先輩だけ特別でーす」
果たして例外があるということに例外はあるのか。
「ほらほら。私のおっぱい」
大往生と書かれたシャツの襟を引っ張って、カーマがおっぱいを見せてくる。ただしブラ付き。
「先輩♡ 目がエッチだぞ」
「そりゃなぁ」
「性的に見ているならこのまま汗かきましょうよ」
「じゃ、行ってきまーす」
「待ってーッッッ!」
ご飯を食べ終わって、そのまま外出しようとする俺を、その足元に飛びついて制止するカーマ。
「私とデートしましょうよぅ!」
「なんかお前、面倒な女になったな」
「先輩をそれだけ愛しているんです」
「まぁ頑張れよ。望み薄だが」
「なんですかー。先輩は弥勒菩薩でも待っているっていうんですか?」
「まぁ人類文明が終わる方が、俺が死ぬよりは早いだろうよ」
「不死でしたもんね」
「不老不死だ」
アンデッドって呼ばれる分類なんだが。
「というわけで私が着替えるまで待っていてください」
「えー」
「そこは紳士的に何卒ですね」
「エリも行くか?」
「そうだね。今日も暑そうだし。爽やかな服装で行こうかな」
あ、ヤな予感。
「お願いです……先輩……私を捨てないでぇ……」
捨てる気はないんだが。涙を流して俺を見る様は冗談を言っているようにも思えず。俺の足元に抱き着いて懇願する様はまるでダメ女。そのまま土下座しろと言われると、そのまましかねない空気だった。




