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第63話:闇のカルマちゃんは


「お帰りなさいませ。ご主人様」


「どもです」


 とあるメイド喫茶。出迎えてくれる闇のカルマちゃん。可憐で可愛く、おっぱいが大きい。愛らしいメイド服を着ても、そのはち切れんばかりの巨乳は隠せない。


「ご主人様。オーダーはお決まりですか?」


 ニコニコ笑顔で尋ねてくる闇のカルマちゃんに、俺は偉く迂遠なオーダー名を頼む。実態はオムライスとコーヒーだが。


「ご命令承りました。メイドが誠心誠意ご奉仕します♪」


 そういうわけでご奉仕されることになった。俺的にはなんだかなぁという感じだが。


「ご主人様? 美味しくなる呪文はお望みですか?」


「ああ、ぜひやってくれ」


 ここで断るという選択肢はない。彼女は今クラシカルでは全然ないロリポップにも等しいメイド服を着ており、その御奉仕を断る意図は俺には無い。


「じゃあメイドが美味しくなる呪文を唱えて差し上げます♪」


 さすがにケチャップアートは熟練の腕が見えるとはいえ、あっさりと俺の名前をハートマーク付きで書いてしまう様はちょっと感動。なるほど。これがメイド喫茶のエース……闇のカルマちゃんのご奉仕。


「それではごゆっくりお過ごしくださいませ。ご・しゅ・じ・ん・さ・ま?」


「ああ、そうさせてもらう」


 コーヒーもミルクを混ぜ混ぜしてもらったし、これで後は時間を潰すだけ。


「ネバダ……」


 その二人掛けの席に、隣にエリが座って。俺にすり寄って来ていた。


「はい。あーん」


「あーん」


 とりあえず、エリとイチャイチャしながら過ごす。黒子迷彩がかかっている彼女の認知は難しく。だがそれでも認識していないわけではないので、誰もが俺に違和感を持つ。メイド喫茶でご奉仕されるはずの喪男が、認知できない女子と仲睦まじくしていれば無意識でイライラしてしまうのだろう。実際にその空気はメイドさんにも伝わっており。


「ご主人様?」


 闇のカルマちゃんこと須藤カーマが俺に負の感情を向けている。


「何をされていらっしゃるので?」


「ナニしてると思う?」


 俺にすり寄って、俺にしな垂れかかって、俺を抱きしめて挑発するエリ。そのことに意識が向かないまま、闇のカルマちゃんはこめかみを引きつかせた。


「ご主人様はふしだらなんですか?」


「別にそんなつもりはないが」


「じゃあなんで私の胸はこんなにザワついているんですか?」


「マンモグラフィーにでもいけばいいんじゃないか?」


「……ボソボソ(浮気してませんよね?)」


 してないぞ? そもそも恋人がいないのでしようがないが。


「うーん……うーん?」


 俺を抱きしめてゼロ距離で密着しているエリを見て、なんとも感覚的に疑惑を覚えている闇のカルマちゃんだが、その胸のざわつきの根拠はないらしく。


「コーヒーのお代わりは如何です?」


「じゃあ貰おうかな」


 俺とエリの分を頼んで、そのままメイド喫茶に居座る。


「ネ・バ・ダぁ。チューしよ?」


「するのはいいが。お前も恐れを知らんな」


「ネバダが望むならここで脱いでもいいよ?」


「俺以外に裸を見せるな」


「独占欲?」


「独占欲だな」


「えへー。嬉しい。ネバダ。ボクの全てはネバダのモノだよ?」


「誰にも触らせるなよ」


「うん。ネバダだけがボクを支配していいの。ネバダの愛さえ供給されればボクは生きていけるから」


「ご・しゅ・じ・ん・さ・ま?」


「何か?」


「コーヒーです。混ぜ混ぜはいりますか?」


「ブラックがいいからまた今度な」


「ネバダ。ボクが口移しで飲ませてあげようか?」


 聞こえているのに聞こえていない。その矛盾がエリを苦しめる。


「コーヒーは自分で飲むからいい」


「せめてキスとか」


「それはまた後でな」


「ネバダの意地悪ー」


「ここでキスすると角が立つんだよ」


「ボク的にはそれもウェルカムなんだけど」


 俺がマズいんだよ。全体的にパステルカラーの店内でインスタントだろうコーヒーを飲んで時間を潰し、それから時間上がりのカーマに合わせて、俺たちも店を出る。


「お出迎えありがとうございます」


「まぁこれくらいはな」


 彼女のバイトの帰りは、俺が迎えるのが日課になっていた。やはり女子が一人で帰るのは危なっかしくてしょうがない。


「ネバダは律儀だよね」


「ストーカー被害もあるらしいし。座視できる事態でもないだろ」


「ネバダ先輩は大丈夫なんですか?」


「何の話だ?」


「その……私と一緒して」


「別にいいんじゃね?」


「私って、でもモテるみたいですし」


「まぁお前より可愛い人間はそういないよな」


「ボクより?」


「可愛さで言えばエリの方が上だがな」


「む」


 認知できない俺とカーマの言葉に、だが不安要素というか微妙に反応するカーマ。


「ていうか俺と帰宅するのはいいのか?」


「良くはないんですけど……」


 問題はそこには無いと。


「本当はあんまり男の人と一緒にいるところを見せるのもマズいというか」


 アイドルかな? メイドさんガチ恋勢も、たしかに彼女が他の男と一緒の場面とか見たくはないよな。


 とはいえ、依然あんなこともあったので俺としては中々な。


「ストーカーはアレから出てないか?」


「今のところは……ですけど」


「じゃ、帰るか」


「そうしましょう。そうしましょう」


「ネバダ。ボクとエッチしよ?」


「だからお前は俺と何がしたいのよ?」


「ネバダとエッチできれば、ボクはちょっとテンション上がる」


「じゃあ頑張れよ」


「むぅ。ネバダはエッチに興味なし?」


「無いとは言わんが」


「ネバダ先輩って……」


「なんだ? 言いたいことがあれば聞くぞ?」


「言いたいっていうか。何でしょう? この胸に騒めく焦燥感は……」


「ネバダぁ♡ 好きだよ♡ チュ♡」


 まぁこういうことで。


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