表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/64

第61話:夏休みのちょっと前


「で、敗退したと」


「そういうことになる」


 これというのも貴様が……云々。バスケ部のエース、真盛先輩が俺に愚痴っていた。何がと言われると地区予選。もちろん俺の知ったこっちゃなかったが、普通に決勝リーグに行けなかったらしい。散々入部をすすめられていたが、途中でさっぱり話が来なくなって不思議にだったが、地区予選で負けたようだ。で、真盛先輩はバスケ部を卒業。ひと夏のアバンチュールも受験勉強で潰れるとのこと。


「へー」


 他に言いようもなかった。そうして期末テストの答案用紙も帰ってきて。俺は学年一位。特進クラスも含めてだ。いきなり転校してきて嵐のように色々とやっている俺を、面白くない目で見る男子も多く。


 愚痴るだけ愚痴って帰っていった真盛先輩にヒラヒラと手を振る。そうして今日の課題を解こうとしていると。


「ネバダ」


 隣の席の相手が俺を呼ぶ。砂漠谷エリと呼ばれる美少女だ。


「何か?」


「放課後デートしない?」


「構いはしないが」


 大体いつもはアキラやカーマとデートするのだが。あんまりエリ単独で、というのは珍しいかもしれない。今日のエリはスクール水着を着ており、胸元のネーム欄に「えり」と書かれている名前。だがそもそもHカップの爆乳がスクール水着に収まるわけも無く。色々と胸元の状況が溢れんばかりにパッツンパッツンだ。さすがにその胸の大きさでスクール水着は無理があると思う。


 そうして授業が始まって、夏休みまであと幾日。今日は部活休みます、と安藤先輩に連絡を入れて。スクール水着姿のエリと街に出る。文芸部室に集まったアキラとカーマも、俺の不在は安藤先輩から聞くだろう。


「ネバダと二人きりっていうのもいいね」


「いつもは俺のデートの邪魔をするもんな」


「愛してるから。ネバダのこと」


「そりゃ光栄で」


「どこ行く? 何する?」


「どこでも構わんと言えば構わんのだが」


「ゲームセンターとか?」


「ゲームか」


「そういえばネバダはゲームしないよね」


「昔から苦手でなぁ」


 あのチマチマした操作がとても性に合わない。


「でも最近のゲームは初心者にも楽しめるように出来てるから。行ってみない?」


「エリが楽しめるなら俺はもちろんいいんだが」


「じゃあ決まり。行こ?」


 ってなわけで、連れられるようにエリとゲームセンターに足を運んだ。


「よ、ほ、ほ」


 最初は二階で格ゲー。思ったよりエリは上手く、コンボを決めてあっさりと相手を下していた。フレーム単位で判断してるのでは、と思わせる反射神経だったが、実際にその通りなのだろう。これで相手の動作が見えれば俺の却下ン視(サイドシーイング)も機能するのだがゲーム画面だけを見ると予測は立たない。とは言ってもだ。ゲームはプレイすることに意味があり。つまり勝つとか負けるとかはどうでもいい、はずなのだが。


「クキーッ!」


 俺はムキになって連コイン。だが負けた。


「畜生。嫌いだ。ゲームなんて」


「ネバダにもできないことってあったんだね」


「むしろできないことだらけだ」


「じゃあ仇は取るよ」


 そんなわけでエリがコイン投入。そうして対戦相手をボッコボコにして決着を見る。


「どういう動体視力をしてるんだ?」


「ネバダがそれを言う?」


「俺のは予測だから」


 反射神経が発達しているわけではない。そうして次はシューティング。こっちはそこそこできた。安全地帯を割り出すのは簡単なのだが、コントローラーの扱いが上手くない。アボーンと操作機体が撃墜される。


「うーがー」


「あっはっは。修行が足りないよ。ネバダ」


 ゲームには修業がいるのか。それは知らなかった。別の格ゲー。アクション。ガンアダムのゲームなど、そこそこ遊んで時間を潰す。


「いい時間だな」


「じゃあ最後にプリクラ撮ろっか」


「お前は写真に写るのか?」


「写るよ? ただボクの画像は誰も認識しないけど」


「難儀な呪いだな」


「まぁ自覚しているし。でもボクとネバダにだけは見えるんだし。ソレでよくない?」


 否定も難しい。


「じゃあラブラブモードで」


「ラブラブなのか?」


「はーい。そこに疑問を持たない」


 そうして被写体の俺とエリが並んで。何をするのかと思えば。


「まずは二人の手でハートを作ってください」


 プリクラから指示が下りる。


「ハートって……ハートか?」


「ほら♡ やるよネバダ」


 親指を下方に伸ばし残り四本の指を弧を描くように曲げる。その俺とエリの手でハートマークを作った。パシャッと写真が撮られる。


「思ったより恥ずいな」


「まだまだ♡ これから」


 次はハグを求められた。


「ハグ……ですか」


「ギュッてして♡ ネバダ……」


 言われるがままに俺はエリを抱きしめて、そのまま写真に写る。こういうことがプリクラで要求されるのか。ミリしらなので全く想定外だった。おそらくラブラブモードが起因しているのだろうが。最後はキスを要求された。そのキスを写真に残せと。俺がちょっと困惑していると、エリの方からおねだりしてきて唇を重ねる。そうしてカメラに見せつけて撮影は終わった。


「わー。素敵だよ」


 写真が出来上がって。嬉しそうにキラキラした瞳で実物を見るエリ。俺とエリがハートマークを作って、ハグして、キスした写真がそのままシールになっていた。


「はい。半分こ」


 置いてあるハサミで半分に切って、片方を俺に渡してくる。受け取らないのも無粋かと、一応俺は受け取ったが、そもそもどうやって利用すればいいんだ。ううむ。


「ゲームセンターも面白いでしょ?」


「というかゲームが面白いな」


 こういう娯楽には興味が薄かったが、損した気分。


「えへへ。じゃあまた来ようね」


「そうだな。また来よう」


 それだけ約束して、俺たちは帰路についた。向かう先は一緒で。つまり俺のマンション。どっちにしろエリは家にいても親からスルーされるので、居心地の良さは構ってくれる俺の家の方が高いらしい。


「せーんぱい。お帰りなさい。どこ行ってたんですか?」


 ゲームセンター。嘘じゃないぞ。一人じゃなかったが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ