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第31話:愛してるゲーム


「失礼しまーす」


 土曜日のこと。俺は学校指定ジャージを着て、文芸部の部室にお邪魔した。一応部員なので出入りは自由。文化系部に休日出勤があるのかは別として。


「……ども」


 で、カタカタとタブレットに無線のキーボードつけて小説書いている部長……安藤レアス先輩がそこにいた。無愛想も極まる挨拶だが、彼女らしくて俺は好き。


「調子どうですか?」


「……予定していた展開が全部壊れた」


 こういうことが現実にあるのか。と言わんばかりにスイカで例えるべき大きさのおっぱいがテーブルに乗せられて何とか自重を回避している。歩くだけでも重いだろうな、あのおっぱい。三キロも四キロもあれば肩こりの原因になるのも頷ける。


「予定の展開が壊れたって……」


 安藤先輩は小説を書いている。今はまだネット活動だが、本人もその道を目指している……とは聞いていたが。


「……誰のせいだと」


 そのセリフを俺に言うってことは俺のせいか?


「ちなみに御理由を聞いても?」


「……伏見くんのバスケプレイがカッコよすぎて……頭から離れない」


 はあ。それだけで小説って描けなくなるもので?


「……だから今……男役を伏見くんで再設定している」


「あんまり嬉しくないんですが」


 モデルにしてくれるのは光栄だが、俺が作中で酷い目に遭ってる様を見たいかと言われるとそれはノーで。俺としても安藤先輩の作品には目を通すつもりだが、俺が出ると話は変わってくる。


「……なんかカッコいいこと言って」


「MI6がボンドに頼む内容だって、もうちょっと穏便ですよ」


 あれはあれでボンドも無茶ブリに応えていて、ある意味関心はするのだが。


「…………」


「何でしょう?」


 ジトーッと俺を見るのはいいが、俺の顔を見ても小説は進まない。


「……じゃあ愛してるゲームしよ」


「それも無茶ブリに近いんですが」


「……拙のこと……嫌い?」


「おっぱいについては一定の評価をしています」


 Pカップはさすがに個性の一つ。揺れる様を見るだけで眼福。


「……揉む?」


「それはホテルで言ってください」


 部室でやったら即退学。俺がこの場をどう乗り切るか考えていると、シャッと安藤先輩はカーテンを閉めた。それから俺を通り過ぎて、扉の鍵を閉める。


「何故?」


「……邪魔が入らないように」


「文系棟に人はいないんじゃあ……」


「……火事は得てして覚悟してない時に起こる」


 火を焚くつもりで?


「……愛してる」


「はあ?」


 何を、と思ったが、つまり愛してるゲームがもう始まっているのだろう。たしか敗北条件は照れるか笑うか。だが真っ直ぐに俺を見て「愛してる」を囁いた安藤先輩はとても真剣で。しょうがないので、俺も囁く。


「愛してる」


「…………」


 果たして安藤先輩は何を思ったか。俺から悟ることは出来なくて。扉に鍵をかけて、そのまま俺の近くまで来る。というか俺の膝の上に乗る。いわゆる駅弁のスタイル。


「……愛してる」


「愛してるぞ」


「……愛しています」


「お前を愛している」


「…………本当?」


「ゲームっつったの先輩ですよね?」


「……だって伏見くんの一言目で拙は負けてるし。……続きはゲームじゃないでしょ?」


 照れていたのか。それは俺の観察眼が足りなかった。


「……ん」


 その俺の膝の上に乗って、そのまま俺の首に腕を回して、大きいというサイズすら超越しているおっぱいを俺の胸板に押し付けて、安藤先輩は俺のキスをしてきて。


「……ふ……しみ……ん……ちゅ」


「……っ……っ」


 この際問題なのは安藤先輩の一方通行ではないことで。彼女のキスを受けて、俺の方もキスを返していた。こういう事に慣れていないとか。童貞乙とか。自分への言い訳は幾らか考えたが。安藤先輩とのキスで全部忘れた。彼女が何を考えているのか。それが創作への情熱だとしても、俺とのキスが圧倒的に圧倒的な事実で。


「……伏見くんってキス上手いの?」


「いや、ほぼトーシロ同然ですが」


 とはいえエリとは結構しているので初めてというわけでもない。


「…………そっか」


 なんか何時もの倍、三点リーダが長かったような。


「する?」


「してもいいですけど。マジで素人ですよ? 俺」


「……むぅ。……拙もそこまで詳しくない」


 子供が出来ることは知っているが。


「……でもキスはハマりそう」


 そしてまたチュッとキスをしてくる安藤先輩。


「……愛してる……伏見……愛してる」


「ゲームの続きですか? ……ちゅ……ん」


「……そう。……ゲーム。……だから伏見くんも言って」


「愛していますよ。安藤先輩」


「……拙もぉ……好きぃ……愛してるぅ」


 二人の間に横たわるPカップのおっぱいを押し潰して、そのまま駅弁のスタイルのままで俺たちはキスをする。そもそも俺はここに何をしに来たんだっけ?


「愛してるぞ。レアス」


「あ♡ ……好きぃ……伏見くぅん♡」


「そこは愛してるだろ?」


「……愛してるぅ……伏見くんのこと……心から愛してる」


「じゃあ俺以外とキスするなよ」


「……うん。……伏見くんにだけ。……伏見くんだけに特別」


「ぁむ。んむ。ぅちゅ」


 俺は貪るように安藤先輩にキスをして、そのまま唾液を舐め取る。くちゅくちゅと唾液の跳ねる音がして、そのままディープキスを続ける。一日くらい、このままキスを続けても飽きないんだろうなという……ダメな方への確信があった。


「……好き……大好き……拙の伏見くん」


 ここにアキラがいたらまず激昂しているだろう。刃物を持っていれば刺しているかもしれない。ただすでにここにはアキラはいなくて。今彼女は刃物を持っているが、それは俺にも安藤先輩にも向けられてはいなくて。


「……伏見くんになら……揉まれてもいいよ?」


「っていうか俺のだろ? お前のじゃないだろ?」


「……ぅん……はい。……このおっぱいは伏見くんの。……伏見くんは好きな時に揉んでいいの。……拙はただ預かってるだけ……だよ。……伏見くんが独占してるおっぱい」


 百点だ。そういうわけで俺としても彼女を所有物として扱うのは苦ではなく。


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