11話 女の敵
この里の事や、王家の事とかは分かった。その上で、私は珍しく怒っている。とは言え、自分自身だってめちゃくちゃやってる上に、人様に大迷惑をかけているんだから、何様だと思われるけれども……この里の人達は内向的過ぎる。結果こうなっているのに、被害者ぶって悲劇とか何とかさぁ。
『自分達全員が戦いたくないからって、その案はないよ。その中で体よく人質みたいに差し出して、そりゃダークエルフ達に恨まれて当然だよ。それで結果こうなっているのに。被害者ぶっているのはどうかと思うよ』
「ミレアさん……」
「ん? 何か珍しく怒ってないか、お前。と言ってもーー」
『エデン君、それは分かっている。分かっているけれど、それでも誰かが言わなきゃいけないなら私が言うよ』
後はでかでかとこう書くだけです。
『卑怯者』
まぁ、当然里の人達からは全員睨まれているけれど、言い返せもしないで押し黙っている。
「我々の歴史も知らぬよそ者だからこそ、の言葉だな」
『ただ、それでリーシアさんが苦しんでいるのは確かだし、大変な事にもなっているのでしょう? これを解決する策なんて、最早1つしかないよ』
「ミレアさん。それって……」
『そう。ヤクシーをコテンパンにする』
ーー ーー ーー
さて、ヤクシーをコテンパンにすると豪語し、早速そのダークエルフを達の住む森へと足を運んだ私達だけれど、リーシアさんはともかくとして、何故かレミちゃんとアイミールーちゃんまで着いてきています。
アイミールーちゃんは、剣を携えているから、エルフの剣士って感じで、レミちゃんは弓を持っているから、エルフでは定番な容姿になっているね。
「も〜危ないから、2人は着いてきたら駄目だってば〜」
「だって、リーシアお姉ちゃんの大切な人が、どれたけ戦える人なのか気になって」
「もし不相応なら、その時は……」
「2人とも、物騒な事言わないでよぉ」
『というか、なんでそんな話になっているのでしょうね』
と、まぁピクニックさながらな会話をしているけれど、一応敵陣に向かっている最中でして、なんならダークエルフ達がリーシアさん達の里に攻撃をしているのであって、道中やたらと会敵しちゃって、戦闘にはなっているけれど。
「ぐぁっ!!」
「ぎゃぁ!?」
「な、な、なんだ……この強さ。というか、和気あいあいと会話しながらとか……うぐ」
襲ってくるダークエルフよりも、私は強いって言っておけば、強襲しようが奇襲しようが、全ての攻撃をいなして返し、短剣で斬りつけて木に吹き飛ばせばそのまま気絶です。
何か拠点みたいな野営地もあったし、ついでにそこも通過ついでに破壊というか、撤去しておいたし、これでしばらくはリーシアさん達の里には攻撃出来ないと思う。
「…………」
「…………」
なんてことをしていたら、レミちゃんとアイミールーちゃんが黙ってしまいました。
「う〜ん。ずっと一緒で麻痺していましたが、ミレアさんって、やっぱりラスボスみたいな」
『言わないでもらえますか? 割と気にしているので』
そんな事を言いながら、やっと目的のダークエルフ達の住む森へとやって来た。
こちらも国はあるのだが、八聖神のヤクシーはシシと同様に森の方に住んでいて、そっちに行かない事には今回の事態は解決出来ない。後の事はもう、お互いの国同士で話し合うしかないレベルだよ。
だから、私がやるのはヤクシーの暴走を止める事。
いったいなんでこんな事をしているのか、それを突き止めて止めさせないとね。
『で、到着したのいいけれど、ナニコレ』
ヤクシーがいるという森は、リーシアさん達がいた森とは違って、殆ど光が入らない程に木々の密集している、鬱蒼とした森だった。
それと、意味不明な生き物が。
「ブシブシブシブシシシ」
「ねーちゃんええけつしてまんなぁ」
「ごほごほごほうび、ご褒美」
青虫の身体に、頭の部分には人の頭が乗っている。しかも半分近く髪の毛が無い、所謂ハゲ頭で、中年男性みたいな顔だから、ハゲ頭のおっさんに身体が青虫という、奇妙奇天烈な生き物が目の前にいたのです。
あ、別の個体は身体がカマキリでした。頭はおっさんの顔をしたハゲ頭だけど。あとは蜘蛛とか、ナナフシみたいな細い体の虫とか。
とにかく、一歩足を踏み入れるのを躊躇うレベルだ。あとなんか、臭いもキツい。何この臭いは……。
『リーシアさん。これ、何?』
「えっと……なんでしょう。恐らく、ヤクシーの力で捕らえられた人間を、花に集まる虫に変えられたみたいですけれど、ちょっとこれだけ偏っているのは、見たことがないです」
「まるでお前の元いた世界にいる、据えたおっさん臭のする、嫌われがちな中年男性みたいだな」
そう、それです。このキツい臭いは、中年男性の加齢臭と汗の臭いが混ざったやつだ。あ、ダメだ……ちょっと吐きそう。
『さ、さすがにこれはキツい……私にはちょっと無理』
「えぇ?! ミレアさんがギブアップするほど!? 意外な所で弱点が……って、これは私も、無理です……うぅ」
「おいおい。こんなの家でしょっちゅう……あぁ、いや。そうでもないか」
エデン君の家はそうなんですね。要するに、エデン君のお父さんが加齢臭キツいということか。それは、世界を作れるレベルの人でも、加齢臭には勝てないという事になるね。
そうこうしている内に、その加齢臭のおっさん虫がこっちに気付き、ワサワサと気持ち悪い歩き方で寄ってくる。
「おほ、おほ。おほほほほ」
「ねーちゃん、一晩どう?」
「こっちこっち。色々と教えるよ」
やっばい。さらに私達に貞操の危機……が。
「あ、あ、た、助けて下さいミレアさん! わ、私の所にばっかりたかってきて!」
「おっほぉ、ばるんばるん」
「ええ乳してんなぁ、ええ乳してんなぁ」
リーシアさんの方にばかりよってる。はぁ……。
『突発思い付き必殺剣、狐裂き!!』
「ぎゃぁぁ!!」
「あぎゃあ!!」
「許して下さい部長〜!! サビ残します〜!!」
何か最後、可哀想な社畜みたいな発言が聞こえたけれど、まぁ良いや。全部峰打ちですから。
『ふっ、切ってはいません。ご安心を』
「おぉ、突発的に何かそれっぽい剣技繰り出して、それでかっこつけてもな〜まぁ、可愛いが」
「ぶっ! かわ……っう。あっぶない」
『可愛くはないです!』
エデン君は何もしなかったくせに。あぁ、いや、よく見たら変な気の流れみたいなもので、おっさんの臭をちょっと散らしてくれていたね。
それと危うく「可愛くない」と発言するところだった。当然言葉にするとひっくり返えるので「可愛い」になっちゃう。つまり、自他共に認める美少女扱いされてしまうことになる。危ない所でした。
「た、助かりました〜ミレアさ〜ん」
そして、難を逃れたリーシアさんが私に抱きついてくる。あ、因みに。さっきから姿が見えないレミちゃんとアイミールーちゃんはと言うと……。
「すいませ〜ん、やっぱり戻っています〜うぇ」
「ごめんなさい、姉さん。その森、以前よりも、数段気持ち悪い。里の防備に、専念します……うぅ」
おっさん虫の登場と同時に、この森から離れていました。仕方ないです。お子様にはこれは厳しい。というか思春期さながらの、大嫌いな父親の臭いというやつだから、嫌悪感は私達以上でしょう。
アイミールーちゃんなんて、鼻つまんですっごい顔になっているよ。
「あはは。2人が諦めてくれて、里に戻ってくれるのは良いけれど、これ私達だけで突発出来ます?」
『あ〜更に集まってきた。ヤバいなぁ、これは』
2人が里へ戻っていくと同時に、おっさん虫達が更に集まってきました。その視線は、主にリーシアさんの胸だけどね。これだからおっさんは……なんて言いたくないけれど、どうしてこういう人達は大きな胸ばかりにいくのでしょう。
女性の魅力って胸だけじゃなくて、私みたいに大き過ぎず、小さ過ぎずが一番良いんだよ。それが分からないような女の敵……は……。
「どうした、ミレア。頭抱えてうずくまって」
『何でもない。自分も女性である事が当たり前になっているのに気付いただけです。そろそろ何とかしないと、自分が男だって事、忘れてしまう!』
自然とそんな考えになっていたのと、リーシアさんの胸ばっかりに視線が集まっているのに、ちょっとばかりカチンときたところが危険信号だったね。はははは。
「ははははははは」
「あ、あれ? ミレアさんが怖い」
まぁ、どっちにしても……。
『女の敵は滅するよ』
そう言って、私は短剣を強く握りしめ、今やって来たおっさん虫達へと向かっていく。高笑いしながらね。




