3話 入りたくないレベルの汚染したスラム街
私達は今、勇者の血筋と言われている人の所へと向かっている。
魔王城の必要性の為にも、脅威となる者がいないといけない。だから、冒険者も含めてだけれど、魔王を倒すという目的を用意しないといけなくなった。
『とは言うものの、ルリアちゃんの弱さからして、あんまり急がせるのもなんだよね』
「瞬殺されちゃ意味ねぇな〜」
この大陸ではない、別の大陸にいるみたいで、ルリアちゃんだけ魔王城に置いて、陸路と海路を使って移動している。今は馬車に揺られていますが、その馬車を守るは屈強な馬車守り。筋骨隆々で髭面強面ときている。レベルで言うと、確実に高レベルだろって思う程のおっさんです。
馬車守りでこれだもん。この世界、戦いが出来る人は全員もれなく強いんですよ。だってーー
「おらぁ! 今日こそは馬車から強奪してやるぞ!!」
「えぇい! また出るか盗賊! させぬぞ!!」
「やれぇ、野郎共〜!!」
「馬車はやらせん!! ぬん!!」
突然茂みから現れた強盗達が、強弓とバカデカい槍を投げつけてくるのに、馬車守りの人はこれまたバカデカい大剣をぶん回して叩き落としてるんだもん。
『おかしいな。これ、一回全クリした後の2周目プレイとかの世界ですか?』
「ミレアさん、何を書いているんですか?」
「何となく何が言いたいかは分かったけれど、こっちの世界の人達には分かんないから」
そうだけれど、そう言いたくもなるんだよ。何なんですか、このハイレベルな戦闘は。
「今日もいつも通りだな〜お客様方、到着はいつも通りとなります〜」
という感じで、長閑に馬車は走って行く。激しい戦闘音を鳴り響かせながら。
◇ ◇ ◇ ◇
『え〜というわけで、私的には魔王城云々よりも、ルリアちゃんのレベルアップの方が先だと思いました』
数日かけ、ようやく辿り着いた街で、私はそもそもの問題点を投げかけた。
いや、実際にあんな連中見てしまった以上はね、割りと簡単かもとかほんのちょっと考えてしまった自分が恥ずかしいですよ。だからこそ、不本意ではあるけれども、先ずはルリアちゃんのレベルアップを急いだ方がいい。
「ミレアさんの言う通りですけれど、勇者の血筋と呼ばれている方々がどうなっていおられるのか、確認をするのもいいんじゃないでしょうか? せっかくここまで来たのですから」
「俺もそう思う。でも、ミレアが感じてる不安は俺も分かる」
「というと?」
「腐っている可能性がある」
「え? ゾンビ? もう死んでるとかですか?!」
『あぁ、いやそうじゃないよ。というか、リーシアさんって何気に語彙力が……』
言葉のまんま捉えちゃうね、リーシアさんは。
とりあえず、エデン君も薄々は感じていたみたいですね。私が感じる不安。この街に着いてより一層強くなったよ。何せここ……。
「うっ、ちょっと……鼻に来る臭いが……本当に、こんな所に勇者の血筋の方が?」
「想像以上だわ〜いやぁ、親父が放ったらかしにする前から、ここの街はこうすると決めて作られたけれど、その時よりも更に酷くなってやがる」
近寄る人すら居ない。馬車も猛スピードでここを駆け抜けようとする程。私達が降りると言った瞬間、全員から「正気か?!」と驚かれる様な場所。
そう、スラム街です。
しかも、とびっきりの腐敗臭やすえた様な臭いまであるし、汚水も至る所から流れている。ドス黒かったり、赤茶色ぼかったり、更には緑色のゲル状の液体まで流れてくる始末。
これは、ちょっと何といいますか……こっちの世界に転生する前の世界でも、このレベルは見たことも聞いたこともないや。
『何なんですか。ここは。誰か、説明を……』
「うぅ〜ん。古い古い文献には、この辺りにとても大きくて立派な国があったみたいですが、更に発展しようとしたらしく、天界人達の技術を奪い取ろうとして、激しい戦い、戦争にまでなったという話は聞いたことがあります」
そこでリーシアさんは、額に手を当てて唸り出した。
「ただ、それ以上の記述がなくてですね。誰もが、その戦いがどうなったのかが、分からないのです。そして気付いた時には、ここはこんな風になっていたようです」
あれ、おかしいな。私も勉強してて、その辺りは習ったけれど、何でリーシアさんは忘れて……あっ。
「お前のスキルのせいだな」
『そのようです』
実はここ、当時まだ魔王が居た時の、討伐された魔物達等の遺体置き場になっていまして、その魔物達の遺体を漁っては、腐り切っていない魔物の素材を剥ぎ、それを売って生活する人達が住んでいるんだ。
ただ、私が魔王の存在を消してしまい、魔物や魔族まで消してしまったものだから、ここにあった魔物の遺体は一瞬で消えたのだろう。
でも不思議な事に、その魔物達の体から出ていた体液やら何やらは、地面等に染み付いていて、この土地を汚染したままになっている。関節的にも魔物が絡んでいるなら、その辺りも消えていておかしくないはずなのに、そのままだ。
ということをリーシアさんにも説明した。
「な、なるほど……それでしたら、尚更この汚染はいったい……?」
「となると、別の原因か?」
『いやぁ、どうなんだろう……』
気にはなるものの。いざ、進んでみようという気にならない。防護服がいりますよ、これは……。
「う〜ん。これは、アレだね……土地の汚染レベル的に、国家クラスの犯罪が隠れていそう」
流石のエデン君も気になったのか、辺りを見渡していて、他に異常がありそうな所は無いかを確認している。
国家クラスの犯罪とか、そういうのあっても解決は出来ますが、それをするにも……。
『ここに入らないと、調べようがないね』
「……ここ、マジで一歩も踏み込みたくないな」
「同感です〜」
『リーシアさん。何か魔法とかで、汚染から身を守れるのある?』
「ありますけど……この汚染物質、魔力汚染も加わっているので、一分とかくらいしか防げないです……」
魔法結界とか障壁作っても、魔力汚染してしまって防ぎきれず、汚染が滲んじゃてきちゃうって感じですか。
それと、こういう時ってだいたい謎の誰かが登場したりするんだけれど……何というか、それすら無いからね。本当に皆、この街を避けているというか、無いものにしているんだ。
本当に、どうすればいいのやら。
「あの、ミレアさんの天恵スキルでどうにかなりません?」
『昔に私がかけたスキルの副作用みたいなものだからなぁ、と言っても原因がそれだけじゃないとなると、何とか出来るかも知れない。でもねーー』
後ろでエデン君がめっちゃ睨んでくるんですよ。
「あ、あはは……目をつけられてますねぇ〜」
『あのさ、エデン君。このままだと、魔王城建設どころじゃなくなるでしょ?』
「今、ここにいる奴じゃないと駄目なのか?」
エデン君にそう言われ、私もリーシアさんもハッとした。それと同時に新たな問題も出てきた。
『エデン君。今から、冒険者達の中に勇者を生み出そうとしても、それは余程の世界的危機を作らないと、皆動かないと思うよ』
ここの世界の人達は、生活の為に必要であれば強く鍛える。大規模な戦争や、屈強な野盗達によるハイレベルな戦闘の為、冒険者や傭兵と言った人達は強く鍛えている。それで生活出来ているし、問題はないんだよ。そもそも脅威が無ければ、誰も勇者足り得る様な行動はしないと思うよ。
「面倒くさいなぁ。それじゃあ、その脅威とやらをーーって、今用意してた。ただ、あいつじゃ……そうなると、やっぱりここにいると言われている勇者の血筋とやらを見つけて、僕達のやろうとしている事に賛同してもらわないとか……」
そういう訳で振り出しに戻るだね。
「……詰んでませんか? ミレアさん」
「うっ、ぐ……」
仕方ないから、他の街で情報収集でもと思い、一旦その場をあとにしようとした瞬間、街の方から汚物の塊が飛び出してきた。
『ナニコレ、大っきいんだけど?!』
「何メートルあるんだ、これ?!」
「す、少なくとも、私達3人とも丸ごと飲み込めるレベルですよ!?」
分かりやすく言うと、私が生まれ変わる前の世界の建物、ビルで言ったら4階建てくらいの高さかな? とにかく大きいというか、巨大というか、しかも意思を持っているのか、グネグネグネグネと動いている。
そしてそれが、何かの形になっていく。なんというか、ドラゴンと言うか……んっと。
「……ブッサイクな竜になったな」
『エデン君、それ言っちゃ……』
いや、もう本当に。顔の形もパーツもぐちゃぐちゃだし、ズレまくっているというか、福笑いでもしたの? ってくらいにバラバラですよ。
そして当然だけど。
「こっち来ました〜!!」
「エデン君の天才〜!!」
「いや、そう褒めれても……って、ミレアお前喋ったな!? 逆転してるぞ!!」
『ごめんなさい。最近ちょっと、ビックリした時に声が出るようになっちゃってますね。一番危ないから、気を付けますね』
「ミレアさん、空中に文字書いていないで、今はとにかく逃げましょう!!」
うん、気づいたら大きな手のひらみたいになって、私達を覆い被さる様に襲って来ている。スタコラサッサと逃げましょう。
というか、エデン君の言葉に傷ついているっていう事は、やっぱりこれには意思がある。
更にどいうこと?! って感じになっちゃいましたね。




