あおらないで!
今日、3回目の更新になります。
「何、あの王子?! 最後、リリーのことを見て脅したわね?! コンラート、心配だから、あの王族ごと潰していいかしら? いい方法を考えるけど?」
と、アイシャが去っていった王子を見ながら言った。
アイシャ、王族ごと潰すって…。
が、アイシャならできるだろうと思ってしまう自分が怖い…。
「アイシャならできるだろうけど、さすがに、それはやめてくれ。こっちで手を打つ」
と、王太子様は困ったように言った。
やはり、みんな、アイシャならできると思うんだね。すごい…。
「リリーちゃん、嫌な思いをさせて申し訳ない。でも、絶対に君に危害を加えさせるようなことはさせない。安心してほしい」
王太子様が真剣な顔で言った。
「はい」
私はそう言って、うなずいた。
「はあー、ぼくもなめられたもんだよね。国が困ってるだろうと、さして、こちらに得もない交渉を受けたのに、あの態度。無駄な同情だったかもしれないな。さあ、あの二人どうしようか」
と、王太子様が腹黒を前面にだした笑みを浮かべた。
アイシャが、ロイさんにむかって、
「ロイ。あの国の王族について、要点を説明して。すぐに動けるように、計画を考えるから」
と、鋭い声で言った。
王太子様同様、黒い笑顔を浮かべている。
ロイさんが、ため息をついた。
「ほんと、あの王子なにやってんの? こんな怖くて、面倒な人たちにケンカふっかけるなんてね。自国が大変な時に状況を考えろよ…」
そして、アイシャのほうを向いて言った。
「グラン国の今の王は、グラーシュ王で38歳。あの二人の一番上の兄だ。3年前に国王が亡くなり即位した。そして、臣下に嫁いだ第一王女と第二王女がいて、その次がさっきの第二王子のルジェ王子27歳だ。そして、年の離れた末っ子の第三王女ルーシェ王女19歳だ」
「他国と交流してこなかったから、王族自体に常識がないの? それとも、あの王子と王女だけが、常識がないのかしら?」
アイシャが、ロイさんに聞いた。
「アイシャ、手厳しいね…。まあ、あの王子と王女が常識がないのは事実だけど、王はわからない。 グラン国は異常気象で主食になる穀物の不作という国難で、初めて他国とかかわりを求めている最中だからね。王は、近隣諸国をまわっていると聞いている。ある意味、うちは遠い国だし、交渉がうまく行けばラッキーくらいの気持ちで、第二王子にまかせたのかもね」
と、ロイさん。
王太子様が、
「ロイ。すぐにグラーシュ王に連絡をとってくれ。私が直接、話をしてみる。交渉を取りやめるかどうかはそれからだ。感情で外交の話をしたら、あの王子と同じだからな」
と、命じる。
「了解しました」
と、ロイさん。
「ラルフ、そんなに射殺すような目で私を見なくても、あの王子の行動は見張っておく。それよりも、せっかくだし、リリーちゃんと踊ってきたらどうだ? 明日から留学するんだろ? しばらく会えなくなるし、向こうでリリーちゃんにいい出会いもあるかもしれないしね。最後の思い出にどうだ?」
そう言って、王太子様がにやりと笑った。
すごい殺気が隣から流れてくる。
「はあー、また、ラルフを怒らすようなことを…。まあ、猛獣にちょっかいかけるみたいなスリルがあって、おもしろいのはわかるけど。俺もやるし?」
と、ロイさん。
ちょっと、ロイさん。なに、更にあおるようなことを言ってるんですか!
ラルフが、二人をすごい目でにらんでるんだけど…。
殺伐とした空気の中、
「まあ、コンラートの言うように、留学先のロジャン国では、リリーに良い出会いがあるかもね…。それで永住したりして。…フフフ。楽しみ!」
と、アイシャ。
「なんだと?! もう一回言ってみろ、アイシャ」
と、底冷えするような声でラルフが言う。
まずい! 相当怒ってる。
仕方ない。私が止めるか…。
私はラルフの手を、がっとつかんで、
「ほら、ラルフ、踊ろう!」
そう言って、無理やり、みんながダンスを踊っているホールのほうへと歩き出す。
正直、私はダンスが下手すぎて、長いこと踊っていない。
でも、こんな怒った状態のラルフを、あの場から連れ出すには、これしか浮かばなかった。
恥ずかしくて、心身を削ることになるのは確実だけど、まあ、一時の恥よね。
がんばれ、私…。
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