噂をすれば
今日、4回目の更新です。
「二人がリリアンヌ嬢を隠せば隠すほど、気になるんだが? 敵意まるだしの二人に、立ち向かいたくなるよ」
と、にこやかに言う、王太子様。
いやいや、王太子様、一体、何を言ってるの…。
なんだか、二人を怒らせて、おもしろがっているみたいよね。
おだやかなお顔に、うっかり騙されそうだけれど、見た目どおりではない腹黒さが垣間見える。
と、考えをめぐらせていたら、王太子様が、私に近づいて、
「二人を怒らせるのはおもしろいけど、それだけじゃないからね」
と、小声で言った。
げっ?! こわっ?! 私の考えが読まれてる?!
ぎょっとする私に、王太子様が楽しそうに微笑んだ。
「コンラート。リリーにそれ以上近寄るなら、本気でつぶす」
ラルフの低い声が聞こえた。
ウルフ化しているからなのか、まるで、うなり声のようなんだけど…。
とりあえず、王太子様、これ以上、ラルフを刺激するのはやめてくださいね?
という、願いもむなしく、
「ほんと、ラルフも余裕がないよね?」
フフッと微笑む、王太子様。
こんなラルフを前にして笑えるメンタルがすごい…。
「そうだ、リリアンヌ嬢。今度、私にもおすすめの本を教えてくれないかな。読書が好きなんだ。
リリアンヌ嬢の本仲間に、私も入れてくれたら嬉しいな」
と、王太子様。
「えっ?! いや、それは、いくらなんでも…」
私が、言いかけたところで、
「はあ?! コンラート、恋愛小説なんて、絶対、読まないでしょ? 好きでもないのに、リリーに近づくためだけに、本を利用しようとするなんて、本への冒涜だわ! こういうニセの本好きに気をつけないとダメだからね。わかった、リリー。 あ、そういえば、まるで同じことをしている人が、そこにもいたわね。ねえ、ラルフ」
アイシャが、冷え冷えとした目で、ラルフをにらむ。
「コンラートと一緒にするな。リリーがすすめる本なら、俺は、なんでも読む」
ラルフが言いきった。
また、ラルフはそんなことを言ってる! だから、それは違うんだって。
これは、だまっていられない!
「だから、ラルフ! 私がすすめるからって、好きでもない本を読まなくていいんだよ? 課題じゃないんだから。 なにか、私の本仲間に入ることが、すごーく得みたいに誤解してるけど、ただ、私の好きな本を貸すだけだからね!」
ここまで一気にしゃべって、王太子様の前であることを思い出して、はっとした。
うん、令嬢らしさを、すっかり、忘れてたわ。
「ええと…、申し訳ありません」
と、一応、謝っておく。
「おもしろいね、リリアンヌ嬢って。私も、本気で、その本仲間に入れてもらいたくなったよ。それと、私も、リリーちゃんって呼んでいいかな?」
そう言うと、王太子様が親し気な笑みを浮かべた。
「いいですが…」
私が言ったとたん、
「ダメだ」
「ダメよ」
と、ラルフとアイシャの声が重なった。
「二人は、反対みたいだけど、本人の許可を得たので、これからはリリーちゃんと呼ばせてもらうね」
と、王太子様は嬉しそうに宣言した。そして、不機嫌きわまりないラルフに顔を向けた。
「そうそう、ラルフ。あの王女。エスコートが、ラルフじゃないから不満でいっぱいみたいでね。私のことを見もしないんだよ。ほんと、失礼だよね。女性には優しい私だけど、さすがに、むっとしたよ。王女は、ラルフと踊りたがってたけど、無理強いはできないことをしっかり伝えてあるから。断れば、無理は言わないと思う。まあ、普通は、こんな念押しされてまで、踊ってほしいとは言わないと思うんだよね。でも、あの王女、あきらめが悪そうだから…。
噂をすれば、ほら、こっちへ歩いてきてる。隣にいるのが、王女の兄の第二王子だ。面倒な人なんだよね…」
そう言って、王太子様は、ため息をついた。
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