王女入場
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「まあ、でも、こんなラルフを見たら、王女もさすがに、あきらめるんじゃない? しかも、リリーに食べさせてたりしてるのなんかを見たら、恋心も消えるわよ」
と、アイシャが言った。
確かにね…。
でも、こんな王室のパーティーで、雛鳥のように、ラルフに食べさせてもらったら、私の大事な何かも、失われるよね?
やはり、それだけは断固拒否しよう!
と、固く心に誓ったところで、王太子様が王女様と一緒に入場してきた。
長くて、真っ赤な髪に、ぱっと目がいく。
意外なことに、リボンが沢山ついた、かわいらしい感じのドレスを着ていた。
もっと、大人っぽい感じのドレスを選びそうなイメージがあったので、ちょっと驚いた。
隣で、おしゃれなアイシャが、
「あのドレスは、ないわねー。似合わなさすぎでしょ」
と、つぶやいている。
が、やっぱり、きれいな人だな。
そう思って、隣にいるラルフを見ると、ラルフが私をじーっと見ていた。
「え、ちょっと、王太子様と王女様、入場してきたよ?」
私が小声で言う。
「知ってる」
「一応、見た方がいいんじゃない?」
「いや、別にいい」
ラルフがすっぱり言った。
あ、そう…。でも、完全に体ごと私のほうを向いて、じっくり見ているのは、おかしくないかい?
っていうか、いたたまれないんだけど!
「…アイシャ、なんか変だよ。ラルフが!」
アイシャに助けを求めた。
「ほんと、おかしいわね。私にしたら、今更って感じ? 明日には、ロジャン国に旅立つのにね。
まあ、せいぜい、あがいてみたら? …フフフ」
嬉しそうに微笑むアイシャ。
またもや、悪役令嬢になってるよ、アイシャ…。
と、ここで、王太子様のご挨拶がはじまった。
「そういえば、王様と王妃様はいらっしゃらないんだね?」
私がアイシャに聞く。
「今回の、突然のグラン国からの一方的な押しかけ交渉に対応したのは、すべて王太子なの。
王様と王妃様は、今、重要な案件に対応されていて、今日も、そのことで、地方に行かれているそうよ。まあ、交渉自体は、この国にとっては、いい方向で終わったらしいけど、付き添いの王女までは手がまわらなくて、ラルフに押し付けて、こんなことになったのよね。
今日、万が一、リリーに迷惑をかけるようなことがあれば、今まで、あたためてきた復讐の方法を試してみるのもいいわね…」
そう言って、アイシャは、美しい笑みをうかべた。
いやいや、それはやめてね?!
復讐ものの物語を読むたび、「私なら、もっとこうするのに」と、アイシャが教えてくれる復讐のアイデアは、心底、震えるレベルだから。
そこで、ラルフが口を開いた。
「リリーには、絶対、近づかせない。もちろん、アイシャの手を借りることもない。安心しろ」
鋭い目で、アイシャを見る。
二人の間に、殺伐とした空気が流れ出した。
アイシャにつっかかるということは、通常モードのラルフに戻ってきたんだね。
「は?! よく言うわ。安心する要素が、まるでないんだけど? ほら、見てごらんなさい。あの王女、リリーをすごいにらんでるわよ」
え、にらんでる?!
思わず、王女様を見ると、確かにこっちを向いている。
確かに、視線が怖い気がする…。
とりあえず、私は、ラルフの手をふりほどこうとすると、すごい勢いで、更に強くにぎられた。
「ちょっと、ラルフ! 離してよ! 王女様が見てるよ?!」
「それがどうした? 王女が見ようが関係ない」
そう言いながら、ラルフが、私の方へとさらに近づく。
腕が触れる寸前くらいまで、ひっついて、横に立つ。
「こら、近い、近い! もっと、離れて!」
私があせって、ラルフを下から、にらみつけると、ラルフがフッと微笑んだ。
その顔を見た瞬間、心臓がドクドクしてきた。
冷たいくらいの美貌に、色気がもれだし、破壊力がすごい…。
はあ、しかし、ラルフは客観的にみると、本当にかっこいいんだよね。
今の微笑なんて、冷酷なヒーローが、溺愛するヒロインだけに見せる微笑みのイメージにぴったりなんだけど…。
本当に、はたで見てるなら、溺愛ヒーローとして、存分に観察して萌えられるが、いざ、自分にむけられると、心臓に悪い…。
ラルフも、こういう特別な顔は、ヒロインに出会えた時にとっとかないと。
過保護なだけの対象に使うもんじゃないよ? もったいないからね。
ほんと、自覚がないのも、困ったもんだわ…。
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