アランさん
不敵な笑みを浮かべるラルフに、顔は微笑んでいるけれど目がわらっていないアランさん。
ふたりの関係がつかみきれない。
「ええと、ふたりはお友達とか……?」
と、ラルフに聞いてみた。
「いや違う。ただの幼馴染だ」
「そう、ただの幼馴染ですよ」
「なんか、ふたりが『ただの』をやけに強調しているから、『ただの』幼馴染じゃない感じがプンプンするんだけど……」
思わず、心の声がでた瞬間、アイシャがあきれたように言った。
「リリー、その通りよ。アランとラルフ、私もだけど、同じ年で幼馴染なの。小さい頃から、このふたりって、つっかかってばっかりなのよね。今もデジャブかと思ったわ。ほんと成長しないというか……」
「つっかかってくるのは、アランのほうだろ」
と、冷たい笑みを浮かべるラルフ。
「まさか。そっちだよね」
と、にこやかなのに、棘のある口調のアランさん。
なるほど、こういう感じか……。
不穏な雰囲気になってきたので、とりあえず、話を変えよう。
「アランさんはふたりの幼馴染ということは、ロジャン国の方ではないんですか?」
アランさんは、ラルフの時とはちがい、邪気のない笑顔を私に向けて答えてくれた。
「はい。僕は子爵家の次男で、ジョルジュ様とアイシャとは遠縁にあたる家なんです。幼少より、2人とは同じ学園に通っていましたが、僕は甘いものが好きで、将来はデザートを作る料理人になりたいと思っていました。学園をやめて、料理人になるための修行がしたいと言ったのですが、両親が大反対で……。そこで、ジョルジュ様が両親を説得してくださり、ロジャン国に呼んでくださったんです。この別邸でデザート担当の料理人として雇ってくださり、修行もできるように、手配してくださって……。ジョルジュ様のおかげで、僕はここにいます!」
と、熱のこもった口調で一気に話したアランさん。
そこで、ジョッシュさんが大きな声で言った。
「そう、アランの言う通り、ジョルジュ様は慈悲深くて、お優しい、素晴らしいかたなんです、リリアンヌ様!
こんな素晴らしいかたは、この世……いえ、それどころか、あの世を探しても、どこにもおられません! ご結婚されたくなりますよね、リリアンヌ様!」
ジョッシュさん……。あの世を探すって……?
「ジョッシュ。やめろ」
ひんやりとした声でジョルジュさんが止めた。
次の瞬間、ものすごい勢いでジョルジュさんに頭をさげたジュッシュさん。
「申し訳ありません、ジョルジュ様!」
そして、私のほうに向きなおると、またまた、ものすごい勢いで頭をさげてから、言った。
「申し訳ありません、リリアンヌ様! 一秒でも早く、リリアンヌ様にジョルジュ様のすばらしさを知っていただき、一秒でも早く結婚を承諾していただき、一秒でも早く奥様としてジョルジュ様のおそばにお招きしたいと、気が急いてしまいました!」
と、すごい目力で私に語りかけてくるジョッシュさん。
すかさず、ラルフが私の前に立った。
「だから、その妄想、やめろ!」
「ジョルジュ様の望まれることなら、妄想であろうが、なんであろうが、実現するのみ! そのためには、私ジョッシュ・ハルクは全力を尽くします! ラルフ様、ご覚悟を!」
ご覚悟って、何……?
ジョッシュさん、色々、変です……。
そう言いたいのを、ぐっと飲み込んだ私。
不穏な空気をまきちらすラルフとジョッシュさん。
が、その時、ジョルジュさんが時計を見て、淡々と言った。
「ジョッシュ、でかける時間だ」
ジョッシュさんは、「はい、ジョルジュ様!」と返事をしたかと思うと、ラルフからさーっと離れた。
そして、私に向かって、「では、リリアンヌ様、ご夕食を楽しみにしております。もちろん、ジョルジュ様が」という言葉を残し、嵐のごとく去っていった。




