あと26日
NTR進捗状況
駿が鈴を狙っているという疑念を正は振り払う。
田中 正 :主人公、駿は親友の彼女に手を出さない、ヨシ。
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラス意外でも人気者、幼馴染とフラグ建築中。漫才が好き。親友の彼女に手は出さない。
今日は駿と共に総合体育館まで来ている。東京U-18漫才大会の本選出場が決まり、今日は開会式に呼ばれているのだ。
開会式は休日にもかかわらず制服姿の学生たちでごった返している。案内のメールには服装が制服のみとなっていたので訝しんでいたが、どうやら会場には学生しか入れたくなかったようだ。てっきり出場者の高校生だけが集まるものと思っていたが観客、というよりもファンの女の子を多く見かける。こんな場所にフリーで人の出入りを許したらおかしな人が入り込むかもしれない。
「なんか、多いね。ファン?なのかな、なんでこんなに女の子がいるんだろう。」
「確か前回の優勝と準優勝のコンビがエキシビジョンで出てくるから、そのファンだろ。いや準優勝コンビのファンか。」
正の疑問に駿が答える。しかし、その答え方にはどこか濁す雰囲気がある。
「へー、準優勝でそんなにファンがいるってことは、それだけ面白いってことか。すごいね。」
「・・・。」
駿は正の言葉を聞いていなかったのか返事が無い。疑問に思って正が駿の顔を見ると何か渋そうな表情で答えをはぐらかしている様子だ。
「まあ、見ればわかる。」
駿がようやく答えた言葉は何か歯に挟まったような、よくわからないものだった。
「それでは、皆さん、こちらの面々がこれから東京U-18漫才大会のトーナメントを勝ち上がっていく高校生になります。拍手で健闘を祈りましょう。」
司会の言葉に観客が詰まった会場からは拍手が沸く。しかし、見渡す人数からしたらどこか大人しいというか、次のために手を抜いている感じがする。壇上の上で他の参加者の陰に隠れていた正は会場の空気を正確には捉えられず困惑していた。
「さて、彼らがいわば挑戦者ならば、これから紹介する二組は王者と言っていいでしょう。この二組はトーナメントのシード権を持っていますので決勝トーナメントまではお預けになります。」
司会の言葉に会場からブーイングが飛ぶ。しかし、どこか予定調和のような、本気で不満を表明しているというわけではなさそうだ。司会がしゃべりだすとすぐにブーイングは止んだ。
「それではここに集まった皆さんは不満でしょう。そこでエキシビジョンとして今日はこの王者二組に漫才を披露してもらいましょう。」
その途端に会場から拍手と歓声が沸く。さっきとは段違いの本気の歓声。どうやら会場に集まった彼らはこのエキシビジョンが目当てだったようだ。しかし、それも仕方ないだろう。この東京U-18漫才大会というのは駿の話では客の人気で勝敗が決まる。つまり前回の優勝と準優勝とは彼らが最も気に入った二組ということだ。
正はそう思って壇上から下がる人波に従って行った。そんな正たちとすれ違うように一組目が壇上に登る。自信に満ちた足取りから見て、間違いなく彼らが準優勝したコンビだろう。以前に優勝コンビの漫才は見ていたので彼らとは違う面子に正はそう判断した。しかし、それにしては正の周りにいる大会参加者たちの顔は尊敬とか憧れからはほど遠い。むしろ嫌悪していることをことさらにアピールしている高校生もいる。
見ればわかる。駿がさっき言った言葉がどういう意味なのか、正は薄々理解し始めた。
「どもー、俺たち、ビギナーズってコンビでやってます。ケンとヒロです。」
「って言うか皆もう知ってるよね。これでも前は準優勝だったから。」
知ってるー。会場から黄色い声援が飛ぶ。駿が言っていたように会場の女の子たちは確かにこの準優勝コンビが目当てのようだ。イケメンというわけではなさそうだが、話慣れた余裕のある態度と、どこか華のある声質が人気の秘密だろうか。
「俺たち、今度は優勝するつもりなんで、応援よろしく。」
「それじゃあ、いつものいってみようか。」
そう言うと壇上の二人は独特のリズムで左右に体を思いっきり揺らす。会場のスピーカーからはどこかで聞いたことのある太鼓のリズムが流れる。
「どんどん。」「ぱふぱふ。」
「「そーーらそーーらそーらっそらっ。」」
「かーちゃんに、嫁っさ紹介しにきったべ。」「そーら。」
「なーんだそれ、そっれはただのマックラッだべ。」「そーら。」
「ちっがうっぞ、かーちゃんよっくみってや。」
「あっれまっあ、そーれは、まっんがっだべ。」
「おーいらは、こいつっと添い遂っげる。」
「めーでてえ、ムラでっおまつりっだ。」
「そーらそーーらそーーーらそーーーーらん。」
会場に集まったビギナーズのファンらしい女の子たちが合わせるように同じ掛け声を叫んでいる。
「えっ、なにこれ?」
正は困惑していた。これが漫才のネタ?いや、確かにリズム芸というものがあるのは知っているが、それにしてもネタとしての面白さとかが全く分からない。
「正、見たとおりだ。ビギナーズは、前回の準優勝コンビは会場を味方につけることを得意にしている。いや味方につけやすいリズム芸を選んだって言うのか。つまり、そういうことだ。」
最後の言葉を駿は濁していたが正には分かる。観客が勝敗を決めるルールならば会場に自分びいきのファンを大量に呼び込めば自ずと勝利が転がり込んでくる。そういった、ルールの穴を突いた、いや紳士協定を破ったのがこのコンビなのだ。だからこそ会場の盛り上がりに反比例して正の周りにいる大会の参加者たちは盛り下がっていく。
会場から一際、大きな拍手が起きた。どうやらビギナーズの漫才が終わったようだ。代わりに以前見たコンビ、スッコケ二人組が壇上に登る。正の周りにいた大会参加者たちが途端に声援を送りだす。会場にあれだけいた女の子たちは役目は終わったとちらほら帰りだしている中で、それに対抗するように野太い声援が会場を満たそうとしている。多分にビギナーズへの反発が含まれているその声援を背に前回優勝者のコンビは堂々とした態度で漫才を始めた。




