あと46日
NTR進捗状況
駿のテストをすり替えたのに光が一枚かんでいた。
田中 正 :主人公、
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中。漫才をやりたい。友達の彼女に手は出さない。
黒田 晄 :汚っさん、女子生徒をいやらしい目で見ることに定評のある男性教員。教育熱心。
黒井 光 :小学生、頭の回るクソガキ。今は協力関係。羽振りがいい。
晄が鈴の部屋で何かをわめいている。
「ぬふふぅ、どうしたんだ。大洪水の字が書けないのか。どれ私が指で教えてあげよう。ぬふふぅ。」
「あの、止めてください。調べれば、書けますから。」
「だめだだめだ、授業中はスマホは禁止だと言っているだろう。これはお仕置きが必要だな。」
「いや、やめて、放して。」
もみ合う音がし始めた。これはもう一刻の猶予もない。正はイヤホンから聞こえる音に焦りを募らせる。光が都合よく忘れて行った盗聴器付きの防犯ブザーが鈴の部屋で起こっている凶行を正に伝える。だが、当の正はまだ鈴の家のリビングで鈴の親に足止めをされていて動けない。
「お願いします。鈴が今、大変なことになってるんです。」
「そうは言ってもね、鈴と君はそういう関係なんだろ。いや節度を持った交際なら口は挟まないが。」
「そうよ、正くん。ほら鈴の成績もあれだし。今は先生と勉強中だからお話はまた今度にしたら。」
鈴の両親はやんわりとではあるが結局は正の意見をまともに聞く様子は無い。徐々に正は苛立ってきた。
「ぬふふぅ、ここをこうすれば、ほれ、大洪水になるぞ、ほれ、ほほれ。」
「だめ、そんな乱暴に、かいちゃ。」
「ほれほれ、どこが乱暴かな、ぐりぐり。」
さらに正の焦燥感を煽る声が聞こえる。ダメだ、これ以上、鈴の親に付き合っていては大変なことになる。いや、もう強引にでも現実を見せた方がいい。
「いいから、ついてきて下さい。」
正は鈴の親の返事は聞かず、そのまま鈴の部屋のある二階へと走り出す。
「鈴!大丈夫か!」
扉を強引に開ける。きっと晄が嫌がる鈴にのしかかっているであろう場面だが、覚悟は決まっている。一刻も早く鈴を開放する。それだけに意識を集中しためらわない。だが、正が見た光景は想像していたものとは違っていた。
「正くん、さすがに乱暴すぎないか。」
「そうよ、勉強中にごめんなさいね。」
「ぬふふぅ、仕方ありません、付き合っている彼女に辛抱たまらず会いに来たのでしょう。ぬふふぅ若いですな。」
晄が余裕の表情でイスに座っている。鈴とは近づきすぎのような気もするが、かといって責められるほど密着しているわけでもない。ではあの怪しい会話は何だったのか。晄の手元にあるノートに目が行く。鈴の書いた書き取りの練習問題に乱暴にボールペンで何か書かれている。
「ぬふふぅ、これが疑問かね。これはボールペンのインクが中々でなくてね、つい乱暴にぐりぐり書いてしまったのだよ。いや鈴さんが大洪水の文字を書けなかったからね、ぬふふぅ。」
してやったりという顔で晄が言う。
やられた。正は悟った。駿を嵌めようとしたのを正に邪魔されて逆恨みしていたのだ。だが、まんまと嵌った正には文句を言う機会は無い。強引に乗り込んだことが鈴の親への引け目になり、さらに晄を排除する口実が無くなってしまったからだ。このまま鈴の家からすごすごと帰るべきか、しかし、そんなことをすれば完全に晄を止めることができなくなる。邪魔するものがもういないとわかればこのまま暴走する可能性すらある。鈴の親が冷たい視線を向け何か言おうとしている中で正は何もできず、しかしタイムリミットは迫っていた。そんな中で外から場違いな声が聞こえる。
「すーずーちゃーん。あーそーぼー。」
鈴の家に来たのは駿だった。
「あっ、こんにちわ。」
駿が鈴の親に挨拶する。一応、面識はあるがそこまで親しくはないはず。だが、さすがは駿、持ち前のコミュ力で鈴の親を納得させて家に上がり込んできた。
「俺は鈴ちゃんと正くんの友達で、今日は遊びに誘いに来たんです。」
「あの、悪いんだけどね。鈴は先生と勉強中だから。」
鈴の親は駿の発言をやんわりと断る。まあ、親としては当然の反応だ。駿はそこは予想済みだったようですらすらと続きが出る。
「でも、鈴ちゃんの成績、良くなってないですよね。」
痛いところを突かれて鈴の親が黙り込む。そう、晄による連日の個人授業にも関わらず鈴の成績はちっともよくなっていない。むしろ下がってすらいる。これは鈴がわざとそうしたのではなく、どちらかと言えばストレスから集中できなかったせいだろう。
「ぬふふぅ、違いますよ。今回は生徒全体の成績が悪かったですから、仕方ありません。それにそこの駿くんは、ぬふふぅ。人のことは言えんだろう。」
晄が意地悪く笑う。駿の今回のテストの点数は一教科が足を引っ張らなければ相当に上がっていた。その一教科の点数が誰のせいで悪くなったのかわかっていて晄は言っている。挑発して晄に不利になることは無いのだから好きなだけ言いたいことを言いだす。
「いや、私に言わせればですな。多少、他の教科の成績が良くなったところで国語の点数がゼロ点というのはいただけませんな。なにせ、テストの問題を読んで文章を理解できなければどんな教科も間違える可能性があるのですから。まあ、その国語がゼロ点だったのがそこの駿くんなんですがね。確か駿くんは正くんのところの塾に通ったんでしたね。いやあ、あんなところに通わせなくて正解ですよ、ぬふふぅ。」
晄が早口で言い立てる。恐らく、全てを計画した時にこれを鈴の親に言い含めることを想像していたのだろう、原稿を読むようにすらすらと言葉が出る。騙されやすい鈴の親はふむふむと頷き納得してしまっている。だが、駿は平然と、さも何でもないかのように一枚の紙を取り出した。
「ああ、それなら大丈夫ですよ。採点ミスがわかって、ほら。」
駿が取り出したのは国語の解答用紙。そこにははっきりとした筆跡で回答欄が埋められ点数は80点と堂々とした高得点だった。
「はっ?なんだこれは、わたしは知らないぞ。」
晄が知らないのは当然だ。これは光が駿の解答用紙を消しゴムで消す前に何かの脅しに使えるように撮っていた写真をもとに採点し直したもの。学年主任がきっちりとその点数が正式なものだと太鼓判を押しているのだからこの成績が正式なものになるが、学年主任に頼んで晄に教えるのは月曜日になってからにしてもらっている。
「あれ確か今、駿はどこの塾に通ってるんだっけ?」
ワザとらしく正が聞く。ついさっき晄が貶したのだからもうこの場にいる全員が知っている。それでも一度言い返してやらないと気が済まなかった。
「それはもちろん、田中学習塾だよ。どうですか、鈴のお父さん、お母さん。こんな成績の上がらない先生の個人授業よりも実績の田中学習塾に入塾されては。」
いや、でも、鈴も以前通っていたけど効果は無かったし。鈴の親がもごもごと断る理由を探す。そこに決意を固めた表情で鈴が向き合う。
「私、今度は真面目にやるから。」
今まではどうだったのか、それは言わせない迫力で鈴が押し切る。流されやすい性格だった鈴が意思を通す姿に鈴の親も徐々にほだされていく。それを見て正は既視感を覚えた。
あっ、これ進研ゼミでみたやつだ。




