あと54日
NTR進捗状況
中間試験が終わる。
田中 正 :主人公、
橘 鈴 :幼馴染、寝取られる。
金谷 駿 :イケメン、クラスでは人気者、幼馴染とフラグ建築中。漫才をやりたい。友達の彼女に手は出さない。
黒田 晄 :汚っさん、女子生徒をいやらしい目で見ることに定評のある男性教員。教育熱心。
黒川 輝 :チャラい、イケメンの取り巻き。反省して正たちに協力する。演技派。駿の漫才の相方。
僕は今、人里離れた山の上に立つ古びた洋館にいる。ここには僕以外にも鈴、駿そして輝がいる。いや、本当はもう一人いる。あれがもしも人間なら一人で間違いない。しかし、異常なほど高い上背とどんな攻撃にもびくともしない耐久力は間違いなく人間ではないだろう。おそらく、ゾンビかエイリアン、今の流行りなら鬼という可能性も捨てがたい。そう、このVR型体験アトラクションが死滅の剣、無限館編という明らかに流行りの映画に便乗した感じのタイトルであることからその可能性が最も高い。
正たちは中間試験が終わった解放感と晄がなんだか知らないが勝手に自爆したことにより問題が解決した安心感から少し遠出して遊びに行くことになった。企画したのは輝だったので輝とはそこまで親しくはないつもりだったのだがこうして一緒にアトラクションに参加している。この施設では一人ずつ個室に入りそこに用意されていたVRをつけ動きを感知するコントローラーで遊ぶようになっている。そのため、一緒にVRゲームに参加している4人は直接には声が届かないのだが、操作するキャラクターが近くにいるときは機械越しにちゃんと声が届く。今の状況は僕がようやく鈴と輝に合流できたところだ。鈴と輝がしばらく二人っきりで動いていたのが気になるが僕にはもっと気になることがあったので下に向かって輝に聞く。
「なんで、スカートの中覗いてるの。」
「いやー、なんつーか、せっかく金払ってるんだし。」
輝のキャラクターは地面に這いつくばり鈴のスカートの中を覗こうと頑張っていた。いや、確かにただのゲームキャラクターだから嫉妬するようなところではないのだが。鈴も恐らく輝に所詮はゲームキャラクターだと言いくるめられたのだろう。
「鈴もいやならちゃんと断った方がいいよ。」
「え、うん。でも何にも見えないって言ってたし。」
確かにそういうゲームではないし、作りこむ理由は無いか。
「でも、あとは駿と合流すれば全員か。」
「うん、そうだね。」
「駿なら一人でクリアしてるっしょ。」
このゲームはとにかく手掛かりがないので、ひたすら部屋を総当たりするしかない。手分けするわけにもいかないので3人そろって廊下に出る。そこで、駿の叫び声が響いた。
「うわ、やめろ。くそ。」
僕たちは顔を見合わせ直ぐに声のする方向に向かう。VRの画面にはちゃんとソナーのようなものが表示され声の場所を教えてくれる。
「ここか。」
僕たちは駿がいると思われる部屋の前に立つと、それぞれが心の準備をして扉を開ける。
そこには駿のキャラクターの惨殺死体があった。
思わず鈴が悲鳴を上げる。輝はグロいのが苦手なのか、部屋の前で固まっている。僕はこれがゲームであることも忘れて駆け寄った。
「駿!大丈夫か!」
見ればもう死んでいることは明らかで大丈夫なはずないのだがついそんな言葉が出てしまった。
「わっり、死んだは、俺。」
だが、意外と平気そうな声で駿が答えた。
「えっ?」
僕は驚いたが、確かに死んだのはキャラクターなので駿が無事なのは当たり前だ。しかし、死んだキャラクターがそのまま口を動かしてしゃべるというのはどういうことだろう。
「いや、なんか、動かせねえんだけど、マイクは使えるみたいでさ。あと、死んでもゲーム自体は続いてるみたいで部屋からは出られないみたいだ。」
駿が言っている部屋というのは、ゲームではなくリアルの方のゲーム部屋のことだろう。外からロックされていてクリアするか全滅するまでは出られないらしい。
「なんかだか、ちょっと気持ち悪いね。」「うわっ、グロっ。」
鈴と輝も血まみれの死体がしゃべる図になっている駿を見て口々に感想を言う。
「じゃあ、俺はここで寝てるから、がんばってなー。」
気楽な調子で駿が言う。ちなみに犯人はアトラクションのポスターにあったデカい怪物らしい。特にひねりとかは無いようだ。
「大丈夫だよ、鈴ちゃん。俺が守ったげるから。」
駿のいた部屋から離れ手がかりを探して移動していると突然、輝がそんなことを言いだした。なんだ、こいつ突然。鈴も輝が何のきっかけでそんなことを言いだしたのか分からないらしく、反応に困っている。
「だからさ、ここから脱出したら、俺と。」
言いかけた輝の首が飛ぶ。突然、巨大な怪物が輝の後ろに立っていた。
「ひっ。」「やばい、逃げろ。」
僕と鈴は一目散に逃げる。
「何あれ、ねえ、何あれ。」「分かんないけど、追いつかれたらすぐ死ぬタイプだ、だから早く。」「やべーよ、まじやべーよ。」
鈴と僕と輝の声が暗い館の廊下を駆け抜ける。
「えっ?」
何か余計な声が混ざっている気がした。見ると鈴がきっと思わず拾ってしまったのだろう、輝の首を抱いて逃げている。その輝の首は普通にしゃべっていた。あと、鈴のキャラクターの胸のポリゴンにめり込んで少し幸せそうですらある。
「気持ち悪いから捨てよう。」「うん、そうだね。」
僕の提案に鈴はあっさり同意して首を後ろに投げ捨てた。
「ひえー。」
後ろで怪物に輝の首が踏みつぶされる。
「ここ、どこだろう。」
「多分、館の東側のはず。ほら、マップのキッチンって書いてあるのがここだよ。」
僕と鈴はなんとか怪物を振りきり、厨房設備がある部屋へと逃げ込んだ。そこで、二人で体育座りをしながらしゃべっている。あの怪物を倒すヒントらしきものは見つからず、たぶんこれはもう詰んでいるので後は飽きるまで逃げ回って死ぬしかない状況だ。そう考えたらなんだか二人っきりでしゃべるこの時間が随分と久しぶりでホラーゲームの最中であることを忘れてしまった。
「ねえ、ダダくん。覚えてる。林間学校の肝試しのこと。」
「う、できれば、思い出したくない。」
鈴が言っているのは僕たちが小学生のころ林間学校の夜にコッソリと子供だけでやった肝試しのことだ。よく覚えている。そこは施設が中々に老朽化していて肝試しにはもってこいだった。さらに見回りの先生から逃げるためにバラバラになってしまい、僕と鈴は今みたいに二人で隠れていたのだ。あの頃の僕は相当にビビりで、そう、正直に言うと半泣きになっていた。あくまでも半分だけだが、消し去りたい記憶だ。
「ほら、あの時、前に見た妖怪映画を思い出して、ダダくん泣いてたでしょ。」
「半分だけだよ。」
「ふふっ、私もね、ホントはあの時、すっごく怖くてちょっと泣いてたの。」
知らなかった。暗くて気が付かなかった、というよりは半泣きの僕は隣にいる鈴が頼もしくてそんな可能性も考えていなかった。
「でも、ダダくんがいたから、あの時、一人だったら私も怖くて泣いてたの。」
そうだ、あの時、僕と鈴はずっと手を握っていた。僕は怖くてぎゅっと力を込めて絶対に離さないと、そんなつもりで握っていた。鈴も負けないくらい握り返していた。今は、ゲームの中だから手を握ることはできないけど、このゲームが終わったら。
「だから、今回も私がダダくんを守るから、私怖くないよ。」
ポリゴンの鈴の手が僕の手に重なる。握るアクションが設定されていない二つの手がただ重ねられ、ついでに怪物の手も重なった。
「「えっ?」」
見ると僕たちと同じ高さに怪物がしゃがみ込んでいる。ちょうど厨房のテクスチャが邪魔で怪物がそういう姿勢になったのだ。怪物が動き僕の首を掴む。
「鈴、逃げろ!」
僕はせめて時間を稼ごうと精いっぱい抵抗する。だが怪物の腕は全く微動だにしない。だが、いい、これで鈴が逃げてくれれば。しかし、鈴も考えることは同じだったらしい。
「ダダくんから、手を、放せ!」
鈴が叫んだ。厨房に転がっていた包丁を手に怪物に立ち向かう。無茶だ、そんな調理器具じゃ。
「ぎゃいん。」
だが、怪物は刺されると普通に悲鳴を上げて逃げ出した。もしかしたらその包丁がこのゲームのキーアイテムだったのかもしれない。
刺された怪物はあらかじめ決められているのか厨房の外へと真っすぐ逃げようとする。
「あっ嵌った。」
しかし、中腰姿勢だったためか角で嵌り動けなくなる。夢中になっている鈴はそのままの勢いで、怪物を背後から刺す。
「ぎゃいん、ぎゃいうん、きゅう、きゅいん、・・・。」
しばらく怪物の悲鳴だけが鳴り響いた。本来なら様々なギミックを使って怪物のHPを削り取りクリアするゲームのはずだ。しかし、嵌って動けなくなった怪物の体力は鈴の包丁によって容赦なく0(ゼロ)になる。
パンパカパーン、コングラッチュレーション。
どこか遠い場所で、恐らく本来のゴールポイントでゲームクリアのアナウンスが流れている。確かゲームプレイの様子はエントランスで流れているはずだ。きっと今頃、怪物を包丁一本で斬殺する女子高生アバターの映像がネットの海に放流されていることだろう。




