拾われた物あれば、捨てたモノあり
前回のあらすじ(簡略版)
ようやく火属性攻撃魔術【ファレム】を会得したユット
試し打ちをするため討伐クエストを受注したのだが、運悪く
対象モンスターの縞猪の大物と出くわしてしまう
【ファレム】で対抗しようとするのだが、思いのほかしょぼく
2人で町へ必死の思いで逃げ帰ったのだが逃げる道中
身軽にするため装備を脱いでいたユット(半裸)を
抱えていたためレーネが門番に捕まってしまったのだった・・・。
ステータス画面『ユーネスト』
総合魔術レベル15
チャームレベル20
ファレムレベル1
筋力レベル5
俊敏性レベル5
その他1
2日間ギルバーのお手伝いをしてお小遣いを稼いでいる間、レーネを拘置所的なところに預けていたのでそろそろ反省した頃合いかなと思った僕は、とりあえず駐在している憲兵さんに事情を説明し、保釈してもらった。
「少しは反省した?」
「はい、しました。刑務所のご飯は美味しくなかったです」
最初の一言の時点で本当に反省しているのか怪しい、正直言って、詰め込んでおけば、食費も宿泊費も浮くから、もう少し居てもらった方が助かるんだけど。
「ん? そういえばユットはまたボロ雑巾みたいな服装に戻りましたね」
「仕方ないでしょ、逃げるときに防具は重いからって脱ぎ捨ててきたんだから、替えの服はこれしかないし、お金もないし」
元々来ていたボロボロの薄い服装に戻っていた僕の姿を見て首を傾げるレーネに僕は少しムスッとしながら答える。
ちなみに残金は2023ジェニー。
「お金がないと言っても少しあれば、し○むらとか、ゆに○ろで買えばいいじゃないですか」
「流石にこの異世界までは出店してないよ」
たしかに安いお店に行けば衣服は買えるけど、この残金は言わば全財産なわけで服なんかに使う余裕はさすがにないし、マスターには『ユットちゃんにならいくらでもお金貸してあげるわよぉ』って言われているけど、色んな意味で怖いからね。
「はぁ、また防具を買い揃えるところからかぁ、さすがに嫌になっちゃうよ」
「それはさすがに面倒ですね、いっそのこと、防具を拾いに行けばいいのでは?」
「どういうこと?」
「脱ぎ捨てた場所は大まかにはわかりますし、運が良ければ誰にも拾われずに……」
そんな話をしている僕たちの前を横切った男が手に持っていたのは僕が着ていたと思われる防具だった。
「……ねぇ、レーネ、今のって僕のじゃない?」
「さすがにタイミング良すぎでは? たまたま、クエストに出たら町の近くで見習い魔術師のローブと三角ハットを見つけたのかもしれませんよ」
「ホントにそう思う? 僕が着るような丈の防具がたまたま町の近くで落ちてることなんてあるの?」
「……ないですね」
僕と目を見合わせたレーネは少し頷くと、僕と共に男を追って声を掛ける。
「ちょっといいですか」
「ん? なんだ?」
「その防具なのですけど、どこかで拾われましたか?」
「ああ、よくわかったな、町の近くの小山でな、それがどうかしたか?」
「実は数日前にこの子がモンスターに襲われた際、逃げるために捨てた物なのです。よろしければ返して頂けると助かるのですが」
「そうか、それは災難だったな。返してやりたいのは山々だが、この世界の掟は己の身は己で守るだ。どんな理由があれ、物を捨てた時点でそれは他人の物だと思わなきゃならねえ、悪いがこれはすでに俺の物でこれを防具屋に売って金にする。欲しければまた防具屋で買い直すこった」
「私ほどの美人に頼まれながらもこんな子供の防具1つ返せないとはなんと小さい男でしょう、しかし、この男の言うことも正しいのは事実、困りましたね」
「いや、レーネ声に出てるよ、声に出ちゃいけないところが声に出てるよ」
考えごとをしているような様子のレーネは独り言のようにそんなことを呟くと、当然そんなことを言われたその男は機嫌を損ねてしまう。
「と、とにかくだ、どう思われようと、こっちも余裕がないんだ。俺はもう行くぞ」
「――もし、その防具よりも価値のある物を私が渡せると言ったら?」
「――詳しく聞かせてもらおう」
急なシリアス突入のような、海外ドラマに出て来るような、エージェント同士のような声色で会話した男は足を止め振り返ってくれる。
「10分待ってちょうだい、そうすれば私がその防具以上の価値のある物を持ってくるわ、それをそちらが気に入れば交換してほしい、どう?」
「いいだろう、10分だけ待ってやる。気に入らなければこいつは防具屋に売る、いいな?」
「ええ、勿論、ユット行きましょう」
何故海外ドラマっぽい受け答えと声色でいちいち身振り手振りが大きいのか、そんなことを一瞬考えたけど、どうせ特に意味はないんだろうなぁって自己解決していると、意味ありげな雰囲気を互いに出し合いながら男とレーネはそんな約束を交わしていた。
レーネには何か当てがあるようで、迷わずに進んで行く後ろに僕は付いて行っている。
「大丈夫なの、あんなこと言って? あの防具3万くらいしたから売ったら少なくても5千ジェニーくらいするよ、そんな価値のある物なんて僕たち持ってないし、お金もないよ」
「大丈夫です、私に作戦があります」
そうして10分後、約束通り僕たちはあの男のところへ戻ってきた。
「戻って来たな、それじゃあ約束通り見せてもらおうか」
「勿論いいけど、ここは少し人通りが多すぎるわ、貴重なものだから人気の少ないところで渡したいのだけど」
「ああ、いいだろう」
どうでもいいけど、2人とも外国人俳優キャラが仕上がって来てるんだけど、と言うか、ここの町の人たちノリが良すぎじゃない?
そんなこんなで男を人通りの少ない路地に連れてきた。
「ここならいいだろう、早く見せてもらおう」
「そう、焦らないで、今錬成するわ」
そう言ってレーネが両手を勢いよく合わせると、両手の人差指にあやとりのように引っ掛ける形で女性用のパンツが現れる。当然だけど錬成したわけじゃない。
「なっ、それは」
「何かを得るためにはそれ相応の代償を払わなくてはならない、私たちはお金がない以上身を削るしか、――ないでしょ?」
ワザとらしくタメを付けながら大袈裟に肩をすくめ、少し恥じらうような素振りでそんなことを言うレーネ。
「そ、それじゃあ、これはまさか――」
「触ってみれば」
「あ、あったかい、それじゃあこれは――」
男の言葉にレーネは意味深な様子で頷く。
「気に入って……もらえるかしら?」
男は嬉しそうな顔で何度も頷きながら『勿論だ』そう言い残し防具を置いて行ってくれた。
一連の茶番を冷めた目で見ていた僕は……えっ? なんで冷めた目で見ていたかって? 勿論、雑な海外ドラマパロディ見せられた(取引の内容は似ても似つかないほど酷いけど)ってのもあるけど、他にも理由はあるんだよね。
10分前のこと、僕は女性用の下着を売っているお店に連れていかれる。この時点で分かった人は凄いね、ちなみに僕はこの時点では全く分からなかったよ。そうして安い女性用の下着(423ジェニー)を買ったレーネはそれを自分で履く――のではなく、僕に履かせたんだよね、いや、言ったよ『僕が履くのかよ!』って、でも、レーネはそれに対して『私のはそんな安くな――いえいえ、恥ずかしいので』って、とってつけたかのようにヒロイン感を失わないように恥じらう姿を一応見せつつも絶対に拒否すると言っているかのような無言の圧を出されたので渋々僕が履き、それで男に会う直前に僕からそのパンツを奪い、手の中に仕込みまるで自分のパンツのように見せかけたというわけ。
「よかったですね、防具を取り戻せて、ん? ユットどうしましたか? そんな冷めた目をして?」
「いや、あれ、絶対にレーネのパンツだと思って持って行ったよね、詐欺じゃない?」
「私は1度も『私の脱ぎたてパンツ』だと言ってはいませんよ。普通にあの男はそう言う趣味、(ショタコン)でユットの脱ぎたてパンツに興奮していたのだと思いますよ」
「それはそれで怖いよ!」
「ユットの脱ぎたてのパンツを持って公衆トイレに入って行ったみたいですね、何に使うのか見当もつきませんけど、いいじゃないですか、またコツコツ3万貯めなくてよくなったのですから、さすがにまた大して盛り上がらない同じような作業回を見せるのは申し訳ないですからね」
レーネは拘置所でいったい何を反省したんだろうか、そんなことを思いつつも、あの男があれを何に使うのか考えないようにしながら、僕は取り戻した防具を着ると同時に何か大事な物を失ったような気がしたが気のせいだろう、だって、そんな物はとっくに捨ててしまっているのだから。
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