妖精さん完成
こうして僕達はニンジンを幾つか拾い、一番初めに僕が来た場所に立っている建物の中に入っていく。
木製らしい、木の香りのする廊下を歩いていき、案内されたのは僕のよう知っているようなシステムキッチンだった。
しかも鍋といった道具から、電気製品らしい水色のオーブンまでがそろっている。
何かを調理するためのものはすべてここにあるようだった。
さらに、そのキッチンのすぐそばのテーブルには、先ほど聞いた材料が瓶などに入っておかれている。
これらが事前に用意されていたのは良かったように思うけれど、
「この小麦粉の量だと、一回ケーキを作ったらなくなってしまいそうだ」
「では、次に何かを作るときには一緒にとりに行きましょう」
そう水色の髪のレインは言う。
だがあのニンジンの事を思い出すと、この小麦粉は果たしてどのように作られたものか。
けれど僕たちの世界のものとおそらくは同じように使えるようなものだろうと考えた。
それにこの世界の変わったものはやはり見てみたい気持ちが僕にもあって、
「うん、今度は何を作るのか決めてから材料を取りに行きたいな」
と、僕は本心で答えた。
すると今度ご案内しますね、とレインが言う。
楽しみに思いながら僕は、早速ニンジンケーキを作ることにした。
まずニンジンをボウルにすりおろして、そこに卵、砂糖、油を入れる。
また、シナモンとクローブは、形が残ったままのものが出てきたのでそれを潰す。
普段は100円ショップで手に入る台所用の野菜を入れるビニール袋に入れて、その上から瓶でつぶして粉にしたりしていたが、ここにはビニール袋がなかったので、紙に挟んで二つ折りにして、その上から潰した。
それを先ほどのすり下ろしたニンジンなどに加える。
次に、このふるいにかけておいた小麦粉とベーキングパウダーを入れる。
このベーキングパウダーはケーキを膨らませるのに入れる。
水と手を結ぶことや、加熱によって二酸化炭素……つまり炭酸水に入っているあの泡が発生して、ケーキを膨らます効果がある。
このケーキを膨らましてふわふわにする方法は、ベーキングパウダー以外にもメレンゲを混ぜ込んで焼く方法がある。
メレンゲとは、卵白と砂糖を泡立てた白いクリームの事。
そのメレンゲを使って作られるケーキの一つが“シフォンケーキ”。
「そのうちこの“シフォンケーキ”も作ってみよう」
僕がそう言うと、水色の髪のレインが楽しみですと答えた。
そういってもらえると頑張りたくなってしまう僕である。
何となく前よりも楽しくなりながら、今度はケーキの型に油を塗って、先ほど作ったケーキの元となる“タネ”を入れていく。
後は温めたオーブンで焼いて、竹串を指してなにもつかないようであれば完成。
型から外して冷却する。
冷えたらここのすぐそばの戸棚にあったお皿に乗せて切り分け、小皿に三人分ひとつづつ乗せていく。
そこで僕は不思議なことに気づいた。
「泡立てた生クリームはどこから?」
「今回は魔法で出しました」
水色の髪のレインがそう答える。
やはり異世界の女神様だけあって、そういった事もできるらしい。
こうしてすぐに、できたニンジンケーキを試食することに。
銀色の髪のスノウが食べてすぐに首をかしげて、
「美味しい。でもニンジンが入っているのか分からない味ですね」
「クローブとシナモンの香りも強いし、全体の割合からするとにんじんはそこまで多くないからね」
僕がそう答えるとそこで水色の髪のレインが、
「でも美味しいです。ニンジンは苦手だったのですが、これなら楽しめます」
そう言ってくれた。
美味しいと言ってもらえるのは嬉しいなと僕は思う。
ただ一つ気がかりなのは、
「喜んでもらえて嬉しいよ。でも、これで妖精は生まれるのかな?」
ぼくがそうふあんをおぼえているとそこで、先ほど作ったニンジンケーキの大きいほうが輝きだす。
そして、ポンと乾いた音を立てて、白い球体が三つくっついた形をしている、三つ目の羽の生えた謎の生物が生まれた。
「こ、これは」
「「妖精ですね」」
僕の驚きに、レインとスノウの二人が声をそろえて妖精だという。
だが僕としては、
「人型ではないのですか?」
「妖精にはいろいろな種類がありますから」
水色の髪のレインが、当然のように言う。
だが、僕としては、
「……ニンジンらしい要素が一つもない」
「ありますよ? ほら、羽の所」
銀髪のスノウに言われてよくこの生物を見ると、確かに羽としてパタパタと動いている部分はニンジンの形をしている。
よく見るとニンジンの要素はあった。
そしてこの妖精さん、見かけの割りに人懐こいらしく、きゅうきゅう言ってなついてきている。
それは、可愛いような気も、しなくもない。
でも……次こそは、人型をと僕は決意したのだった。
ここまでが漫画版完成済みのお話でした。
また漫画版の方を次に投稿し終わりましたら、続きになる……のかな?
一応単体で読めるよう構成しておりますので、短編連作という形? になるかと思います。
楽しんでいただければ幸いです。




