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6話 侵入イベント

 宿屋から逃げ出した、わたしとロイは、夜になるまで裏路地に身を潜めていた。


「……ロイ?」

「ん? やっと起きたか。よく寝てたんだな……ヨダレついてるぞ」


 壁にもたれていたロイが、悪戯っぽく笑ってる。


 へっ、ヨダレ!? あ、そんなの出てないよ!?

 口を拭いても、ヨダレ出てないじゃない。


 というか、わたし。いつの間にか寝てたみたい。

 もしかして寝てる間も、ロイはずっと見張っててくれたんだ。


 この人、たまに良いところもあるんだよね。

 盗賊団に襲われた時も、ヨハンの時……ハンスの時も。


 でも正直、お金のためなんだろうな。

 どうしてそこまでお金に執着してるのか、いつか教えてくれるかな。


「起きたんなら、そろそろ行くか」

「行くって……どこにですの?」


「まだ寝ぼけてんのか? そのアッシュって野郎の屋敷だろ? しっかりしてくれてよ」


 そうだった。

 わたし達は今からアッシュの屋敷に侵入するんだ。

 そして、アッシュ本人から真意を聞き出さなきゃ。


「あの貴族の野郎せいで、調べる時間は無かったからな。ま、それでもなんとかなるだろ」


「……あの、ロイ? そう言えば、どうしてあんなタイミングで、宿屋に戻ってきたんですの? 夜まで戻らないって仰ってたのに……」


 本当にすごいタイミングで助けてくれた。

 あの時のロイは、ヒーローみたでカッコ良かった。


 そのあとの台詞で、全部台無しになちゃったけど。


「あ? ああ、歓楽街にだな。貴族が部下連れて歩いてるって、かなり変だったしな。嫌な予感がしたから、追ってみたら案の定って訳さ」


 野生の勘? それとも盗賊の勘?

 どっちにしても、ロイが来てくれなきゃ、今頃わたしは無事じゃなかった。


「ぼけっとしてねえで、早く行くぞ」

「は、はい」


 わたしとロイは、裏路地から賑やかな歓楽街を抜け、一路アッシュの屋敷がある街の中央へと向かう。



 ティザーの都中央区。

 貴族の屋敷や、わたしがイザベルとして通っていた学園の寮が立ち並ぶ区域。


 街の賑やかさとは違って、この辺りは静まり返っている。


 数人の兵士が、夜の巡回してる。


 夜にこの辺りを出歩く事が無かったから、始めて知ったんだけど。

 気味が悪いくらいシーンとしてる。時折、どこかの屋敷から笑い声が聞こえてくるくらい。


 わたしとロイは、煉瓦の壁を乗り越え、中庭に入り込んだ。


 広い庭だよね。所々に彫刻の像が飾ってある。

 夜の像は少々不気味よね。


 彫刻のおかげで身を隠す場所は多い。

 巡回してる兵士をやり過ごして、わたしとロイは庭を突っ切って、屋敷の端まで一気に走り抜けた。


「アッシュの部屋は、この上なのか?」

「そうですわ……このテラスがある部屋が、アッシュの寝室のはずですわ……」


 屋敷には何度か来て、お茶とかご馳走になったけど。


 寝室には残念ながらまだ案内されてない。話の中で、寝室がそこだとしか聞いてない。


「……じゃ、登るぞ……よっと!」


 ロイはかぎ爪のついたロープを、起用にテラスの柱に括りつけちゃったよ。

 これも盗賊の技なのかな。


 数回引っ張って固定されてるのを確認すると、ロイはスルスルと登っていった。


 テラスから登ってくるように、手で合図してるけど……わたし、ロープなんて登った事がない。


 自慢じゃないけど、わたしインドア派だ。

 こんなアクティビティなんて、やった事がないよ。


 でも、そんな事を言ってる場合じゃないよね。

 早くしないと、兵士に見つかっちゃうし。


 慣れない手つきで、ロープを登っていく。

 わたし、スカートのままなのよね。登りにくいよ、これ……うぅ。


 二階の部屋だから、数メートルなんだけど、もっと高い階層まで登った気分。


「鈍臭いな……ほら、手を貸しな」

「あ、ありがとう……」


 言わなくても、自分が鈍臭いって知ってるよ。

 そんなはっきりと言わなくてもいいじゃない。


 ふぅ……やっと、登ったけど。

 部屋の大きな窓には、分厚いカーテン。


 ランプの明かりが灯っている。


 アッシュがまだ起きているのかな。

 寝る前に読書をするとか、アッシュが言ってたな。


 う……心臓がドキドキしてるよ……緊張してるんだ……

 婚約破棄されたのを思い出してしまった。


 その時のアッシュの目が、瞼に焼き付いてる。


 ロイが目で合図を送ってくれている。

 わたしが無言で頷くと、彼はそっと窓を静かに開けた。


 キィと小さい音を立て、音を立てないように忍び込む。


 そこにはアッシュがいるはずだった。

 でも、そこにいたのはナオ。


「こんばんは、イザベル」

「……どうして、貴女がここにいるんですの……?」


 心臓の鼓動がバクバクしてる。


 わたしの問いに、彼女はフッと笑んで、


「……どうしてって……婚約者なら当然じゃない? 同じ部屋にいても」


「チッ、待ち伏せかよ……で、俺たちが来ることを、どこで知ったんだ? 細目野郎は、まだあそこいるはずだぞ?」


「それは俺が教えてあげたんだよ、ロイさん」

「お前っ! グリーク!?」


 あ……部屋の隅から出てきた少年。

 盗賊団のリーダーの子だ……なんで、この子がここにいるの!?


 え? ナオと盗賊団のリーダーがどうして、ここに一緒にいるの?


「……お前、逃げたんじゃなく、そっちに付いたって事なのか? 答えろ、グリーク!」


「あははは! そうだよ、ロイさん。俺は常に勝てる方に付くんだよ。それが生きていくのに必要なことって、あんたが教えてくれたんだろ?」


「なるほどな。それで細目野郎を助けて、ここまで連れて来たって訳か」


 自分の仲間殺した敵を助けて、その仲間になるなんて……この子、酷い!


 わざわざ、わたし達が来る事まで教えてるなんて。


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