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4話 覚醒

PV1500、ありがとうございます。

本当に感謝です

 ガキィっ!


 金属と金属が爆ぜる音。

 ハッとしたわたしの前に、ロイの背中があった。


「おい! なにボケッとしてんだ!」


 え、あ……アルヴァンからわたしを守ってくれたの!?


「へえ……そんな短い剣で、僕の攻撃を受け止めるんだ。思ったよりやるね、君」


「チィ!」


 ロイに剣を払われたアルヴァンは、数歩後ろに飛び退がった。

 その表情には、まだ余裕があるみたい。


 アルヴァンは、いつもわたしの相談に乗ってくれた優しい人だった。


 自分以外の王子たちの話も笑顔で、真剣に聞いてくれた人。


 なのに……本気で、わたしを殺そうとしてる。


 兄弟がいないわたしには、本当の弟みたいな子だった。

 あまりの出来事に、わたしはまだ信じられない。


「おい、女。俺がこの細目野郎を引きつけとくから……その隙に森の中へ逃げろ、いいな」


「え? でも……」


「でもじゃねえよ……野郎、ぜんぜん本気じゃねえんだ……お前を守りながらなんて、俺はそこまで器用じゃないんでな」


 盗賊団のおじさんたちと戦ったロイは、結構強いと思う。


 そのロイが、逃げろって言うくらいなんだから、アルヴァンはもっと強いんだ。


「……分かりました。タイミングを見計らって、森の中へ逃げます」

「……物分かりのいいお嬢様で助かったぜ。俺が時間を稼ぐ」


「あの一ついいかしら……どうしてわたくしを助けてくれるんですの?」


「女が目の前で殺されるのなんか、見たくない。それに……お前を助けたら、後で礼をたっぷり貰えそうだしな」


 んな!? いい事を言うかと思ったら、狙いはお金!?


 この人最低だ。一瞬でもいい人だと思った自分がバカみたい。


「……話し合いは終わった? なにを企んでるか知らないけど、君はここで死ぬんだ。無駄な事は辞めときなよ?」


 アルヴァンの細い目が、ますます細くなってる。なにがそんなに嬉しいのよ。


 今まで可愛い弟みたいって思ってたけど、だんだんいけ好かない陰険野郎に見えてきた。


「よそ見してんなよっ!」


 ロイがアルヴァンに斬りかかった。

 だけど、アルヴァンはその攻撃を簡単に受け止めてしまった。

 そこから二人の激しい応戦が始まる。


 ロイが一瞬、わたしに視線を送った。

 今が逃げるチャンスって言う合図って言うことだ。


 ごめんなさい、ロイ! わたしはこのまま逃げるからね……逃げる……またわたしは、逃げるだけ?


 ナオからも、街からも逃げて……アルヴァンからも逃げる。

 ずっと逃げて逃げて……逃げてどうするの?


 わたしは、アッシュ達の誤解を説いて、ナオに仕返しするんじゃ無かったの?


「おい、女! なにやってんだ!?」

「どこを見ているんだい!」


「チッ! しつこいんだよ、細目野郎!」


 理由はどうであれ。ロイは、知り合って間もないわたしの為に戦ってくれてる。


 もしかして死ぬかも知れないのに……ダメだよ、ユキ。

 そんな人を死なさせる訳にはいかないよ!


 盗賊団のおじさんたちをぶっ飛ばした、伯爵令嬢のイザベルの強さを信じてみる。


 自分の身は自分で守ってやらないとだ!


「アルヴァン! かかって来なさい! わたくし【イザベル】は逃げも隠れもしませんわ!」


「なっ!? バカ野郎!!」

「アハハハハ! いい判断だね、イザベル! 邪魔だよ、獣人くん!」

「がっ!?」


 アルヴァンは軽々とロイを蹴り飛ばすと、一直線に走ってくる。


 こ……怖い!

 剣を持った人が、本気で殺しにくるのって、こんなに怖いんだ。


「バイバイ、イザベル!」


 ちょっと後悔してるけど……もう後戻りはできないんだ!

 わたしは、もう逃げないんだから……逃げない……


「やっぱり……嫌ぁっ!」


 ――ブオっ!


 なんか出ちゃった!?


 わたしが放ったパンチから、風圧的な何かが飛び出して、ハンスを吹き飛ばしちゃったよ。


「んな!?」


 数十メートル先までぶっ飛んだアルヴァンは、鈍い音を立てて倒れちゃった。


 背中を思いっきり強打したようで、気絶している。


「だ、大丈夫? ハンス……?」


 わたしは恐る恐ると近寄ってみた。ハンスは白目を剥き口から泡が出てるし、ピクピクと痙攣させてる。


「……うそ……勝ちゃった……え?」


「お前、なにしたんだよ? というか、お前、魔法使えるのかよ?」


 ロイもあまりの事に、動揺してるみたい。


 それに魔法……? あれが魔法なの?


 ゲームの中でも、少し魔法の事を触れていたけど。

 自分じゃ使った事がないから、実感が無い。


 それにしても、イザベルって強すぎじゃない?

 これはご先祖様の無駄な設定のせいだったりして……


「あはは……まさか、ねぇ」


 もしかして、イザベルはこの世界じゃ、常識を超えた強さを持っているんじゃないかとさえ、思えてくるよ。




 そしてその少し後。


 ロイはアジトの中を調べてきた。

 生存者はゼロ。


 ただ、グリークの姿だけは無かったって。

 その顔は少し安堵してたように見えたけど、複雑な気持ちなんだろうな。


 後で知ったんだけど。

 わたしをここに連れてきた理由は、イザベルの強さを利用して、一緒に盗賊団を倒すつもりだったらしい。

 なにを考えてたんだろ、この人。


 気を失ったアルヴァンを、ロイはロープで動けないように縛り上げた。


 わたしには、やっぱり信じられない。

 アルヴァンはああ言ったけど、アッシュの口から本当のことを聞けてないから。


「……お前に言いたい事はたくさんあるが……とりあえず助かった。ありがとうよ」


 ちゃんとお礼を言えるんだな、この人。ちょっと意外。


「いえ……わたくしの方こそ、守っていただきありがとうございます」


「あ? お前を守ったのは、金のためだからな」


 そうでしたそうでした。

 お礼が欲しいから、守ろうとしてくれたんだったよ。


 でも、理由は何であれ、命をかけて守ろうとしてくれたのは、ほんの少し嬉しかった。今のわたしには、ね。


「でだ。お前はこれからどうするんだ?」

「……これから……ですか?」


 旅を続けても、またアッシュが刺客を送ってくるかも知れない。


「……決めましたわ。わたくし都に戻ります」


 アッシュに直接、聞かなくっちゃ。

 本当にアッシュが、アルヴァンにわたしを殺すように頼んだのかどうかを。


「へえ……俺もついていくぜ。お前にきっちり礼を貰わねえとな」

「……最低ですわ」


 ロイもついて来てくれるのは嬉しいけど。

 お金お金って……この人、ほんとっに最低!

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