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11話 悪魔の洋館?

「へぇ〜……ここが悪魔がいる屋敷かぁ……」


 三階建ての大きな石造りの建物だ。

 入り口付近にある庭も広いなぁ。昔はさぞ豪奢な建物だった名残りがある。


 でも、今は至るところに雑草や、建物も朽ちて草が生い茂ってる。

 何年……ううん、何十年も放って置かれた感じの屋敷。


 夕焼けに染まる屋敷は、どこか物悲しげで、まるでゾンビでも出そうな雰囲気。ちょっとワクワクしちゃう。


「はいです。麓の町に災いを起こした悪魔が、ここに住み着いたって、町の噂になってるです」


 噂ねぇ。

 エレは自信満々な表情してるけど。


 噂ほど信じられないものは無いって、わたしは常に考えてる。


「ねえ、ロイはどう思う?」

「……別にどうでもいいからよ。さっさと済ませようぜ」


 あ、一人で先に入っていちゃった。


 ロイはどこか不機嫌そうにしてる。

 ここに来るまでの間に、ロイとちょっと揉めたんだよね。


 なんの儲けも無いのに、俺たちが手伝う必要があるのか? だの。

 逃亡者がギルド関係者に協力するなんて聞いた事ない、だの。


 たしかに、ロイの言うとおりなんだけど。

 いくら強くたって、エレみたいな子供一人でなんて心配だし。

 町の話も聞いちゃったから、知らんぷりする訳にもいかないからしね。


「お姉さま。エレたちも行くです」

「う……うん」


 わたし達も、草木で荒れた中庭を抜けて、屋敷の中へ足を踏み入れた。


「うわぁ〜……すごいです、お姉さま!」

「……ゴクリ……銃が必要、ね」


 年相応に子供っぽくはしゃいでる、エレ。

 エレのはしゃぐ気持ちがよく分かるよ。


 大きな玄関ホール。天井にはシャンデリア。

 両脇には半円の階段に、エントランスの壁には女性の肖像画だよ。


 もう、モロにゾンビゲームの世界に入り込んだんじゃないかってくらいな造りなんだもん。


 エントランスの所にはロイが立ってる。

 ロイは食い入るように、その肖像画を眺めている。


 わたしもロイの近くに立つと同じように肖像画を見上げて、思わず声を上げた。


「……え? これ、わたし……?」

「んな訳ないだろ。お前、歳いくつだよ」


 失礼ねぇ。まだ十七歳って、そう言う意味じゃないよね。


 それにしても『イザベル』に、そっくり。

 髪型や着ている服は違うけど、本当に瓜二つ。双子って言われても信じるレベルだわ。


 屋敷の大きさから、貴族だったと思うけど。

 どんな人だったんだろう?


 わたしと違って、好きな人と一緒に幸せに暮らせたのかな?


「……なに、泣いてんだ。イザベル?」

「ううん。なんでも無いよ」


 なんだろう。急に悲しくなってきちゃったよ。

 今置かれている自分の状況と、この人の境遇を想像して、気持ちを重ねたのかな。


 そっと、ロイがわたしの涙を拭ってくれた。

 突然の行動に、わたしの心臓はバクバクしてる。顔も熱いから真っ赤なんだと思う。


「本当に大丈夫か? 顔も赤いぞ」

「だだだだ大丈夫です! さ、他の部屋も調べよう、うん!」


 わたしはその場から逃げ出した。


 あ〜びっくりしたよ。

 突然、そんなことされたら、驚いちゃうでしょうが。

 ロイもキョトンとしてる。


 気を取り直して、その『悪魔』とやらを探さないとだ。


 エントランスから二階の通路を歩いて、一部屋、一部屋と確認する。


 埃を被っているけど、豪華な調度品も残ったまま。

 どことなくカビくさい部屋。


 そんな部屋を見て回っても、悪魔らしき姿は全くない。


「……悪魔って、本当にいるのかなぁ?」


『ロイヤルプリンス』はファンタジーの世界ではある。


 魔法もそれとなくゲーム内でも説明されていた。

 もちろんモンスターや盗賊の話も、ちょっとは出て来た。


 でも、ゲームイベントは、全てティザーの都内での起こったことばかり。


『悪魔』の存在なんて、一切情報が無かったんだよね。


 麓の町の噂話。

 正直、眉唾物なんだよねぇ。


「さてと、二階は一通り確認したけど……」


 一階はエレが調べてるはずだ。


 ロイはあまり協力的じゃなかったからなぁ。

 三階、調べてくれてるかなぁ?


 ちょっと心配だし、わたしも三階に行ってみよう。


 二階のエントランスから三階に続く一本の広い階段を、小走りで駆け上がった。


 三階も、二階同じような造りの部屋と通路がある。


 ただ、ちょっと違う部分もある。

 通路の奥に、両開き扉が見えている。


 ロイとエレが、その前に二人で立っている。

 エレも一階になにも無かったから、三階まで来たんだ。


 でも、様子が変だな。

 すぐに入ろうしてないんだけど。どうしたんだろ?


「二人とも、そんな場所で突っ立ってどうしちゃったの?」


 わたしの声に、二人が同時に振り向いた。


「あ……お姉さま」


「……この扉の向こうから、すげえ気配を感じるんだ。こりゃ、大物の予感がするな」


 気配? わたしには一向に感じられないんだけど。


 あれ、二人とも緊張してる?

 それほどの相手が、本当に扉の向こうにいるの?


「じゃあ開けるです……!」


 エレは両手で二枚の扉を押すと、ギギギぃと音をさせてゆっくりと開けた。


 天井の高いホール。

 この部屋、たぶん舞踏会場じゃないかな。


 大きな窓ガラスから差し込む夕陽。

 その光に照らされた男の人が、部屋の中央に立っている。


 黒いマントを羽織った長髪の人だ。


「 誰かいる……」

「……あれが気配の正体か」


 ここにも女性の肖像画だ。

 エントランスの肖像画は澄まし顔で佇んでいたけど、こっちは女性は優しく誰かに微笑んでいるように見えた。


「……なんだ、貴様らは? 誰に断ってここに入って来た?」


 震えそうなくらい冷たい声。背中がゾゾっとする。


 ゆっくり振り返った男の人は、どこか憂いを帯びた瞳で、わたし達を見ている。


「貴方が悪魔ですね! さあ、覚悟するです!」


 エレは背負っていたハンマーをドン! と床に突き立てて挑発している。


「……ふむ。どうやらやっと私を見つけたようだな……さぁ、私に挑んで来るがいい、勇者一行よ!」


 うん? 勇者一行?


 わたし達が勇者パーティって思ってる?

 この悪魔、勘違いしてるんじゃないの!?


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