歓迎会
歓迎会はほとんどごく普通のパーティーで、唯一違う所と言えば出された食事が長期保存モノだらけだった事だろう。
ロバルト曰く、「補給線が確立していないからレーションすら高級品」らしい。
ただその分随分と手がかかっていて、食べたこともないような味付けのされたフリーズドライ食品に、皆驚きつつも満足していた。
そして士官たちに酒が回り始め、宴もたけなわといったころに、エリシャは部屋の隅の椅子で思い悩んでいた。
「......嘘つきって、言っちゃったな」
彼女が考えているのはただそれだけだ。
輸送機の中で、エリシャたち末端の士官に、カトリアの騙し討ちが伏せられていたこと。
エリシャでも、それが致し方ない判断であったことは頭では分かっていた。
でも、だからと言って抑えられなかった。
『どうしたの?そんな隅っこで』
その声に驚いて顔を上げると、目の前にはいつのまにか真っ黒な格好の少女。
「フレイ...」
フレイはエリシャの隣に座ると、単刀直入にエリシャに聞いた。
『何か悩んでるんでしょ?』
「......」
『悩みがあるなら誰かに相談するのが一番だよ。クロにぃもそう言ってた』
「...そうなんだけどね。相談する相手が、見つからなくて...」
『グレイズ大尉は?貴方達、随分仲よさそうに見えたけど』
「......」
『? ...まさか』
「うん。喧嘩しちゃったんだ。大尉と」
「ほほう、上官と喧嘩たぁ、勇気あるねえ!」
突然上からかかって来た声に、エリシャは驚いて飛び退く。
『...ロバルト、雰囲気ぶち壊し』
フレイがジト目で見つめる先には、アルコールが回って顔が赤くなったロバルトが居た。
「上官と喧嘩して生きてるなら幸運だよ。普通は軍法会議ものだ、それ」
『はあ...せっかく相談に乗ってあげようってところを』
「素直に謝るのが一番だぞ?少なくとも俺はそのテの厄介ごとなら確実にお前より場数を踏んでるからな」
そう言うと、ロバルトは再び酒瓶に手を伸ばす。
『って、コラ!ロバルト呑みすぎ‼︎』
それを急いで制止するフレイとロバルトの騒ぎ声に微笑みながら、エリシャは心の中で決意した。
(謝ろう、明日。子供みたいだけど、きっとそれが一番なんだ)
明日は部隊編成もあるし、話す時間はたくさんあるはず。
彼女のそんな期待は、予想だにしない形で、裏切られることとなる。




