極西の飛行隊
到着した基地は、狭いラーシャ国内ですら名の知れていない、ライノ砂漠のど真ん中にあった。
砂漠と言ってもそれほど高気温という訳ではなく、敢えて言うなら岩砂漠故に舗装道路以外はそうそう歩けるものではなく、また湿度が致命的に低いぐらいだ。
その基地の1本しかない滑走路に、エリシャたちを乗せた最後尾のC-17が着陸する。
ランディングギアが接地した途端、いつもより随分激しい煙が上がる。
と、管制塔から遅い警告。
「ローパー5、急ブレーキをかけ過ぎるな。ここではいろんな物がとにかく燃えやすい」
「ローパー5、コピー」
言われた通り、機体はいつもよりゆっくり減速して静止する。
その分制動距離も伸びるのだが、そこは長い滑走路でカバーしている。
「ローパー5の着陸を確認。誘導員に従い、バンカー1-3前までタキシングせよ」
「コピー。誘導員に従いバンカー1-3前まで移動する」
先程機内で大騒ぎがあったとは思わせないプロの対応で、パイロットは無線交信を終える。
一方キャビンでは、未だ険悪な雰囲気が立ち込めている。
「到着したぞ!全員降機用意」
コックピットからコパイがそう言う。
泣き腫らして目の赤いエリシャは、この基地のメンバーも布告無き戦闘の実態を知らされていなかったのだろうか、と何故か無性に気になった。
機外に降り立って、真っ先に基地司令棟に向かうグレイズ含む指揮要員とは一時別れ、エリシャは整備兵に言われた通りパイロットの詰所に向かう。
途中、いくつかある格納庫の中を覗くとやはり居た。
垂直尾翼に南十字星が描き込まれたF-22。
やっぱりこの基地にいるのかと、今更ながらに感慨深くなる。
と...
『やぁ!さっき会ったねお嬢さん‼︎この基地はどう?』
『あ、こらフレイヤ!』
...聞き覚えのある声が横から飛んできた。
「フレイさんにフレイヤさん?随分お早いお出迎えで...」
言いかけて、エリシャは絶句する。
2人は、遠目に見れば全身真っ黒な服の何の変哲もない少女だ。
だが近くで見ると、その姿に言葉を失わざるを得ない。
血の気のない白い肌には所々継ぎ目が入っていて、短い黒髪は材質は分からないが何かしらの板を重ね合わせただけ。眼に光はなく、小刻みにレンズを動かしている。
「こら、お前らが急に出てきたらみんな驚くだろ」
『あ、そうだったねクロにぃ』
『失念していたよクロにぃ』
エリシャたちが固まっていると、詰所の奥から”彼”が出てきた。
エリシャには彼が一瞬誰だか分からなかった。
が、彼のジャンパーのワッペンを見て、すぐに気付く。
南十字星のマーク。
間違いない、彼だ。
「......驚かせて悪かった。こっちだ、付いてきてくれ」




