ファーストエンゲージ
5年前 ラーシャ首都 レベルタード上空
「CP, This is Worker1. Now, I’m in ready to engage. Waiting order. over.」
高度3000フィートの高空を、黒い機影が滑るように飛ぶ。
鋭角的なそのデザイン。ステルス爆撃機、F-117ナイトホークだ。
「CP to Worker1, you are clear to engage.」
彼らから離れた場所で飛ぶ、AWACSからの交戦許可を得て、ステルス性を損なわぬよう、灰色の特殊な塗料で塗られたカトリア連邦の記章を主翼にペイントしたナイトホークが、胴体下の爆弾倉を開く。
「Copy. Drop ready, now.」
そして、その爆弾倉から、Mk.48誘導爆弾が放たれた。
ラーシャ自衛隊 ボルスニー駐屯地
『スクランブル!スクランブル!バンカー待機中の機は直ちに離陸! 通常配備中のものもすぐに上げろ!』
首都の国会議事堂とレーダーサイトが爆撃を受けたとの一報を受け、この駐屯地は先程からひどく騒がしい。
誘導路を進むスクランブル装備の戦闘機、給油のため滑走路を迷わず突っ切るタンクローリー、慌ただしく自機に走る搭乗員。
普段は平和なこの駐屯地に、今だけは実戦の空気があった。
管制塔のオペレーターが、強化バンカーから出てきたばかりの戦闘機に向かって、無線で呼びかける。
「Control tower to Eagle1,2. You are clear to take off from runway03.」
「Copy that, tower. Taking off.」
「2,Copy.」
2機のF-16、イーグルのコールサインを持つ部隊が、通常の離陸手順をいくつか省略して滑走路を走る。
「Eagle1,2 took off. Now, dragon squadron, get ready to take off.」
そして、イーグル隊が離陸した後も、管制塔の仕事は終わらない。後続部隊の離陸誘導をしはければならないからだ。
「Dragon1, copy.」
こちらは先程まで通常の格納庫で待機していたので、まだ誘導路でタキシング中だ。
「ドラゴン1よりドラゴン4、おいお前だ! ブービー! 聞いてるのか」
「そんなに叫ばなくても聞こえてます、隊長。で、なんです?」
「お前スクランブル発進は初めてだろう、手順は分かってるな?」
「大丈夫です、サー」
「よし、各機離陸後は2組でエレメントを組み、イーグル隊の後衛だ。相手はすでに攻撃してきてる。万一の時は、撃墜しても構わん」
「「「イエッサー!」」」
「レーダーサイトがやられていることを忘れるな!頼れるのは、自機のレーダーとAWACSだけだ!」
「ラジャー!」
「Dragon squadron, clear to take off.」
「Dragon1, copy. Taking off.」
「2,copy.」
「3.」
「4!」
4機のF-16が、大空に向け、飛び立った。
同時刻、イーグル隊
「Eagle1, engage! engage! Seeker open!」
「Eagle1! Check six! Break,break!」
先発してAWACS、コールサインスカイアイの指示通りに飛んだ2機は、いきなり飛び込んできた所属不明の戦闘機3機と交戦状態に入っていた。
「Eagle2,Enemy locked. FOX2! FOX2!」
イーグル2が敵機をロック、ミサイルを放つ。
「This is Eagle1. I’m locked! I’m locked! Missiles incoming!!」
が、今度はイーグル1が敵に捕捉された。
ミサイルが追いかけてきている。
「chaff! chaff!」
僚機が回避をサポートしつつ、敵機の背後に着こうとハイGターンを繰り返す。
「I’m breaking! Flare launch! ...OK, missiles clear.」
なんとか回避に成功したらしい。
「Splash! Enemy down.」
イーグル2も敵機を撃墜した。
が、さらなる敵増援の到着をAWACSが知らせる。
「This is SkyEye. Eagle, other bogeys inbound. 2 o’clock, numbers are unknown.」
「Shit! We have no margin!」
「Wait... Dragon squadron inbound.」
ようやく、ドラゴン隊が到着した。
「All dragon unit, Engage, repeat Engage. Master arm on, Master arm on. Seeker open.」
「Roger that, Dragon2 engage.」
「Dragon3 engage.」
「Dragon4 engage.」
「Here we go!」