Good kill
スパローは、ワイバーン隊4機から計8発発射され、正面の空域で乱舞するSu-30に向かう。
すでにオウル隊の2機には退避勧告を出したから、誤射の心配は無い。
レーダーロックに気付いた敵機がチャフを撒き、回避機動をとる。
が、もともとが制空戦闘機として設計されたF-15のレーダーロックを外すのは容易ではない。
超音速のミサイルは、ショックコーンを形勢しながら敵機に直進する。
数十秒後、レーダー上から敵機2機の反応が消失する。
「2 bandits lost.」
「Copy that. Pitch up.」
敵機2機撃墜の報告を受けるやいなや、グレイズは僚機に上昇を命じた。
ドッグファイトの用意だ。
「Are you all right? Wybern4.」
「Yes sir.」
聞かれたエリシャは、今度こそはっきりと答えた。
すでにスパローの必中距離を外れ、あとはサイドワインダーの射程に入るのを待つのみ。
「Tallyho! 2 bandits 2 o’clock.」
敵機は2時の方向に旋回していると、サムが報告する。
「Copy that. Right turn, right turn. Head on.」
「Wybern3 copy.」
「4 copy.」
グレイズに従い、4機はゆっくり右旋回する。
ヘッドオンで仕留めるつもりだ。
「Wybern1 target locked. FOX2! FOX2!」
グレイズ機がサイドワインダーを発射。敵機に向け正面から突っ込む。
射撃に気づいた敵がフレアを撃つが、遅い。
ミサイルは吸い込まれるように敵機に向かい、命中した。
敵機は爆散。ベイルアウトした様子もない。
フレアに誤魔化されず敵機に命中したミサイルの1つは、エリシャの放ったものだった。
「Good kill. Good kill.」
落下していく敵機の残骸を見、グレイズの無線を聞いたエリシャは、ひどくモヤモヤとした気持ちに襲われた。
(いい殺しだった、か...)
それは、ただの撃墜報告だけれど。
そのフレーズに、今日初めて人を殺したエリシャは違和感を感じざるを得なかった。
「Bingo fuel. Bingo fuel.」
「帰投分の燃料しかない」との、計器の警告で、我に帰る。
突然の襲来に慌てて出撃した彼らに、燃料の余裕はそうない。
「Sir, we have no fuel.」
グレイズに伝える。
エリシャは、今は帰って兵舎の硬いベッドに倒れ込みたくて仕方がなかった。
「I know. SkyEye, this is Wybern1. We don’t have fuel.」
「Copy that. Other units are moving to intercept. RTB.」
「Roger.」
「帰れるんですか⁈」
「こら、エリシャ。交信規則は守りなさい」
つい気持ちが緩んだエリシャを、キースが軽く叱る。
「ご、ごめんなさい。つい...」
「まぁ、初の実戦ですし?」
「はぁ... Wybern squadron RTB. Turn 1-8-3.」
「2 copy.」
「3.」「4!」
4機のF-15は、自分たちの巣にむけ飛ぶ。
ある者は憂鬱そうに、ある者は嬉しそうに。
だが、彼らが開戦のラジオ放送を聞くのは、まだ少し先のことだった。




