邀撃隊 離陸
ラーシャ共和国 防空識別圏
0200時
ラリィバレー基地から飛び立った3個小隊10機のSu-30は、事前連絡の通りラーシャの防空識別圏少し手前で上空待機。
その後、味方のSu-30中隊と合流。
後方から飛んできたTu-95も5機が合流。
作戦の第1段階を消化した飛行隊は、ラーシャの最前線基地、ボルスニーへ向け、進路をとった。
ボルスニー空軍基地 第1滑走路
「Runway01,clear. Good to go. Webern1,2 clear to takeoff.」
「Copy that tower. Wybern1 takeoff.」
「2 copy.」
突如現れた未確認の航空部隊、そしてその増援に、ボルスニー基地は大混乱に陥っていた。
レーダーサイトの観測情報を信じるなら、不明機の数は、大小合わせて30機。
いつもの領空侵犯とは明らかに違う状況に、戦後新編された防空司令部はパニックを起こし、代わりに、実戦経験豊富な各基地司令部が、独自に指揮、連携しているのが、今のラーシャ空軍の現状だ。
「Wybern1,2 takeoff. Now,Wybern3,4 clear to takeoff.」
「Wybern3 copy.」
「4 copy!」
実戦はおろか、侵犯機対応の経験すらないエリシャの声は、雑音の多い航空無線越しにすら裏返っているのが分かるほどで、エリシャ機の隣で離陸確認をしているキースには、その緊張っぷりが目に見えるようだった。
「エリシャ、落ち着け。訓練通りにやれば大丈夫だ。だから、俺から勝手に離れるんじゃないぞ、いいな」
「り、了解」
「Wybern3 flight check all green. Taking off.」
「Wybern4 takeoff!」
「Tower copy. Good luck.」
エリシャは左手のスロットルレバーを離陸位置にまで押し込み、アフターバーナーを点火する。
2機は滑走路を疾走すると、尾翼を動かし、機首を上げた。
そのまま速度を上げると、機体は今度こそ浮き上がる。
と、突然キースのワイバーン3が出力を戦術上昇速度まで急激に上げると、機首を本来よりもずっと深い角度で上げ、急上昇した。
「ッ...! 中尉⁈」
言いながらもエリシャは、目の前の滅茶苦茶な先輩に合わせ、高度を上げる。
管制塔が怒鳴り、計器が失速警告を上げ、収めきれていないランディングギアが金属の悲鳴を上げる。
唐突に、キースは機を水平に戻した。
エリシャはホッと一息つくと、キースとエレメントを組み直す。
フライバイワイヤのせいでいつのまにか消えていたアフターバーナーを再点火。
安定した飛行に戻ると酸素マスクのマイク越しに文句を言った。
「なんてことするんですか! 危うく失速して堕ちるところでしたよ!」
「相棒がチキンじゃないか確かめたのさ。ま、今更だったな」
「もう!」
「AWCS to Wybern. Turn to 1-3-2.」
「Wybern3 copy. Turn to 1-3-2.」
「って、待ってくださいよ! Wybern4 copy!」
エリシャは、いきなり旋回を始めたキースに従い、慌てて旋回を始めた。
空の向こうでは、戦端が開かているとも知らず。




