場面8*最終話*ピンチ?チャンス?
はーちゃんと、みっちゃんにからかわれながら、楽しく食事していると、拡声器を持った警備員が、ケイ様がいるBARの方に駆け足で走って行くのが見えた。
何だか、お店の外が騒がしい。
うさぎも はーちゃんも みっちゃんも 嫌な予感がしたので、BARの方へ行ってみた。
すると啓太のBARの前で、亀城亜弥がケイ様と向かい合って、両手を腰に当て、仁王立ちの格好で、何か話をしていた。
ケイ様もドッシリと腕組みをしていた。
《どうぞ立ち止まらずに進んで、お買い物をお楽しみくださ~い》
拡声器を持った警備員は、優しい笑顔で人だかりになっているお客を、なんとか流そうと誘導していた。
「ねえ!ケイ!どうなの!?貴方に彼女が居る。って話を聞いたんだけど、何処の誰よ!?」
すると、ケイ様は、失礼の無いように、しかし毅然とした態度で答えた。
「亀城様、そー言ったプライベートについての話は、この場はふさわしくないと思うので、場所を変えてお話させていただきます。」
「いいえ!ワタクシは、ココで結構よ!貴方が キチンと応えるまで、逃さないわ!何処のお嬢様なのかしら!?」
BARの店員達も『仕方のない人だ』と云うふうに、ケイ様の後ろで立ち向かうように腕を組んで呆れてみていた。
亀城亜弥がこの状態では仕事にならない。営業妨害だ。と態度で示していた。
亀城亜弥の取り巻き達は『こんな大事にしなくても…。』と困った様子だ。
「ふ〜。分かりました。それではお答えします。おっしゃる通り、私には お付き合いしている女性がおります。ですが、コレはプライベートな話なので、ここまでにして頂けますか?」
「ダメよ!何処の誰よ!言いなさい!私のケイに手を出すなんて!その女にどーなるか思い知らせてやるわ!」
「私の大切な人に迷惑がかかるよーな事になるのであれば、ますますお答えできません!」
すると、怒りに任せて亜弥の手があがり、ケイ様の頬めがけて振り下ろされそうになった。
「啓太の彼女は、私なんですー!啓太と結婚するのは、私なんですー!」
とっさに、警備員の拡声器を取り上げて、うさぎが叫んでいた。
うさぎの顔は、いつもより沢山飲んだお酒のせいで、赤くだらしない顔をしていた。
そんなうさぎをみた亜弥は
「う、嘘でしょ!?ケイ!?あんな、あんな…女!?フツーの。そこら辺にいるようなOLと付き合ってるなんて!」
その言葉を聞いた、酔っ払いうさぎは
「そこら辺にいてるフツーの。ってなんだ?私、ちゃんと働いてますし、キチンと自分の力で生活してますけど!?」
はーちゃんも、みっちゃんも拡声器で話すうさぎにビックリしながらも、後ろの方で大きく頷いてみせた。
BARの店員達も、目をキラキラさせて 酔っ払いうさぎを見守っている。
亜弥が言葉を失い静かになったので、うさぎは
「あー。スッキリしましたー。私、帰りまーす!」
と敬礼しながら ふらふら〜。と野次馬の中に帰ろうとした。
その時
「あ。うさぎ待って!」
と、啓太が呼び止めた。
うさぎは、顔の前で手をパタパタさせて
「ん〜?ダメダメ〜。酔っぱらいの たわ言で済ませてくれていいから、私は今日は帰りま〜す!はーちゃん、みっちゃんゴメンネ〜。帰ろ〜」
と、また敬礼をしてみせた。
啓太は、うさぎの腕を掴んで離さなかった
「もう、いいねん。うさぎがハッキリ言ってくれたから。こんなチャンス無いと思うから。皆に聞いてもらう。」
『ん?目の前に居る男前は、何故か笑顔?喜んでいる?』と、酔っぱらい うさぎは 首を傾げた。
「俺は、彼女と付き合ってます。高校生の頃から付き合っています。俺は彼女に惚れてます。彼女の身に何か危険な事が起こってはいけないと思って、言い出せませんでした。結婚するなら彼女しかいないと思っています。」
『だから亀城さんのご好意には応えられません。俺には大切な人がいるんです。』
と、小さな声で亀城亜弥を説得した。
「ふ、ふーんだ。だ、誰が。こ、こんな女を選ぶ。しゅ、趣味の悪いアンタなんか相手にしたって言うのよ!い、行きましょっ!」
引きつる顔と裏返った声で、どうにか堪えて言い返した亜弥は、クルッと吉備津を返してバタバタバタとその場から、逃げるように立ち去って行った。
うさぎは、ケイ様を指差して
「あ〜あ〜。ケイ様の趣味が疑われますよ〜?ファンが逃げてっちゃいますよ~。」
まだ、うさぎは 酔っぱらいだ。
「え?俺の女の趣味、ダチからは めっちゃ良い趣味してる。って評判なンですけど?」
と言って、うさぎを抱きしめた。
「ちょ!ちょっと!皆がケイ様を見てますけど!?」
「何を今更ゆーてんの?拡声器で怒鳴り込んできたのは誰ですか?」
「あれ??私…恐い事したねぇ…???」
うさぎの顔が『あはははー』と、みるみる強張っていった。
その後、野次馬も平静をとりもどし、通常通りの雰囲気へと戻っていった。
その後、
ケイ様の人気も相変わらずだが、お店の雰囲気はなんとなく落ち着いた。、月ちゃんもケイ様も 少しずついつも通りの生活にもどった。
ケイ様が、仕事を終えて、啓太に戻るまで うさぎは他のお店で、ゆっくり食事をして待ってみたり、近場もちょっとだけデート出来るようになったり。と、以前よりも もっともっと仲良くなりましたとさ。
おしまい。